『サブスクリプションで売上の壁を超える方法』(西井敏恭・著)のレビュー
みなさんは本を選ぶときに、どんなところで選ぶでしょうか。
タイトルとか装丁、内容(小説だったらあらすじ)、あるいは著者名あたりを見る人が多いと思います。
まあ購入をちらっと考えたら、その段階になってから値段もチェックしますよね。
編集者が書店で本をチェックするとき、普通の読者の人がチェックしないところをチェックします。
奥付とかデザイナーの名前とかライターの有無とかいろいろありますが、とりあえず見るのは「出版社名」です。
「この本、どこの会社が出したんだ?」というのは、必ずチェックします。
世の中には2種類の商品があります。
「メーカーがチェックされる商品」と「メーカーがチェックされない商品」です。
前者で言えば、クルマとか洋服、腕時計、PC、スマートフォンなんかが代表的ですね。「どこがつくってるのか」が気になるものです。
反対に、書籍とかお菓子、文房具なんかは、どこのメーカーかいちいち確認しないと思います。
この両者の違いは何かというと、「使い続けるものかどうか」というところじゃないかなと思います。
クルマや洋服、IT機器は、一度購入したらしばらくの間はそれを使い続けるものです。
値段もそれなりにするだろうから、ホイホイ買い換えるわけにもいきません。
そのため「失敗したくない」という心理が働きますね。
でも、本やお菓子や文房具なんかは、値段もたかが知れているし、使う期間が限られているから、「まあ失敗してもいいや」という心理が働くがゆえに、いちいちメーカーをチェックしたりはしないわけです。
※あと書籍の場合、内容のおもしろさを担保するのはメーカーである出版社であるよりも著者が負うところが大きい、というのもあるかもしれません。
ただ、やっぱりこれからのビジネスを考えたとき、やっぱり前者のように「メーカーで選ばれる商品」をつくったほうが強いでしょう。
その代表格こそ、アップルです。
アップルはもちろん性能の良さやデザイン性の高さがあるわけですが、「アップル製品だから買おう」というファンの人たちがいます。
それが、アップルという会社を支えているわけです。
一方、たとえば書籍の場合は、「その出版社の出す本のファン」というのに、少なくとも私はお目にかかったことがありません。
人々が本を買うのは、その商品(あるいは著者)が気に入ったからであり、つまり単発的なものなのです。
だから、出版社は新刊をつくったら、その都度、ゼロベースからプロモーションをかけなければいけません。
一回一回の買い物がすべて単発で終わり、仕切り直しになるので、またゼロから見知らぬ人たちに向けてその本の良さをアピールし続けなければいけないわけです。
これはけっこう面倒くさい作業で、時間も手間もかかります。
会社をブランド化してファンになってもらうことが大事だということは最近はよく言われますが、どうしてお客様にファンになってもらうことが大事なのかというと、一度ファンになってもらえれば会社としては楽だからです。
(そのためのブランド構築やブランドイメージの死守は大変みたいですが。最近読んだアップルの本でもそのあたりのことは書かれています)
ここのところ流行っているサブスクリプションというやつも、端的に言えば「単発の取引はやめて、定期購入してもらおうよ」ということですね。
そのほうが会社としては安定的にキャッシュ(現金)が入ってきて経営が安定します。
そのわかりやすい教科書的な本を読んだので、サラッとご紹介しておきます。
著者の西井さんはオイシックスをはじめとするEC企業でサブスクリプション事業をやっている方みたいです。
前著にはこちらもあります。
本書はこちらの続編のような感じみたいですね。
LTVとはなにか
仕事でマーケティングをしている人は馴染みのあるだろう「LTV」というのがあります。これは「顧客生涯価値(Life Time Value)」のことで、一人のお客さんが生涯に渡って企業にもたらす利益のことを指します。
たとえばiPhoneを使っている人は、スマホを買い換えるときにもまたiPhoneを買う事が多いと思います。
でも、たとえば富士通のAndroid端末を使っている人は、買い換えるとき、次はファーウェイのAndroid端末に買えるかもしれません。
アップルがすごいのは、一度アップルの製品を買うと、それに満足した顧客がずっとアップルの製品を「買い続けてくれる率」が高い点です。
サブスクリプションというのは、つまるところ、このLTVを向上させるための仕組みの一つであると言えるわけですね。
サブスクリプションのよくある勘違い
ちなみに、著者は「多くの人がサブスクリプションについて誤解している」と述べています。
「定額利用・定額販売=サブスクリプション」ではありません。
サブスクリプションと呼べるのは、定期的な利用があり、かつ、そのデータが活用されている商品・サービスに限ります。
その意味で言えば、日本企業が実施しているサブスクリプションビジネスが、じつはサブスクリプションではないということですね。
この本も、マーケティングでは参考になります。
かなりエッジの立ったタイトルですが、要するにどういうことかというと、
「人の行動が『買う』から『利用する』に変化する」
ということです。
これは人々の所有欲の減退からも見て取れます。
シェアリング・エコノミーという言葉も一時期もてはやされたりしましたが、別に色位なものを自分で所有しなくても、「自分がつかいたときに使いたい文だけ使えれば十分」なわけです。
たとえばゲームソフトでも、いまではクリアしたらメルカリに出品してしまう人は少なくないと思います。
一度クリアしたことでそのゲームソフトを利用し終えてしまったわけだから、手放すと同時にいくばくかのお金も手に入れようという流れですね。
サブスクリプションビジネスはまだまだいろいろな企業が試行錯誤を繰り返しているところだと思うのですが、本書ではこうしたサブスクリプションの定義からKPI(Key Performance Indicator:評価の指標)、具体的なビジネスモデルの作り方まで、デジタルマーケティングにあまり造詣が深くない人でもわかるよう、擁護を割と丁寧に解説しながら説明してくれる一冊です。
後記
最近はディズニーのポップタウンをやっています。
ちょっと前には「猫のニャッホ」もやってたんですが、こういうシンプルなパズルゲームはハマるとやめられないですね。
まあ、不意に飽きてやめてしまうのですが。
ちょっとしたストーリーもあり、主人公がいろいろなディズニーキャラクターを模したコスチュームに変わるので見ていて楽しいです。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。