本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

子どものオシッコが精力になるってマジですか ~『絶倫食』のレビュー

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書店は当然ながら新刊や売れ筋の本を目立つところに押し出す。だからどうしてもどの書店に行っても品揃えが似通ってきてしまうのは仕方ない。

 

もくじ

 

それに比べれば、図書館はフラットだ。

というよりも、むしろ、新刊の本や人気の作品ほど、つねに「誰かが借りている」状態なので、そういう本ほど図書館にはない。

だから、図書館の書架をブラッと眺めていると、なかなか書店では見つかりにくい、ちょっと珍しい本と出会いやすい。

 

今回紹介するこの本も、図書館で偶然邂逅した一冊だ。

絶倫食 (新潮文庫)

絶倫食 (新潮文庫)

 

2010年に出版された単行本の文庫化。

絶倫食

絶倫食

 

 

タイトルについては、もし、もっと最近になって出版されたら、たぶん「絶倫食」ではなく「絶倫飯」になっていたと思う。

このごろのトレンドだ。

モンハン飯レシピブック

モンハン飯レシピブック

 

 

「食」というとちょっと堅苦しくて、アカデミックな印象も受ける。「病院食」「機内食」など、型にはまった感じだ。

それに比べると、「飯」はもっと、大衆食堂的な、ゆるい庶民的な感じがある。

 

小泉武夫は何者か?

さて、内容は『絶倫食』というタイトルの通りで、食べると絶倫……要するに男性の下半身が元気になり、夜に興奮して眠れなくなっちゃうような食べ物を集めたエッセー集だ。

なので、基本的には男性向けの内容となっている。(基本的に「月刊プレイボーイ」「波」での連載をまとめたものだ)

 

私もあまり知らなかったのだが、本書の著者である小泉武夫氏は東京農業大学の名誉教授である農学者であり、同時にメチャクチャ多作なコラムニストでもある。

著作は100冊を超え、独特の言い回しと表現方法には根強いファンも多い。

もちろん発酵食品をアピールした普通の健康本なども出しているのだが、やっぱり人気なのはちょっと「ゲテモノ」集のする食品エッセーだ。

 

不味い! (新潮文庫)

不味い! (新潮文庫)

 
くさいはうまい (文春文庫)

くさいはうまい (文春文庫)

 
奇食珍食 (中公文庫)

奇食珍食 (中公文庫)

 
中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である (知恵の森文庫)

中国怪食紀行―我が輩は「冒険する舌」である (知恵の森文庫)

 

 

本書のもくじ

 

では中身に入っていくが、ざざっともくじを挙げてみよう。

それだけでだいたいわかる。

 

絶倫食を知るための前口上
童の清い強精強壮剤
絶倫確実、ガマ油
まぼろしの虎骨酒
オットセイ、すごさの事実
見た目もすごい中国強精酒
起つ、タツノオトシゴ
皇帝たちが精力絶倫だったワケ
カユはカユでもすごい粥
中国、三大強精強壮剤
江戸の活力の秘密
江戸好事家の飽くなき探求
すばらしき江戸の絶倫食
スタミナ鍋のパワー
歴史の証明、ニンニクのすごさ
ニッポンの強精酒
女人に効く媚薬
沖縄料理で夏バテ知らず
医学も証明、南米マカのすごいパワー
強精強壮の宝庫、ブラジル
中南米、ラテンな強精料理
カブトムシも食べるカンボジアン・パワー
イチジクのこと
性愛の妙技、妙法
黄帝たちと性欲活性素
奇妙な絶倫食
精子をつくる食べもの
動物のペニスは効くか
東医宝鑑』と「参鶏湯」
秋は牡陰の季節
干した海産物に憧れて
東洋の性典『カーマスートラ』に見る強精法
効く効く発酵食品(その一)
効く効く発酵食品(その二)
感覚を刺激する欲情食

 

子どもの小便からつくられる秘薬

 

冒頭から紹介されるのは、なかなか衝撃的な「秋石(しゅうせき)」だ。

これは中国・民時代に李時珍(り・じちん)という学者が編述した『本草網目(ほんぞうこうもく)』という書物に紹介されている薬(?)だ。

 

いわく、秋の月の夜の静寂なときに12歳以下の子どもの小便を壷にたくわえて数ヶ月放置し、壷の底に溜まったしろい沈殿物を集めて石工、鹿茸(ろくじょう)、茯苓(ぶくりょう)などを加え、練って乾燥させたものとのこと。

なかなか強烈だが、小泉センセによれば、尿には性ホルモンとして知られるステロイドホルモンをはじめとする各種ホルモンや、筋肉の収縮運動のエネルギー源として重要な働きをするクレチニンという有機体が非常に多く含まれているとのこと。

 

ちなみに、このホルモンは当然ながら男の子でないと効果がないので、女の子の尿ではダメらしい。

 

スルメも勢力増強食品

 

あと意外なところでは、「スルメ」も精力増強に効果がある。スルメはアルギニンという、人間を含む動物の精子の主要成分を多く含んでいるからだ。

 

なお、本書で紹介されているものは酒が多い。

これにはちゃんと理由があって、そのままでは食べられない食材であっても、酒に漬け込んでエキスを抽出することで人間でも摂取できるようにしているからだ。ハブ酒などが代表的だろう。

あとは臓物系も多い。レバーやハツ、いわゆるホルモンなどはもちろん、直接的に動物のイチモツをそのまま食すことも多い。

酒も飲めないし、臓物系も苦手な私としてはつらいところである。

 

内容にもクセがあるが、文章にもクセがある

こんな感じで、とにかく「精のつく」食品を、小泉センセが地震で経験したエピソードや博識を交えながら紹介してくれるおもしろい本なのだが、ちょっと好みは分かれるかもしれない。

というのも、小泉センセの文体は独特……というか、まんまオヤジっぽい文章なので、あまり好ましく感じない人も少なくないと思われるからだ。

(私はなんとなく、AV監督の村西とおる氏の文章に似ているように感じた)

 

さて、「ムチン」とはどんなものか御存知ですか? 無賃乗車のムチンじゃございませんし、おちんちんが役立たずで、無いに等しいムチンでもありません。「無尽」や「無人」あるいは「無心」が転訛してムチンになったのでもないのです。これはプロテオグリカンと糖タンパク質の混合物なのですが、これが造精(精子をつくる)に大いなる力を発揮してくれるというのであすから、誠にもって有難いものなのであります。

よく昔からヌラヌラしたもの、ヌルヌルしたもの、ピロロンと糸を引くものなどは強精効果があると言われてきました。例えばトロロ芋、生タマゴ、ジュンサイ、ウナギ、ドジョウ、ナメコなどですが、これらのヌラヌラはムチンでできているものが多いので、効くぞ効くぞということになってきたのです。実はその通り、ムチンは男性の精子をつくるのに一役買っていて、精子がいっぱいつくられますと、今度は生きものの本能がむっくりと頭を擡げてまいりまして、子孫繁栄のためにそれを放出したくなり、精力がおのずと出てくるという仕掛けになっているのです。精巣に、はちきれんばかりに精子が詰まったのでは、もう物理的にも、生理的にも放出しなくてはすっきりいたしません。そのためにじっとしていられなくなるという次第なのです。

 

あと、基本的に本書で紹介されている食品を信じて口にするは、基本的には読者の自己責任にゆだねられる。

雑学的な感じで、おおらかな心で読んだほうがいいだろう。

 

絶倫食 (新潮文庫)

絶倫食 (新潮文庫)

 

 

 

後記

私はたまにいびきをかくようなので、最近はこちらのアプリを使っている。

いびきラボ - いびき対策アプリ (SnoreLab)

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  • Reviva Softworks Ltd
  • メディカル
  • 無料

 

寝ている間に起動しておくと、ずっと録音しながら、騒音などをグラフ化してくれるアプリだ。

無料でも使えるが、そのままだと1日おきにしか使えない。1000円支払えば半永久的に完全版が使えるので、私は1000円払ってしまった。

自分が寝ているときのいびきとか、鼻をすする回数とかがわかるのはおもしろい。

あと、たまに寝言も残っていたりする。

 

いびきが気になる方はぜひ。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。