本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

「マンガでわかる系のビジネス書」のシナリオが単調で、絵柄がどれも似通っている理由~『マンガでわかる!マッキンゼー式ロジカルシンキング』のレビュー~

今回紹介する本はこちら。

 

マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング (まんがでわかるシリーズ)

マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング (まんがでわかるシリーズ)

 

 
マッキンゼーで働いていたビジネスコンサルタントの書いたロジカルシンキングの教科書。『ゼロ秒思考』の著者、といったほうがピンと来る人がいるかもしれない。

 

ゼロ秒思考  頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング

 

 

 


先日、友人と話していてびっくりしたことがある。「マンガでわかる系のビジネス書ってたくさん出てるけど、あれって全部同じ出版社が出してるんじゃないの?」と言われたのだ。

 

たしかに、数え切れないほど出ている「マンガでわかる系のビジネス書」は装丁もタイトルも見分けが付かないほど似ているが、もちろん出版社はそれぞれ違う。前々から思ってはいたことだが、「一般の読者はどこの出版社が出しているかなんて気に留めていない」ということを改めて実感した。

 

なぜ宝島社なのか?

 

さて、本書の版元は宝島社である。しかし、著者の赤羽氏は本書を出すまで宝島社で本を出していない。代表作である『ゼロ秒思考』を出版したのはダイヤモンド社だ。もし、ダイヤモンド社が「マンガでわかる」シリーズを手がけていたら、絶対にタイトルは『マンガでわかるゼロ秒思考』だったに違いない。

 

宝島社としても、本当はタイトルにゼロ秒思考を入れた買ったに違いない。しかし、さすがに他社が出したタイトルでマンガ版を出すわけにはいかないので、「マッキンゼー式ロジカルシンキング」と銘打ったのだろう。実際、本書を読むと後半には赤羽氏お得意の「ゼロ秒思考」がしっかり出てくる。

 

どういう経緯で赤羽氏が宝島社から本書を刊行するにいたったのかは想像するしかないが、少なくとも赤羽氏を口説いた編集者は有能だ。宝島社といえば、『まんがでわかる7つの習慣』がメガヒットとなったので、社内でビジネス書をマンガ化するスキームが確立されていたのかもしれない。

 

ビジネス実用書のマンガ化はいろいろな版元が取り組むが、単純にビジネス書の内容をスーリー仕立てのマンガにすれば売れるわけではない。(とはいえ、こういうノウハウはかなり人に依存しているので、ノウハウを持った人間がほかの出版社に転職すると、簡単に技術が移行してしまうのも事実だが)

 

うまいマンガ家さんはNG

 

本書は「マンガでわかる系のビジネス書」としては質が高い。以下、質の高いポイントを羅列する。

 

●マンガの絵柄にクセがない(万人受けしそうな無難さ)
●ストーリーが平凡(込み入ってないので早く読んでも理解できる)
●マンガのほうが割合が多め
●文章ページにもところどころにマンガのコマを再掲している
●文字飾りや図版も多い

 

当たり前だが、この系統のビジネス書では「マンガの質」が命だ。とはいえ、やたら画力の高いマンガ家さんだったり、魅力的なキャラクターを描けるマンガ家さんは必要ない。むしろ、そういうのはかえって邪魔になる可能性がある。なぜなら、こうした本の読者はマンガを楽しみたいわけではなくて、マンガによって気楽にビジネススキルを学びたいと考えているからだ。ここらへんをハズすとコケる原因になる。

 

複雑なストーリーもダメ

 

また、同様の理由から、ストーリーやキャラクター設定にこだわったり、登場人物をやたら多くしたり、状況を複雑にするのはいただけない。「マンガでわかる系のビジネス書」の王道ストーリーは「ダメな主人公が面たーに出会い、教えを受けてどんどん成長していく」というもので、基本的にはこの王道に沿うことが重要だ。水戸黄門は毎回同じストーリーで人気を博したが、同様に、見覚えのあるストーリーのほうがすぐに理解してもらいやすい。

 

また、マンガと文章のバランスは、ちょっとマンガのほうが多いように感じるくらいがちょうどいい。そもそも、こういう本を買う読者はあまり読書習慣がなく、長時間文章を読むことができない人間である可能性が高いのだから、「けっこう文章が多いなあ」と思われたらNGだ。だからこそ、文章ページもマンガ部分の再掲コマを当てはめ、できるだけ「文字文字しない」ような紙面づくりを心がけている。


ここからやっと、本書の内容に入れる。以下、ポイントを一部だけ抜粋してみよう。


「もっと考えろ」の真実

 

上司から「もっと考えてから提案しろ」などといわれることがあるかもしれないが、具体的に何をどう考えればいいのかまでは指示してこない。その理由は単純で、上司も何をどう考えればいいのかわからないからだ。

 

「どう整理するか」
「問題点を正確にとらえるにはどうしたらいいのか」
こういう点をもっと考えて、現場の雰囲気を肌で感じ、情報を集め、当事者の意見を聞いて判断することを繰り返していく。泥臭いですが、こうすると、だんだん切れ味が増し、鋭い見方ができるようになっていきます。そのためにこそ、本書で扱うロジカル・シンキングを利用するのです。

「もっと考えろ」の正体は、こういう指導・アドバイスをしない、あるいは苦手、あるいは普段からそこまで考えていない上司が、ある意味無責任に部下に投げ、「よくわからんが、これでは不十分だから何とかしてよ」という言葉なのです。

 

 

論理的思考は相手に「○○○○!」と言わせればOK

 

ロジカルシンキングという言葉は独り歩きしている体があるが、そもそもどうなれば「論理的に考えられている」といえるのかはあまり定義がはっきりしない。しかし、実は誰でも普段、論理志向をしている。たとえば、これもロジカルシンキングだ。

 

「西の空が暗くなってきた。もうすぐ雨が降りそうだ。だから、傘を持って出かけよう。あ、思った通り降ってきたけど、傘があったから大丈夫だった」

 

ロジカルシンキングというのは、単純に言うと「こうだったら、こうだろう」という(事実をベースにした)推論であり、聞き手に「なるほど!」といわせることができればOKということになる。

 

論理的思考能力を鍛える「A4メモ書き」

 

で、じゃあどうすればロジカルシンキング能力を鍛えられるのか。赤羽氏が広く提唱しているのが「A4メモ書き」というトレーニングである。これは、A4用紙に「疑問や問題の気づき」をとにかくこうスピードで短く箇条書きにしていく方法。ポイントはいくつかあるが

 

・必ずA4用紙を使うこと
・1枚の紙に箇条書きを書く時間は1分だけ
・大量に書く

 

などがある。具体的な書き方は本書を参照して欲しいが、これを繰り返していくと、やがてロジカルシンキングのひとつの到達点「ゼロ秒思考」ができるようになっていく。ゼロ秒思考というのは、問題が起きたり疑問が起きた瞬間、瞬時に問題の核心がわかり、同時に解決策が思いつく状況だ。

 

ちなみに本書、売れたので、本書ではサブキャラクターとして登場している同僚が主人公となったスピンオフ的な続編も発売されている。

 

マンガでわかる! マッキンゼー式 リーダー論

マンガでわかる! マッキンゼー式 リーダー論

 

 

今日の一首

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93.

世の中は 常にもがもな 渚漕ぐ

海人の小舟の 綱手かなしも

鎌倉右大臣

 

現代語訳:

世の中がいつまでも変わらないでいて欲しいものだなぁ。

漁師の小舟が渚のあたりをこいでいる様子はなんとも何とものどかでいとおしいよ。

 

解説:

単純に浜辺の漁師の様子を伝えているだけなのだが、鎌倉右大臣というのは鎌倉幕府の三代将軍・源実朝のことで、兄の頼家が北条市に殺されてしまったために12歳で将軍になった人物。とはいえ、本人は京都の文化にあこがれて、藤原定家に師事したらしい。平和を愛していたようだが、残念ながら28歳のときに自らの甥に暗殺される。 

 

後記

 

いやもうぶっちゃけ、百人一首を箱から取り出した順番でメチャクチャに紹介しているものだから、自分でもどの歌を紹介してどの歌をまだ紹介していないのかよくわからなくなってきている。そのうちエクセル表でちゃんと管理したいが、面倒くさいとも思っている。自分で始めたことながら、なかなか大変だ。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。