書籍編集者の生態について~『重版未定』のレビュー~
最近はすっかり本屋で本を買うことが少なくなった徒花です。
もくじ
本屋でおもしろそうな本を見つける
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スマホのAmazonアプリで「ほしいものリスト」に追加する
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あとで見返して、「やっぱり欲しい」と思うか確認する
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それでもやっぱり欲しい場合、Amazonで注文して会社で受け取る
というのが、最近の私の書籍購入の流れ。
もしくは、ほしいものリストの本が図書館で借りられないかをチェックして、借りられそうなら借りて済ます。
だってどうせなら、Amazonのポイント貯めたいもん。
※ちなみに、サイドバーにて私の「欲しいものリスト」へのリンク先を張ってあります。もし私に本を送りつけたい奇特な人がいたら本をお送りください。送られた本は読んで、クソつまらなかったとしてもレビューを書こうと思います(確約はできない)。現在、ほしい本が300冊くらい貯まってます。ぎょえ
久しぶりに衝動買いした『重版未定』
だがしかし、久しぶりに本屋さんでとある本を見つけて、思わずその場で衝動買いをしてしまった。それがこちら。
マンガである。
編集者の誤ったイメージ
初対面の人などに「本の編集者やってます」と自己紹介すると、たいがい次のように質問される。
「雑誌とか作ってるんですかぁ?」
「マンガとかぁ?」
作ってません。
私は書籍編集者である。しかも、文芸(小説とか)ではなく、ビジネス書とか実用書とかの編集者である。
しかし、そういう編集者はまず日の光が当たらない場所にいる。ドラマとかマンガとかに出てくるのはだいたい「マンガ編集者」とか「雑誌編集者」ばかりなのだ。しかも超大手の!
ああいう人たちは特別なのだ! そしてメチャクチャ恵まれているのだ! 編集者ヒエラルキーでいえば頂点にいる人たちなのだ!
出版不況と言われているのは皆さんもご存じのことだと思うが、そもそも日本には2015年時点でだいたい3500社もある(『旬刊 出版ニュース2015年6月中旬号』)。
どの職種・職業も同じだと思うが、ドラマの中の編集者というのはフィクション上の存在である。
編集者は多岐にわたる
最近は『舟を編む』で辞書の編集者が主役のアニメが放送されたりしているが、「編集者」と言っても、その生態は非常に多岐にわたる。
素人目に見ても、「少年マンガ編集者」「ファッション誌編集者」「辞書の編集者」「学術書の編集者」「ビジネス書の編集者」などの性格が全然違うだろうことは感覚的に理解していただけると思う。
さらに文芸編集者でも、「純文学編集者」「ミステリ編集者」「ライトノベル編集者」など、もっと細かくジャンル分けしていけばとても「編集者」という言葉では語れないくらい性格が異なるわけだ。
実用書の編集者は特に地味!
そもそも全然出版業界に知識がない人だと、編集者と聞いて「カッコいい」「有名人に顔がききそう」「遊んでそう」などと思われることが多いが、そんなことはない。
編集者はすごい地味な仕事である。
とくに、ビジネス・実用書系の出版社の編集者は地味である。社会の片隅で残飯をあさるためにモソモソしているのがビジネス・実用書の編集者だと思っていただければだいたい間違いない(もちろん、そうでない人もいる)。
私は芸能人(これもどう定義するか次第だが)に会うことはまずない。
だいたい、会うのは町ですれ違っても誰一人見向きもしないパッと見普通のおっさんばかりである(←失礼!)。
企画会議ってどうやってるの?
というわけで、普段、いわゆる実用書系の書籍編集者が何をしているのかはあまり知られていないと思う(そして、知りたいと思う人も少ないと思う)。
しかし、このマンガは、そうしたスポットライトに当たらないそうした弱小出版社の書籍編集者の日常をリアリティに描いているのである(ただし、あくまでフィクションではある)。
絵柄はこんな感じで、淡泊だし表情のバリエーションはない。
が、逆にこのあまり変化のない絵の中でつづられる物語が編集者の救われない日常をうまく描いているような気がしていて、なかなか泣ける。
これは企画会議のシーン。
川崎昌平 重版未定 第3話:企画会議 - DOTPLACEより
もちろん会社によって違いはあるだろうが、だいたいこんな感じである。
そもそも出版社は新刊を作って取次(出版社と書店の間に入っている商社みたいなやつ)に仕入れてもらうと、その時点で(厳密には違うけど)取次から入金を受ける。
しかし、本は売れなかったら返品できる商品なので、厳密には取次に入れた時点で売れたわけではない。
とはいえ、とりあえず売れなくても一定のお金は入ってくるので、上記のマンガのように「まず取次に渡せる本(商品)を作る」ことが大事になってくる側面もあるのだ(もちろん、こういう考えは負の側面が大きいが)。
とりあえずこんな感じで、淡々と零細出版社の編集者の日常が送られているのをまとめているのが本書である。
私は編集者なので涙で袖をぬらしながら読んだが、そうでない人が読んで何を感じるかはわからない。
なぜ本を作るのか?
が、この本のテーマの一つになっている。
本なんて、なくてもいいものなのだ。死にはしない。
しかし、それでも作っている人たちがいるのである。
本というのは不思議なもので、文化物であると同時に利益を生み出すことを求められる商品である。
今日も本屋には山のように本が並べられ、どこかで誰かが、誰が読むのかよくわからない本を作っている。
私もその一人として本で飯を食い、そして本で死ぬ。
おわりに
ちなみに、このマンガは以下のサイトで無料ですべて読めるのだが、せっかく河出書房新社さんが書籍にして有料にしてくれたんだから、買って読もう!
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。