MBAって結局、なに?~『MBA100の基本』のレビュー~
今回紹介する本はこちら。
著者になっているグロービスというのは企業の名前だ。これについては、以下で詳しく説明する。
グロービスってなに?
グロービスのWebサイトを見ると、事業概要のところで自分たちの会社についてこのように説明している。
グロービスでは、「ヒト」の面では、グロービス経営大学院、グロービス・エグゼクティブ・スクール、グロービス・コーポレート・エデュケーション、「カネ」の面では、グロービス・キャピタル・パートナーズによるベンチャー企業への投資、「チエ」の面では、出版や情報発信サイト/アプリ「GLOBIS知見録」などを通じて経営ノウハウの発信を行っています。
なるほどわからん。
とりあえず、「経営に関するいろいろなサービスを提供している会社」と考えておけばいいだろうか。ただ、このグロービスという会社を説明する上で外せないのは、「グロービス経営大学院」である。むしろ、こっちのほうが有名。
これは株式会社が設立した私立大学で(ただし、2008年に学校法人に代わっている)、基本的に社会人の人だけ入学を認めている。学科は「経営研究科」のみで、ここでMBAについて教えているのだ。
で、MBAってなに?
で、MBAというのは、ビジネスパーソンなら聞いたことはあると思うが、よほど意識が高い人でないとちゃんと説明できないと思うので、徒花も調べながら紹介していく。
MBAというのは「Master of Business Administration」で、私なりにカッコよく(厨二的に)和訳すると「経営管理に精通した者」。ただ、だからといって自分が経営するというよりも、「経営者をサポートするビジネスプロフェッショナル」ということらしい。とにかく、大手の企業では経営幹部になるために半ば必須のスキルと言っても過言ではなく、取得すると昇給したり昇進できたりするようだ。
取得方法にはいくつかルートがあるが、とにかく1~2年は勉強しないといけない。くわしくはこちらも参考のこと。
で、本書はMBAで学ぶことができる内容をすごーく単純化して一冊に分かりやすくまとめた本である。今年1月に発売して以来、地味に売れ続けている。黒をベースにした拍子に赤い箔を施した上品なデザインだが、個人的にはカバーの紙が気に食わない。おそらく単価の高い紙だと思う。
では以下、100項目紹介されている本書の内容のうち、個人的になるほどと思った箇所を独断と偏見でピックアップしていく。
ベストプラクティスに解はない
ベストプラクティスというのは「目標達成に対して最も効率の良い方法」のこと。企業の場合、ベストプラクティスはたいていベンチマーキングになる。
ただし、ベンチマーキングに頼ると、結局は競合に勝つことができない。それは「ベストプラクティスは過去の方法論である」「自社の強みを活かしきれない可能性がある」という2つの理由に由来する。ベストプラクティスそのものが悪いわけではないが、頼りすぎるのは問題だ。
よきリーダーとなるためには、よきフォロワーとなれ
引用しよう。
ポイントは、フォロワーシップとリーダーシップにはある程度高い相関があるということです。特に若い頃に好ましいフォロワーシップを発揮する人材は、長じてリーダーの立場になった時にも、好ましいリーダーシップを発揮する可能性が高いのです。
これはちょっと意外だった。素晴らしい成績を収めた野球選手が名監督になれないような感じで、よい実務家はよい管理職にはなれないような感じがしたからだ。しかし、そうでもないらしい。
借金は素晴らしい
「無借金経営」と聞くと、日本では賞賛されるべき企業のような感じがするが、少なくとも企業の場合、借金がないことはもろ手挙げて喜んでいいこととは言いがたい。企業にとって借金があることは、次のような良いことがある。
1.成長の機会を逃さない
2.節税効果が見込める
3.会社に緊張感を与えて規律を生じる
おもしろいのは、1958年にフランコ・モディリアーニとマートン・ミラーが提唱した「MM理論」。モディリアーニ=ミラーの定理と呼ばれるこれは、「法人税が存在しない状況では、有利子負債と株主資本のバランスは企業価値に影響を与えない」ことを示したもので、逆に言えば、法人税がある場合、利子費用を損金処理して法人税の負担を減らすことで企業価値を上げることができると考えられるらしい。
スカイツリーの頂上から飛び降りた時のリスクはゼロ
これもおもしろいたとえだ。
ファイナンスの世界では、リスク=統計的なバラつき、と考える。この論理で行けば、スカイツリーから飛び降りるとまず100%死ぬので、バラつきはほぼゼロに近いため、リスクもゼロであると表現できる。
もちろん、これだけではあまり意味がないが、ファイナンスにおけるリスクの考え方が理解できていると、たとえば株式のリスクの高低を測るβという指標の意味がわかるようになってくる。
オレンジの皮か中身か
オレンジを巡って争っていた姉と妹。じつは、姉が欲しいのはママレードを作るための皮だけで、妹が欲しかったのは実のほうだった……というオチ。
オレンジなら笑い話で済むが、実際問題、会社同士の交渉でも、こうした行き違いは起こったりする。つまり、相手が本当に何を望んでいるのかを見誤っていることで、本来だったら円満に締結できるはずの契約がなかなか進まなかったりする事態だ。この場合ZOPA(一見妥結範囲)を探ることが重要になる。
以上。
まあぶっちゃけ、ビジネス書をよく読む人にとっては「いまさら」な内容も多分に含まれていて、それぞれの項目は浅い。しかし、広く浅く、自分の知識をおさらいしつつ、新しい発見を見いだせるような本ではある。カバーの手触りは悪いけど。
今日の一首
77.
瀬をはやみ 岩にせかるる 瀧川の
われても末に あはむとぞ思ふ
崇徳院
現代語訳:
川の流れが速いので、岩にせき止められて2つに別れた流れの急な川があとあとまた一つに戻るように、また一緒になりましょう。
解説:
日本三大怨霊のひとりとしても有名な崇徳院の一首。岩によって強制的に分けられた川の流れを、恋人と引き離された自分にたとえて詠んでいる。とくに技巧が凝らされているわけではないが、「せをはやみ」という言葉の音韻が個人的には好み。
後記
Amazonビデオで『モンスター・ホテル』を見た。結論を言うと「メイヴィスかわいい!」
いやぶっちゃけ、顔だけを見るとそんなでもない。たしかに私はつり目がちの女の子は好きだが、メイヴィスはちょっとほほがぷっくりしすぎている感じがする。ただ、所作がかわいい。というか、恋をしているティーンエイジャーの女の子はかわいい、というだけかもしれない。
ちなみに、『モンスター・ホテル』はアメリカのディズニーチャンネルで短編アニメーションも制作されているのだが、こっちのメイヴィスのほうがかわいい。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。