本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『エクス・マキナ』にちょっと失望する

 

今回見たのはこちらの映画。

 

もくじ

 

エクス・マキナ (字幕版)

エクス・マキナ (字幕版)

 

 

なんか細々と話題になっていて、軒並み高評価だし、個人的にAI系の話には興味があったので見てみた。

 

が、ぶっちゃけ、期待したほどじゃなかった。

 

ウソをついているのはエヴァか、ネイサンか?

 

ともあれ、まずはあらすじ。

※Wikipediaには結末まで全部ネタバレしているので、見るときは注意したほうが良い。

 

 世界最大のサーチエンジン会社に勤めるプログラマーの青年ケイレブは、社内の抽選で当選して社長の別荘に招かれる。しかし、そこで社長・ネイサンから頼まれたのは、彼が密かにつくっていた人型の肉体を持ったAI・エヴァのチューリング・テスト(人間との会話によって本当に知性を持った人工知能か確認するテスト)だった。

エヴァとの会話を重ねるうち、彼はエヴァから警告を受ける。「ネイサンを信用してはいけない」

美しい顔を持ったエヴァはまるでケイレブに好意を持っているかのように接するが、それでも彼女の真意はわからない。果たしてケイレブをだましているのはエヴァなのか、それともネイサンなのか……。

 

ジャンル的にはSFサスペンス。

物語自体はネイサンの別荘という非常に閉じられた空間で繰り広げられ、主人公のケイレブはエヴァ、そしてネイサンと交互に会話をしていくうちに、だんだん誰がAIで誰が人間なのか、わからなくなっていく。

 

ちなみに、けっこうエロスの要素も強くてなまなましいので、ファミリーやカップルで鑑賞するのはあまりおススメできない。

 

最初から批判ばかりするのもアレなので、この作品の良かった部分をまずは述べよう。

 

エヴァのデザイン

 

エヴァは人工知能で、顔面以外は機械の体がむき出しになっている。

といっても、C-3POのようにいかにもメカメカしいわけではなく、鎖かたびらのように滑らかな曲線を持った金属質の部分と、ガラスのような透明な器の中でケーブルが光る部分が組み合わされたデザインになっている。

女性ならではの体のラインを醸し出しつつも、「明らかに機械」である側面も際立っていて、奇妙な妖艶さがあったのは良かった。

 

AIの正体

 

人工知能がどういう仕組みになっているか……というのは技術的な問題になりがちだが、製作者のネイサンがエヴァの頭脳に使用しているのは「検索エンジンそのものである。(ネタバレになるので反転)

そして、さらに彼はエヴァの表情や声質を読み取るデータを、なんと「世界中の携帯電話をひそかにハッキングして作り出した」と述べるのだ。

ネイサンによれば、これは自分だけではなく、世界中の企業が当たり前のこととして利用しているのだという。

 

本作で述べられているのは単にシンギュラリティ(人工知能が人間を凌駕すること)に対する恐怖ではなく、じつはすでに私たちの生活が自分のあずかり知らぬところですべて監視され、なにかに利用されているのではないかという恐れなのだ。

 

AIが人間の模倣をやめるとき

 

で、なにが私にとって期待はずれだったのかというと、結末が思ったよりも凡庸だった点だ。

そもそも、人工知能と人間の対話という状況設定はいまさら目新しさがない。

だからこそ、結末をどのようにし、どのようなメッセージ性を持たせるかに私はむしろ興味があった。

 

しかし、残念ながら目からうろこが落ちるようなメッセージ性は感じられなかった。

むしろ、結局AIがただ人間にあこがれ、社会を経験しようとする行動をとることは、AIがまだ人間の域に達したり人間を超越した存在になりきっていないことを表しているようにしか感じられず、そこが物足りなかった。

 

だいたい隔離された空間と非常に限られた登場人物だけで作っている作品であるのだから、サスペンスである以上「だれがAIなのか?」という点は見ている途中で多くの人が思い浮かぶ疑問だと思う。

そこで私としては、「じつは主人公を騙していたのはエヴァでもネイサンでもなかった!」というまったく第三の驚きがほしくて、それを期待していたのだが、そこで肩透かしを食らってしまったのだ。

 

おわりに

 

ちなみに、「エクス・マキナ」というのは「機械仕掛けの」という意味だ。

一般的には「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」という一連の単語で知られている。

これは古代ギリシャの時代に演劇の世界で使われた言葉だ。

もつれた物語に無理矢理決着をつけるため、神様を最後に登場させて終わらせるという、いまでいう「超展開」を意味する言葉である。

その意味では、この映画でもなにか「超展開」があれば、個人的な評価は変わったかもしれない。

 

あとあけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

エクス・マキナ (字幕版)

エクス・マキナ (字幕版)

 

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。