『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(ジーナ・キーティング著)のレビュー
最近はネットフリックの躍進がすごいですね。
知らない方のために説明しておくと、ネットフリックスはアメリカ発の定額動画配信サービスを提供しているサービスのことです。
私はアマゾンプライム会員なので基本的に映画などの映像コンテンツはプライムビデオで見ているのですが、攻殻機動隊が見たいがために登録してしまいました。
ネットフリックスは、この記事を執筆時点では、もっとも高額なプレミアムプランでも月額1,800円となっていて安いほか、感覚的にはアニメのラインナップが充実しています。
インターフェースも使いやすいですね。
今回紹介するのは、そんなネットフリックスの創業者たちの物語です。
日本でネットフリックスの名前がよく聞かれるようになったのはここ1~2年のことだと思いますが、それはやっぱりテレビCMをよく流すようになったからでしょう。
いま、日本市場を巡ってはアマゾンプライム、ネットフリックス、それからフールーが激しくしのぎを削っています。
日本勢ではドコモのdTVとかツタヤTVとかがありますが、個人的にはもう名称に「TV」とか入れちゃっている時点でセンスがないように感じますね。
我が家の場合はPS4があるのでPS4でネットにつないでテレビで視聴することも多いですが、むしろ大多数の人はPCまたはスマホで見るのが当たり前だと思うので、なぜそんなに「テレビ」という言葉にこだわるのかは理解に苦しむところです。
話をネットフリックスに戻します。
そんなふうに、日本でネットフリックスの名前をよく聞くようになったのはここ1~2年のことですが、創業自体は1997年と意外に長い歴史を持っています。
そして、最初の事業は、郵送でのDVDレンタル事業でした(当時はまだオンラインで動画を快適に見られる環境ではなかったので)。
ストリーミングサービスに主軸を移し始めたのは2007年くらいからで、これはかなり早く、2012年には動画ストリーミングを普及させた功績としてエミー賞を受賞しています。
日本ではGAFA(ガーファ:グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)がビジネス書などの表紙を飾るくらい有名ですが、いまではFAANG(ファング:フェイスブック、アマゾン、アップル、ネットフリックス、グーグル)という言葉も聞かれるようになっていて、様子にこれらの企業と並び立つくらい存在感がある企業であるということです。
ネットフリックスは超実力主義で、超ドライな人事を行うことで有名です。
これはネットフリックスの現CEOリード・ヘイスティングスのポリシーによります。
ネットフリックスは元々ヘイスティングスとマーク・ランドルフの2人によって創業されたのですが、家族圭的な経営を目指していたランドルフは2004年に同社を去り、ある意味で冷徹なヘイスティングが会社を取り仕切ることになったのです。
本人が複数のインタビューの中で語ったところによると、ヘイスティングスはネットフリックスでは経営者として幸運に恵まれたと考えているという。ピュア・エイトリア時代に若いCEOとして犯したミスを教訓として生かせたからだ。
ピュア・エイトリアでは、官僚主義がはびこり意思決定のスピードが失われると、ヘイスティングスは容赦なく組織にメスを入れた。そしてコアコンピタンス(中核となる強み) を発揮できる一つか二つの分野以外は有無を言わさずリストラした。戦略的には正しくても、社員との調和を図るという点では明らかに失敗した。とはいっても、決して意地が悪い人間ではなかった。社員に対して最高の成果を求める点でも、会社全体の利益を考えて行動する点でも一貫していたので、社内では尊敬と忠誠を得ていた。
要は、人間関係も含めて物事をすべて数式に落とし込んでいたのだ。だから異を唱えたりいらいらさせたりした社員についても、解雇に伴うコストが過大な場合には使い続けた。
基本的にスタートアップしたばかりの企業や急成長を目指している企業は、人事にシビアな面があります。大企業とは違って常にリスクを取った決断をしているので、能無しを雇っている金銭的な余裕はないという事情もあります。
とはいっても、みんなが集まっているミーティングの場で名指しで解雇されたりするようなので、やっぱりこのヘイスティングスのやり方はかなり激しいですね。
とはいえ、結果を見れば、ヘイスティングスがCEOになったからこそ、現在のネットフリックスがあるのは間違いないわけです。
ランドルフの主導した家族経営的なポリシーのままで成長させた場合、ここまでスピーディにネットフリックスが成長できたかどうかはわかりません。
(もちろん、ランドルフの家族敵経営のほうがもっともっとネットフリックスの資産価値を高める経営ができたということも考えられるわけですが)
最近は日本でも「大手も安泰じゃないからベンチャーにいけ」みたいな話が増えてきましたが、当然ながらベンチャーにはベンチャーなりの厳しいところがあり、外資系並みの実力主義があります。
そのあたりの厳しさがとてもよくわかりますね。
こういう経営者の非常な一面は、日本の経営者を扱った本ではなかなか見られないのではないでしょうか。
これはもちろん、創業者本人が書いたものというよりも、コラムニストが書いたということが影響していると思いますが、マクドナルド創業者のレイ・クロックとか、ジャック・ウェルチのような苛烈な経営者が敏腕として評価されるアメリカ的な価値観と言えるのかもしれないですね。
もうひとつおもしろいのは、ブロックバスターです。
ブロックバスターは全米でレンタルビデオ店を展開していた企業で、要するにネットフリックスのライバルです。日本でいえばツタヤでしょうか。
レンタルDVDの郵送、ビデオ・オン・デマンドの可能性を完全に過小評価していたブロックバスターは、急成長するネットフリックスにオンラインレンタル事業であっという間に追い抜かれてしまいます。
というわけで彼らも急遽「ブロックバスター・オンライン」を立ち上げるわけですが、やはりここで差が出るのがテクノロジーの差のようですね。
以前のエントリーでも書きましたが、サブスクリプションビジネスというのはただ単に定額で提供すればいいわけではなく、そこから得られた顧客行動・嗜好のデータを集積・分析してカスタマイズしていくことが肝になります。
ネットフリックスの場合、大きな差をつけたのが「レコメンド機能」ですね。
検索キーワードや視聴履歴などから、「あなたはこんな作品が好きなんじゃないですか?」とおすすめしてくるあれです。
ネットフリックスは独自のアルゴリズムでこのリコメンド機能をつくっているため、ユーザーは一度視聴するとどんどん見たい動画が増えてきて、やめられなくなるというわけです。
ブロックバスターにはもちろんこんな技術もノウハウもありませんから、太刀打ちができません。
とはいっても、ブロックバスターもぼんやりしていたわけではなく、「トータルアクセス」という戦略でネットフリックスを苦しめました。
これはオンラインでレンタルするたびにリアル店舗で無料レンタルサービスが受けれられるというものです。
いわゆる値引き戦略ですね。
ただ、当たり前ながらこんな戦略が長く続けられるはずもなく、ブロックバスターは2013年に倒産してしまいました。
日本のツタヤの未来を見ているようですね。
後記
久しぶりに「カイバ」を見ました。
DVDもいまだに持っているアニメです。
やっぱりいいですね。
改めて思ったのは、このアニメは「10話がすべて」ということです。
ハッキリ言ってしまえば、1~9話目は10話目を見るための壮大な前準備でしかありません。
そして、11話、12話目はただのオマケです。
10話目のカタルシスはなかなか体験できないものです。
もう、「いい」としかいえない。
多分この作品は今後も何年かおきに見るでしょう。
まだ見ていない人はぜひ視聴してほしいもんです。
残念ながらこちらはアマプラもネトフリもフールーでも見れないのですが。。。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。