論文だって自己表現の一つなのだ ~『ヘンな論文』のレビュー
私は一応大卒なんだけれども、ゼミに入っていなかったので卒業論文というやつを書いたことがない。
もくじ
ということを改めて書くと、私は本当に大学を卒業しているのだろうか、じつは大学を卒業していなくて、知らず知らずのうちに学歴を詐称していたりするんじゃないかと思えてくる。
たぶんどこかのファイルに卒業証書があるはずだからたぶん大丈夫だ。たぶん。
そんなこんなで紹介するのはこの1冊。
内容はまさにタイトルの通りで、世の中に実在するヘンな論文をピックアップして解説した本だ。
著者のサンキュータツオさんはワタナベエンターテイメントに所属しているお笑い芸人さんで、米粒写経というコンビを組んでいるようだが、残念ながらテレビで見たことはない。
こんな本を書くくらいの珍論文コレクターであり、蛇足ながらアニオタであり、腐男子であり、エヴァの渚カヲルファンらしい(Wikipedia情報では)
紹介されている論文は、こんなの
じゃあどんな論文が紹介されているのか。
こんな感じだ。
・世間話の研究
・斜面に座るカップルの行動内容と距離の関係について
・浮気する男の行動心理
・あくびはなぜうつるのか?
・インスタントコーヒーのカップをかき混ぜるとだんだん音が高くなるのはなぜなのか?
・女子高と驚愕の高校で女子の意識にどんな差があるか?
・猫に癒し効果はどのくらいあるのか
・おもしろい謎かけとおもしろくない謎かけはどこに差があるのか
・元近鉄ファンと元オリックス・ブルーウェーブファンに違いはあるか
・床山(相撲取りの髷を結う職人)の意識調査
・しりとりはどこまで続けられるのか
・おっぱいの揺れとブラのずれの関係
・湯たんぽの種類
どれもきわめて興味をそそられるものばかりだが、まあぶあっちゃけ、読んでみるとおもしろいものとそうでもないものがある。
個人的には「世間話」「あくび」「謎かけ」「しりとり」あたりがおもしろかった。
ただし、今回はこれらの内容については説明しない。
これらの論文がどういうものなのか興味がある人は本書を読んでいただくとして、ここではコラムについて紹介しようと思う。
そもそも論文とは?
まずは「そもそも論文とは何ぞや」という内容だ。
世間一般で言われる「論文」というのは、修士号取得以降の研究者が書いた、雑誌に掲載された論文のことを指す。
雑誌には主に2種類ある。「紀要」という大学が発行している雑誌と、「論文誌」という研究領域をおなじくしている人たちが投稿しあう雑誌だ。
「紀要」は、ざっくり言うと大学の業績をまとめた雑誌。その1年、その大学はどんな研究者がどんな研究をしたのか。それがわかるものだ。大学の価値そのものだとも言える。が、なかなか大学生たちが読まないのが残念!
査読は、大学院生の書いたものなら指導教授だけ、あるいは2人。指導教授自らが書くのも紀要。投稿のハードルが低いのがいい。
私も寡聞ながら、大学が「紀要」なるものを発行していることを知らなかった。
学術雑誌も、査読が甘い雑誌とそうではないものがあるらしく、本書はそういうもののなかからセレクトされているものが多いようだ。
どんな研究も4つに分類できる
もう1つは、研究をおもしろい切り口で4つに分類しているコラムから
さまざまなジャンルでいろんな研究がされ、刻一刻と専門も細分化されていっている現在であるが、研究には4種類しかない。あえて断言してしまうが、4つ、とおぼえておくと、よくわからない研究もつかみやすくなると思うので紹介したい。
まず、大きくわけて2つある。「人間とはなにか」についての研究と「この世界とはなにか」に関する研究である。
「人間」には「私」や「あなた」や「彼・彼女」も含む。
「世界」はそんな私たちの周りにあるものはなんなのか、この環境はなんなのか、なぜ私たちはここにいるのか、ということを含む。宇宙も含む。
次に別軸の2つの研究に、「いまどうなのか」についての研究と、「いままでどうだったのか」に関する研究がある。
これは専門的には「共時的研究」と「通時的研究」といわれている。「現在」と「過去から現在まで」である。どちらも「未来」への予見を含む。時間を横で区切る(現在) か、縦で区切るか(過去 現在 未来) のちがいである。
つまり4種類とは、
1.「人間とはなにか」の「いまどうなのか」の研究
2.「人間とはなにか」の「いままでどうだったのか」の研究
3.「この世界とはなにか」の「いまどうなのか」の研究
4.「この世界とはなにか」の「いままでどうだったのか」の研究
である。
もちろん程度の差はあるが、イメージでいうと、どの研究もXY軸で構成された平面図の、4つに区切られたどこかには必ず位置して
これはなかなかおもしろいし、割と納得感のある分類だと思う。
美しい夕景を見たとき、それを絵に描く人もいれば、文章に書く人もいるし、歌で感動を表現する人がいる。
しかし、そういう人たちのなかに、その景色の美しさの理由を知りたくて、色素を解析したり構図の配置を計算したり、空気と気温を計る人がいる。それが研究する、ということである。
ちなみに本書、好評だったのか第二段も出ている。
ちなみに、Kindleだと2冊合本版もある。
私はこっちを買ったので、引き続き続編も読むぞ。
ヘンな論文【2冊 合本版】 『ヘンな論文 【電子特別版】』『もっとヘンな論文 【電子特別版】』 (角川学芸出版単行本)
- 作者: サンキュータツオ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版
- 発売日: 2017/05/29
- メディア: Kindle版
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後記
Amazonプライムで『パシフィック・リム』と『パシフィック・リム/アップライジング』を見ました。
謎の生物KAIJU(怪獣)に襲われるようになった世界で、人類が開発した巨大人型兵器「イェーガー」との戦いを描くSF怪獣映画。
監督のギレルモ・デル・トロは押井守をはじめとする日本のアニメの大ファンで、本策でもそんな彼の日本怪獣作品に対する愛があふれている。
一作目は過去に見たことがあったのだが、内容を忘れていたので見返して、続編も見た。
率直に言えば、作品の完成度は一作目のほうが高い。本当に人類が滅ぼされそうな絶望感にあふれているからだ。続編はあまりそれがなかった。アクションシーンは圧巻だが。
ちなみに、ギレルモ監督作品だと『パンズ・ラビリンス』もおすすめ。
こちらはダークファンタジーだ。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。