本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『サードドア 精神的資産のふやし方』(アレックス・バナヤン著)のレビュー

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いい本というのは、毀誉褒貶が激しいことが多いです。

読んだ人が多ければ多いほど、批判的に受け取る人も多くなるのは仕方がないことです。

この本も、売れた本の宿命なのか、Amazonなどを見ても辛辣なレビューが多くありました。

 

タイトルだけだと、どんな内容の本かわかりにくいですが、ザックリ説明すると、

「クイズ番組で大金を手にした大学生が、さまざまな成功者たちがどうやって最初の一歩を踏み出したのかをインタビューするための試行錯誤をつづったエッセー」

です。

具体的に、著者はビル・ゲイツスピルバーグレディー・ガガなどと話をしています。

しかし残念ながら、本書を読んでもそうした超ビッグネームの人たちの成功した理由を知ることはできません。

というのも、著者のアレックス・バナヤンさんが本書で書いているのは、そうした人々に何度もインタビューしようと悪戦苦闘しては失敗し、それでも諦めずにやり続けた挑戦の軌跡だからです。

なのでこの本は、もっとゲスい言い方をすれば「すごい人との人脈の作り方」といったほうが適切でしょう。

 

ここの認識のズレが、低評価の人たちの要因になっていると思われます。

成功者たちの成功の秘訣を知りたくてこの本を買ったのに、読んでもそれが書かれていないからこれは詐欺だ!というわけです。

これは出版社のミスリードも少なからず影響しているでしょう。

そういうふうに読者を勘違いさせようとする意図も見え隠れしていますから、こうした批判が来ることは承知の上だったのではないかと考えられます。

でも、タイトルを読めばわかるように、本書は成功の秘訣を明らかにしたものではありません。

そもそもサブタイトルが「精神的資産のふやし方」で、「お金持ちになる方法」ではないですからね。

 

ただ、何者でもない一般ピープルが著名人の人たちとつながるにはどうすればいいのか、その秘訣を知ることはできます。

これは、普通の会社員の人には関係のない話かもしれませんが、私のような仕事をしている人間にとっては非常に価値のある情報でした。

 

編集者の仕事の素晴らしいところは、「相対人に会う口実がつくれる」というところです。

たとえば芸能人だったり、芸術家だったり、政治家だったり、大学の先生だったり、SNSのすごいインフルエンサーだったり、普通だったら出会うきっかけがない人でも、「あなたの本を出したいので、会ってください」とお願いすれば、会ってもらえるチャンスが編集者にはあるわけです。

とはいえ、これは言うほどカンタンなことではありません。

私もこれまでさんざん有名な人達に企画書を送ってオファーを出してみたりしましたが、たいていはお断りされるか、無視されます。

でも、なにかのきっかけで一度、著名人と懇意になれれば、そこから数珠つながりでさらに著名な人や、これからブレイクしそうな人に会えることもあるのです。

 

人脈という言葉は、なんだか人を道具のようにみなしているようで最近は忌避されるきらいもありますが、そうはいっても「どんな人とつながっているか」は仕事をする上でめちゃくちゃ重要な要素です。

とくに編集者の場合、企画力とかマネジメント能力とか日本語能力とかももちろん大事なのですが、それよりも「どんな著者とつながっているか」という人脈力がそのままキャリアや収入に直結することも多いです。

また編集者でなくても、いろいろなコネクションを持っていることは思わぬ人生のターニングポイントを生んだりします。

最近はリファラル採用といって、転職サイトなどではなく、知り合いを通じて採用を行うことも増えています。

転職サイトを使うと、どんな人が応募してくるかわからないからいちいち試験したりしなければいけないですが、信頼できる知り合いを通じて採用すれば、少なくとも地雷となるような変なやつが来る可能性はぐっと減るからです。

 

ということで、有力な人たちとコネクションを持つことが大事なんだと思うのですが、そこで意識しておきたいのが本書のタイトルとなっている「サードドア」という考え方ですね。

これはどういうことかというと、著名人と合うためには「3つのドア」が用意されているということです。

 

僕がインタビューした人たちはみんな、人生にも、ビジネスにも、成功にも、同じやり方で向き合っている。僕から見たら、それはナイトクラブに入るのと同じようなものだ。常に3つの入口があるんだ。

「まずファーストドアがある」と僕はマットに言った。

「正面入口のことさ。長い行列が弧を描いて続き、入れるかどうか気をもみながら99%の人がそこに並ぶんだ」

「次にセカンドドアがある。これはVIP専用入り口で、億万長者、セレブ、名家に生まれた人だけが利用できる」。マットはうなずいた。

「学校とか普通の社会にいると、人生にも、ビジネスにも、成功にも、この2つのドアしかないような気分になる。でも数年前から僕は、常に必ず……サードドアがあることに気づいたんだ。

その入り口は、行列から飛び出し、裏道を駆け抜けて、何百回もノックして窓を乗り越え、キッチンをこっそり通り抜けたその先に、必ずあるんだ。

ビル・ゲイツが初めてソフトウェアを販売できたのも、スティーブン・スピルバーグがハリウッドで史上最年少の監督になれたのも、みんな――」

「サードドアをこじ開けたからだろ」とマットは満面の笑みを浮かべて言った。

「俺もそうやってこれまで生きてきたよ」

 

このサードドアを通る上でキーになるのが「インサイドマン」の存在です。

インサイドマンというのは、著名人のそばにいて、自分をなかに引き込んでくれる協力者のことです。

つまり、ターゲットが信頼をおいている人物からの信頼を勝ち取ろうということですね。

いきなり面識のない著名人に「会ってください」などとアプローチするのは得策ではありません。

それよりも外堀を埋める……つまり、その周囲の人から仲良くなっていって、その人との距離を詰めることが大事なのです。

とはいえ、インサイドマンも忙しいことが多いので、無視されたり断られたりすることが多々あります。

ここで大事なのが粘り強さと、趣向を変えること。

何度断られても諦めない気持ちと、相手の出方に応じて柔軟に態度ややり方を変えていくことが必要になります。

 

あと、これは個人的な経験則からいえることですが、著名人と繋がれるかどうかは「タイミング」も大事だったりします。

たまたまその人がちょっと心理的に余裕のあるとき、大きな仕事が一段落ついているときなどにうまくオファーを出せれば、意外とOKがもらえたりします。

もちろん、面識がない相手の忙しさを把握することは難しいので、これもインサイドマンに頼りながら、タイミングを見計らう、あるいはたまたま相手のタイミングがいいときにマッチするように何度もオファーするなどの戦略が必要になります。

読み様によっては、営業職の人なんかも役に立つ本かもしれませんね。

 

後記

スマホゲームの「A.I.M.$(エイムズ)」をやってみました。

app.nhn-playart.com

渡辺直美さんがCMやってるやつです。

一昨年辺りから流行っている「荒野行動」とか「フォートナイト」とか「エイペックス」みたいなバトルロイヤルFPSゲームなのですが、おもしろいのは、プレイヤーはギャングになって現金輸送車を襲い、5分という制限時間の中でライバルたちとお金を奪い合うという点です。

もちろん、ほかのプレイヤーを倒すことでお金を奪えるのですが、とにかく5分間生き残っていればその時点での所持金を獲得できるので、無理に相手を倒しに行かなくても、コソコソしているだけでも経験値が稼げます。

あと、操作も直感的でやりやすく、キャラクターが個性豊かで、固有スキルでかなり差が出ます。

エイムの補正も強めなので、初心者でも狙いをつけやすいのがありがたいですね。

とはいえ、結局やることは単調なので、すでに飽き始めてはいます。

やっぱりスマホFPSは疲れますね。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。