本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

「明日やろう」が生産性を上げる ~「仕事に追われない仕事術」のレビュー~

f:id:Ada_bana:20180228154009j:plain

山P主演の『プロポーズ大作戦』がもう10年以上前のドラマだということに驚きを隠せない。

 

もくじ

 

あのドラマでちょっと有名になったのが「明日やろうは馬鹿野郎」というセリフで、要するに「先延ばし」を諌める言葉だ。

 

すぐやるブーム

 

これはビジネス書界隈でもよく主張される考えの一派で、たとえば「メールはすぐに返信する」「思いついたアイディアはすぐ実行に移す」「問題が発生したらすぐに解決する」などがある。

 

2年前にも、この本がヒットしたりした。

 

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

 

 

本当に「明日やろうは馬鹿野郎」なのか?

 

この考えは確かに一理あるのだけど、すべてに対応できる万能の思考法ではない。なんでもかんでも「すぐやる」というルールを設定すると、やることが無尽蔵に増え続け、場合によっては残業や徹夜をせざるを得ない状況になってしまうからだ。

また、なんでもかんでもやっているとマルチタスク状態になり、ひとつひとつの仕事のパフォーマンスが落ちる結果にもなりかねない。

 

人はどうしても「これさえやってりゃ大丈夫」という単純・単一な公式を(特にビジネス書では)求めてしまうが、そこまで単純な解決策というのはやっぱりなくて、それがあったらもうビジネス書はいらなくなるだろう。

 

今回紹介するこの本は、「明日やろうは馬鹿野郎」という考えと真っ向から対立する主張を繰り広げている一冊である。

 

 

「明日やろう」が残業を減らす

 

サブタイトルにある「マニャーナ」というのは、スペイン語で「明日」という意味だ。この法則を簡潔に説明すると、「今日発生した新しい仕事は、明日やろう!」というものである。

 

ここで見逃してはいけない重要なポイントは「今日発生した」という部分。つまり、今日発生した仕事を明日に先延ばしするのはOKだが、その仕事をさらにもう一日先延ばしするのはNGなのだ。

 

人間は新しく発生した仕事に対して「衝動的に手をつけてしまう」というクセを持っている(これは脳のメカニズムに原因がある)。とくに、それが「今日中に終わりそうな仕事」だとなおさらだ。

 

衝動働きをやめる

 

しかし、「衝動買い」があまりいい結果を生まないように、そのような「衝動働き」は仕事の効率を非常に下げてしまう。そのような「衝動働き」は、本当はその日にやろうと思っていた仕事がスケジュールから押し出してしまう。

 

だから大事なのは「それは本当に今日やらなきゃいけない仕事なのか?」というのを一度冷静に考えてみる習慣だ。これを考えてみると「絶対に今日中にやらなきゃいけない仕事」というのは驚くほど少ないことに気づく。

 

本書の場合、本文のなかで「エクササイズ」と称し、さまざまなシチュエーション・タスクについて「今日やるべきか」を読者に考えさせる工夫がされている。おもしろかったので、気になった人はぜひ一度、読んでみてほしい。

 

 

今日の一首

f:id:Ada_bana:20180315095030j:plain

32.

山川に 風のかけたる 柵は

流れもあへぬ 紅葉なりけり

春道列樹

 

現代語訳:

山の川に風がかけたしがらみ(水をせき止める柵)は

流れきれずにあつまった紅葉だったんだなぁ

 

解説:

言ってしまえば「川面の途中に紅葉が貯まって川の流れがゆるくなってる」という情景を詠んだだけなのだが、これを「風がしがらみを作った」と、さながら自然に人格があるように歌っているところが風流。

 

後記


最近よく思うのは「なぜ本をつくるのか」ということだ。

小説やエッセーはまた別の理屈があると思うが、ビジネス実用書は「お金を増やす」「出世する」「効率的に働く」など世のビジネスパーソンが求めているだろうテーマと、それを語るに値する著者によってつくられる。が、著者と企画を作っている途中でふと「そもそもこの本をつくる意味ってあるのかな」という考えに襲われることが多々ある(そしてそれを考え出すと私はアンニュイな気持ちになる)

「お金を増やす」「出世する」「効率的に働く」などのテーマは、すでにいろいろな本が出版されていて、書店に行けばいくらでも見つかる。そして、新しく発売されるビジネス実用書の大半が、発売されても重版がかかることなく、出版社の倉庫に山積みにされて、数年後には断裁処分されるのだ。

出版社としては新刊を出さないと売上が立たない業界の悪しき利益構造問題があるのだが、それはあくまで作り手の理屈であって、世の中には明らかに手抜きだったりほかの本のパクリだったり薄っぺらいクソみたいな本が山のようにある。だから、いまさら新しい本なんて出す必要があるのかとか考えてしまう。

しかし、当然ながら、いまのご時勢でも「売れる新刊ビジネス書がある」というのは厳然たる事実であって、結局単純な話、「良質な本は売れる」ということなのだ。だから私も、この業界の隅っこにいる人間として極力クソみたいな本をつくらず、自分が全力でおススメできる本だけをつくりたい。

しかも、これは別に本作りに限った話じゃない。たとえば私のブログもいろいろな本を紹介してきたが、ぶっちゃけ、これまでの記事でも「そんなにすごくおもしろいわけじゃなかったけど、そろそろブログ更新したいし、これでいっか」と思って選んできたものもあるが、結局そういう心持で書いたエントリーはクソなのだ。

そうじゃなくて、「この本は本当にいい」「この本についてはこれを書かねばならんな」という一種の使命感・義務感のようなものを持ってこのブログも続けたほうがいいよなあというのを改めて思ったりした(書きながら)。

そこで大切なのは「自分の気持ちに敏感になる」ということだ。いま、自分がどういう気持ちを持っているのかを理解していないと、そもそも自分が本当にそれをやりたいと思っているのかが確認できないし、クソなものが出来上がる。じゃあどうやったら自分の気持ちに敏感になれるのか、というと、私が考える答えの一つはやっぱり「書くこと」なのだ。


今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。