『ざんねんな兵器図鑑』(世界兵器史研究会・著)のレビュー
いわゆる雑学系の書籍やムックなどで、たまに著者名が「○○研究会」みたいなものになっているものがありますよね。
今回紹介するこちらの本がまさにそうなのですが。
これは要するに、とくにそのジャンルに関する専門家ではないライターや編集プロダクションがいろいろな文献や資料を当たってまとめてつくりあげた本を発行する際に、それだと格好がつかないので適当な団体をつくりあげて著者名にするパターンです。
実際にそういう会があるわけではありません。
私自身、かつて編プロでたくさんムック本をつくって、そういった架空の研究会の会員になっていた経験があるのでよくわかります。
これも今になって考えれば不思議な話で、別にこうした雑学系の本で著者で選ぶような読者は滅多にいないでしょうから、こんな架空の団体をつくり上げなくてもよさそうなものだと思うのですが、そこらへんはなにか事情があるのかもしれません。
ともかく、この本はそういった架空の団体名を著者に仕立て上げているような本ですから、内容の中身のこさは推して知るべし……ですね。
もうちょっとちゃんとした本の場合、ここに「監修者」として専門家の名前が入ったりしますが、本書の場合はそういった監修者の名前もありませんし、参考資料の一覧ページもありませんから、情報ソースがどれだけ信頼できるものなのかは不明です。
あまり内容を真に受けすぎないほうがいいでしょう。
あくまで雑学本として、暇つぶしの一環に「へー」と口に出しながら読むくらいの本だと思ってください。
さて本書はおそらく2016年の超ヒット冊『ざんねんないきもの辞典』をインスパイアしたものだと思われます。
ヒット作が出るとそれに類する本が大量に出版されるのはよくある話です。
とくに「いきもの辞典」のように、ちょっと切り口を変えればいくらでもつくり用のあるものならなおさらでしょう。
ただ、個人的にはいきも辞典よりも、本作のような「兵器図鑑」のほうが好きです。
これはなぜかというと、生き物と兵器を比べた場合、「人間の意思の有無」が大きな差となるからです。
私は美術が好きですが、大自然本来の美しさにはあまり興味がありません。
山とか海とか森とか、そういうのにはあまり惹かれません。
その代わり、絵画とか彫刻とかには惹かれます。
これはなぜだろうかと昔考えたことがあるのですが、私は基本的に「人の意思が感じられるもの」が好きなんですね。
自然もたしかに美しいですけれど、それは狙った美しさではありません。
それがいいという人もいると思うのですが、私はむしろ制作者の明らかな意図やメッセージがあるほうが、それを読み解くおもしろさがあると思うのです。
翻って「いきもの」と「兵器」を比べてみた場合、「ざんねんないきもの」には意図が感じられません。
たしかに間抜けに見えるけれど、本当にたまったまそうなってしまっただけです。
それに引き換え、兵器というのはそれをつくりだした人間の明確な狙いがあって、どんなにバカバカしい形にみえても、制作者には制作者なりのロジックがあったはずなのです。
そういう人間のアホらしさが垣間見れるのが好きです。
いくつか画像と一緒に紹介したいのですが、いかんせんマニアックな武器ばかりで著作権の不明な画像が多いです。
パブリックドメインのものやほかのウェブ記事に転載されている本書のイラストのものだけ選びましたが、本書はすべての武器がオリジナルイラストで紹介されているので、気になる方はぜひ読んでみてください。
いくつか、ご紹介します。
ヘルメット銃
ヘルメットに銃をつけてしまえば照準が合わせやすいだろうという発想です。
ただし、反動が半端なく、一発打つと間違いなく首をやられる武器です。
80cm列車砲
銃の口径が80cmもある超巨大な列車砲です。
威力は抜群で、要塞をまるごと吹き飛ばすことができたそうですが、1時間に2~3発しか打てず、さらにいちいちレールを敷いて移動する必要があり、飛行機に狙われるとイチコロだったので活躍の機会はありませんでしたとさ。
A40アントノフ
戦車は移動が大変だから、翼をつけてグライダーにしちゃった☆という兵器です。
まあ、実際は戦車がおもすぎて滑空ささせるのが無理だったので、テスト飛行1回で打ち切りになったそうです。
氷山空母ハボクック
海水を凍らせた氷山で空母を作ることで、損傷してもすぐに海の水を凍らせて回復できる夢の空母です。
ただし、海の水を凍結させるのにとんでもないエネルギーが必要なことがわかり、実現には至りませんでした。
P-82 / F-82 ツインマスタング
2人交代で長距離飛べるようにした飛行機です。
ただ、結局期待の調整にメチャクチャ手間がかかり、普通に作ったほうが安価で合理的だということがわかったようです。
個人的に一番好きなのは1930年代にドイツが考案した「ミドガルドシュランゲ」ですね。
全長524m、総重量6万トン、27両もの戦車を並べ、先端にドリルをつけて地中も進めるロマンあふれる武器です。
さすがに実現に至らなかったようですが、このあたりの時代のドイツはぶっ飛んだ兵器を考案してくるのでおもしろいですね。
ちなみに、攻殻機動隊SACのスピンオフマンガ『タチコマなヒビ』でも、こういったおもしろ兵器を紹介しているので、興味がある方は併せてどうぞ。
後記
アマプラに『プロメア』が加わっていたので見ました。
これはトリガーという制作会社によるオリジナル長編アニメで、『天元突破グレンラガン』『キルラキル』でタッグを組んだ今石洋之・中島かずきがそれぞれ監督・脚本を務めた作品です。
やっぱりドリルが出てきます。
ドリルはロマンです。
ちなみに、トリガー自体はガイナックスに所属していたアニメーション演出家の大塚雅彦と今石洋之、制作プロデューサーの舛本和也の3人が2011年に設立したアニメーション制作会社です。
個人的には『宇宙パトロールルル子』が大好きです。
さてプロメアのあらすじです。
炎を操る新人類バーニッシュの出現に端を発する惑星規模の発火現象である世界大炎上により、人口の半分が焼失してから30年が過ぎた世界。自治共和国プロメポリスでは、炎上テロを繰り返す過激派バーニッシュの集団マッドバーニッシュに対抗すべく、対バーニッシュ用装備を扱う高機動救命消防隊バーニングレスキューが消火活動を行っていた。バーニングレスキューの新米隊員ガロ・ティモスは、火災現場でマッドバーニッシュの首魁である少年リオ・フォーティアと出会う。「燃えて消す」を流儀とするガロと「燃やさなければ生きていけない」と語るリオは、互いの信念をかけて熾烈な戦いを繰り広げる。燃える魂をぶつけ合う二人の戦い、果たしてその先にあるものとは――(Wikiより)
特殊能力を持ったミュータントが人類から差別を受けるのは一種お決まりの設定ですね。
『プロメア』ですが、まあ、ふつうでした。
エンタメ作品として可もなく不可もなく、という感じ。
作画はすごい動きますが、あれが2時間続くとなかなか疲れます(私が年をとっただけかもしれませんが)。
ストーリーラインはとくに驚きもなく、キャラクターの行動原理もツッコミどころ満載で浅い感じがしますが、まあそこは軽くスルーするべきでしょう。
とりあえず勢いだけで突っ走り、最後はズバッと解決してくれる爽快さはあります。
まあ、一度見れば十分かな。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。