本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

私たちは世界を正しく見ていないのかもしれない ~『ファクトフルネス』のレビュー

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最近は高齢ドライバーによる自動車事故がニュースで取り上げられることもあり、一部、過激な意見の持ち主だと「ある一定以上の年齢になったら運転免許証を取り上げろ」などという意見も見られる。

 

もくじ

 

実際、内閣府が発表しているデータでも、75歳をひとつの区切りとして、死亡事故件数が大きく増えているのがわかる。

 

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https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html

 

ただし、じつは同じページを見ていると、こんなグラフもある。

 

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これは交通事故による死者数の推移だ。

交通事故による死者数は減り続けている。

(ついでにいえば、交通事故で亡くなる割合が高いのもまた高齢者である)

もっと長期間のデータだと、こういうのもある。

 

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https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_tyosa-jikokoutsu

 

交通事故で死ぬ人の数は年々減少しているという事実

高齢ドライバーによる死亡事故はたしかに増えているかもしれないが、日本全体で見れば、交通事故によって命を落とす人の数は減っている。

ただし誤解してほしくないが、ここで私が言いたいのは、「高齢ドライバーの交通事故はたいした問題ではないから対処する必要はない」ということではない。

 

そうではなくて、

「交通事故で亡くなる人の数は毎年減り続けているという事実をニュースが伝えることはまずない」

というところだ。

 

これは当たり前といえば当たり前のことで、ニュースは人々の興味を引くもの、目新しいもので人の興味を引くのが目的だからだ。

テレビ番組で「昨年の交通事故による死者数は昨年よりも減りました。これは例年の傾向どおりです」といっても、おもしろくもなんともない。

 

多くの人が間違えた問題 

私たちは往々にして、このようにメディアの伝える数字を信じてしまうがゆえに、実際の世界の姿を誤って認識してしまうことがある。

こうした人々のバイアス(偏り)を指摘し、もっと正確に世界の姿を見るための方法を教えてくれるのが、今回紹介するこの本だ。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

 

本書では冒頭で、読者に向けていくつかの質問を投げかける。

いくつか抜粋してみよう。

 

世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年間でどう変わったでしょう?

A 約2倍になった
B あまり変わっていない
C 半分になった
(正解はC)

世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?

A 20%
B 50%
C 80%
(正解はC)

世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?

A 9年
B 6年
C 3年
(正解はA)

このクイズは、さまざまな国の、さまざまな分野で活躍する人々に実施してきた。医学生、教師、大学教授、著名な科学者、投資銀行のエリート、多国籍企業の役員、ジャーナリスト、活動家、そして政界のトップまで。間違いなく、高学歴で国際問題に興味がある人たちだ。しかし、このグループでさえも、大多数がほとんどの質問に間違っていた。一般人の平均スコアを下回り、とんでもなく低い点数をとったノーベル賞受賞者や医療研究者もいた。優秀な人たちでさえ、世界のことを何も知らないようだ。

 

闘争・逃走本能

ニュースを見ていると、いつも世界では戦争、飢饉、自然災害、テロ、疫病、極度の貧困場仮が起きているように感じられる。

しかし、それと同じくらい、科学技術、医療は発達し、世界で不幸な状態にある人の和は減り続けていて、つまり、世界は確実に良い方向に向かっている

 

私たちがなぜ謝った世界の捉え方をしてしまうのかというと、私たちが生物として、「少ない情報から一瞬で状況を判断する」という習性が身についてしまっているからだ。

サバンナで肉食獣が近くにいるような気配がするとき、そこで詳細にあらゆるデータを検証して、本当に肉食獣がそばにいるのかをじっくり判断している余裕はない。

肉食獣がいそうな気配がしたら、急いで闘う準備をするか、逃げ出すかという判断が必要だ(闘争・逃走反応 fight-or-flight response)

 

私たちが持っている10の本能

ただ、この本能は現代社会に生きる私たちにとって、先ほどのように事実を正しく認識できなくするリスクもある。

そこで本書では、そういった人々のバイアスを10個、説明してくれる。

簡単に説明していこう。

 

1.分断本能

私たちは「1」か「0」か、「白」か「黒」か、物事をハッキリさせたがる

 

2.ネガティブ本能

私たちは物事の良い面よりも悪い面のほうに注目し、ネガティブになりがち

 

3.直線本能

「グラフはまっすぐ伸びる」と勝手に考えてしまいがち

 

4.恐怖本能

自分に危害が加えられそうな物事を重視し、パニックになりがち

 

5.過大視本能

ただ1つの数字・出来事を重視し、ほかと比較するのを忘れがち

 

6.パターン化本能

ある1つのパターンをすべてに適用して、グループ全体に当てはめがち

 

7.宿命本能

小さな変化を見逃し、「大昔から変わらないし、これからも変わらない」と思いがち

 

8.単純化本能

自分がもともと持っていた考えに固執し、すべてのことを解釈しがち

 

9.犯人捜し本能

問題に対して犯人を捜し、見せしめに責め立てたがる

 

10.焦り本能

いますぐに決断しようと判断を急ぎがち

 

詳しい本能の内容と、これらの本能にだまされないようにする方法についてはぜひ本書を読んでほしいが、どれも読んでいるとなかなか納得感があるものばかりだ。

 

くら寿司の対応は正しいのか?

最近のニュースだと、くら寿司の店員が魚の切り身をふざけてゴミ箱に投げ込み、それをまな板の上に戻す動画をSNSにアップしたことが問題になった。

従業員によるこうした「おふざけ動画」はさまざまなチェーン店で相次いで発覚し、くら寿司では実際に法的措置を検討しているらしい。

http://www.kura-corpo.co.jp/release/pdf/20190208_01.pdf

 

SNSの反応なんかをみていると、わりとくら寿司の対応に好意的な意見を寄せている人が多いように見受けられる。

これはまさに、「9.犯人捜し本能」の一環とはいえないだろうか。

たしかに、この動画に関わった従業員を見せしめとして法的に訴えることは、くら寿司のブランドイメージと従業員などを守り、ほかの飲食チェーン店でも同様の出来事を抑制する効果はあるのかもしれない。

これも単純に「正解」「不正解」で白黒ハッキリつけられる話ではない。

 

私が大事だと思うのは、ここで思考停止せず、「もっといい方法はないのか」を考えることだ。

たとえば、これもニュースではほとんど報じられないが、くら寿司はこういう動画を作って、どういう環境を構築しているのかもアピールしている。

 


信頼回復に向けた取り組みについて

 

ほんのわずかでもよりよい世界になることを願いつつ

情報はただ与えられるものではなく、自ら採りに行かなければならない。

もちろん、それはけっこう面倒くさいことだし、多くの人はそういう面倒くさいことをしたがらないことも、このブログ記事や、本書『ファクトフルネス』を呼んでも実践しないだろうことも理解している。

それでも、ただ与えられた情報と本能的な直感だけに頼ることの危険性を頭の片隅においておく人が増えるだけでも、世界はわずかずつ、変わるのかもしれない。

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

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統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

 

 

後記

私は胃腸があまり強くないのでヨーグルトとか納豆とかをよく食べているのだけど、最近はお酢も成長去ろうがあるということで、リンゴ酢(添加物とかが入っていないやつ)をウィルキンソンの強炭酸水で割って飲んでいる。

最初はお酢くささが気になったけど、慣れるとおいしい。どうしてもすっぱい場合は、液体のビートオリゴをお酢に混ぜると味がマイルドになる。

そして、すごく便が出る。まあ、食事や食べ物はかなり個人差があると思うけれど、朝のすきっ腹に飲むとモリモリ出る。

もしだったら一度、お試しあれ。

信州産 りんご酢 500ml

信州産 りんご酢 500ml

 

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。