本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『ズートピア』ほかのレビュー

f:id:Ada_bana:20160522234938j:plain

ズートピア|映画|ディズニー|Disney.jp |より

『ズートピア』を見てきたのと、ついでにいくつかDVDも見たので、そのレビューをまとめて。

もくじ

『ズートピア』のレビュー

あらすじ

舞台は知能を持った動物たちが暮らす世界。田舎のニンジン農家の娘・ウサギのジュディは、警察官にあこがれて試験をパスし、大都会・ズートピアの新人警官として働きはじめる。とはいえ、小さな体のジュディは歓迎されているとはいえず、不本意ながら交通整理係として働くことになった。

一方、ズートピアでは、肉食動物ばかりがいなくなる連続失踪事件が発生しており、警察は捜査を続けていた。とあることから事件解明のきっかけをつかんだジュディは、詐欺師であるキツネのニックを無理矢理協力させ、独自に捜査を続ける。その結果、失踪した動物たちはなぜか野生の本能が戻り、理性を失っていたことが判明。なぜ、肉食動物の本能ばかりが復活するのか? その背後には、ズートピアに潜む陰謀の影があった。

本作のテーマはずばり「差別」。一見するとさまざまな動物たちが仲良く暮らしているように見えるズートピアだが、そこには「肉食動物」と「草食動物」の間で埋められない壁があり、物語の細かいところで登場キャラクターたちのそうした差別意識が見え隠れする。(個人的には、肉食動物たちが普段、何を食べて生活しているのかが気になるが、そこらへんは作中では説明されなかった)

完璧なエンタメムービー

作品の出来は、とりあえず文句の付けようがない。鑑賞前の私の期待値が高まりすぎていたためか、それを上回ることはなかったが、エンターテイメントムービーとしてはほぼ完ぺきな出来栄えだった。とくに、伏線の回収の仕方が、物語作りのお手本のように自然で無駄がなく、美しさすら感じる。子ども向けの映画なので(お子様が途中で飽きないように)正味1時間40分くらいの作品なのだが、そのなかでしっかり物語を展開させ、起承転結も計算されつくしている。キャラクターも脇役ひとりひとりに至るまで個性豊かだし、ちょっとしたギャグもはずれがない。なによりジュディがかわい過ぎる。私はケモナーではないが、ジュディさんまじ萌える。

本作はピクサーではなく、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズとウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが制作したものだが、2006年にディズニーがピクサーを買収してから、明らかに質が向上したと思う。やっぱり、ジョン・ラセターはすごい(ちなみに、ラセターはバズ・ライトイヤーの顔面モデル)

『南部の唄』も見てみて

なお、本作を気に入った人はぜひ『南部の唄』を鑑賞していただきたい。というのも、おそらく『ズートピア』は『南部の唄』をインスパイアして作られたものだからだ。『南部の唄』と聞いてもわからない人でも、TDLの「スプラッシュマウンテン」の元ネタとなった作品といえばわかるかもしれない。「ウサギはキツネに騙される」というステレオタイプは、おそらく本作がベースになっている。また、この作品も南部の黒人差別が関連しているのだ。

ただし、作中に差別表現があるためか、現在に至ってもこの作品はDVD化されていない。ニコニコ動画には全編がアップされているので、見てみてもいいかも。(ただし7割くらい実写)

『インサイド・ヘッド』のレビュー

あらすじ

舞台は12歳の女の子、ライリーの頭の中。そこには「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」という5人の感情たちがいて、彼らがライリーの行動を決定していた。ある日、ライリー一家の引っ越しと彼女の転校を契機に、頭の中の司令塔からヨロコビとカナシミが消えてしまい、それによりライリーからも2つの感情が失われてしまった。ヨロコビとカナシミは司令部に戻るため、頭のなかのいろいろな場所を巡りながら、司令塔を目指す。

テーマは「人間にはなぜ、カナシミが必要なのか?」ということ。主人公はうれしい感情をつかさどるヨロコビだが、本作でもっとも重要なキーパーソンは青くていつもネガティブな言動ばかりを繰り返すカナシミである。ライリーの頭のなかは事件が起きるまでヨロコビが主導権を握っていて、カナシミは厄介者扱いされていたが、じつはカナシミの存在こそが、ライリーが成長するために必要不可欠な存在だった……ということを伝えている。

かなりおもしろいし、泣ける

かなりおもしろかった。本作を見ていなかったのはどうもキャラクターデザインがあまり好みではなかったからだが、大人でもかなり泣ける。こちらはピクサーが手掛けた作品なのだが、ピクサーはどの作品を作るときにも念入りな調査を行っているため、本作の制作に際しても「感情」についてかなりリサーチを行っている。人間の感情がどのように分類できるかについては諸説あるが、さまざまな説のなかでも共通する5つの感情を設定したということだ。

なお、原題は『Insade Out』(裏返し)となっていて、これはテーマの真相を非常に端的に表すものになっている。

大人の感情はフクザツなのです

おもしろいのは、ライリーだけではなく、ときどきライリーのパパやママの頭のなかの感情たちも登場している点。最大の違いは、コントロール・パネルの大きさだろう。子どもであるライリーの頭の中にあるコンパネは小さく、ひとりの感情がそうさするとほかの感情は制御できなくなってしまうが、大人の脳内にあるコンパネは大きいため、それぞれの感情が相談しながら複雑な行動を決定できるのだ。

また、抽象的な思考を処理する場所や、潜在意識の世界、夢工場など、思考や感情に関連する様々な場所を視覚的にうまく表現できていて、そこらへんもおもしろい。

『ピクセル』のレビュー

ピクセル (字幕版)

ピクセル (字幕版)

 

あらすじ

1982年、NASAは地球外生命体に向けて当時流行していたゲームを収録した映像などを友好目的として送った。だが、それを見たある宇宙の知的生命体がメッセージを「果たし状」と誤解。2015年に彼らは送られてきたゲームを光学エネルギーで再現した物体で攻撃を仕掛けてきた。

かつて凄腕ゲーマーとしてならしたサムは、アメリカ大統領になっていた同じくゲーマー仲間の友人・ウィルの要請を受けて宇宙人と闘う。

なんというか、お粗末な映画だった。初めから終わりまで、シナリオが全部「ご都合主義」によって進行する。これらのアーケードゲームで遊んだ記憶を持つ人々の歓心を買うことと、CGの美しさくらいだろうか、見どころは。あとまあ、レトロゲームが人々を襲う、という発想はおもしろい。

つまらない要因は変にギャグ要素を入れてしまった点。というか、基本的にギャグがベースとなって物語が進行していくのだが、困ったことにギャグがことごとく滑る。だからおもしろくない。レンタルするにしても旧作になって100円で借りられるようになってから見るので十分な作品だ。

なお、やたら背の小っちゃいエディ・プラント役の俳優さんであるピーター・ディンクレイジ氏はもともと小人症で、これはCGでちっちゃくしているわけではない。外見のデザインは実際にゲームドンキーコングなどで世界一の記録をたたき出したビリー・ミッチェルという人物がモデルとなっているが、ミッチェル氏は小人症ではない。

『ジュラシック・ワールド』のレビュー

あらすじ

ジュラシック・パーク』の惨劇から22年後、かつてパークを作ったインジェン社はインド系の企業・マスラニ社に買収され、同社は新たな観光施設、ジュラシック・ワールドを開園させていた。そこでは飽きっぽい観客の期待に応えるため、遺伝子操作によってより凶暴で迫力のある恐竜の開発に注力しており、ちょうど、T-レックスを上回る巨体と獰猛さを併せ持ったオリジナルの恐竜、インドミナス・レックスがお披露目間近となっていた。だが、インドミナス・レックスはその高い知能で飼育員を殺して隔離施設から逃走。殺戮目的でさまざまな恐竜を殺して回り、ワールドは瞬く間にパニックに陥るのだった。

シリーズ4作目で、スティーヴン・スピルバーグ氏は製作総指揮、監督はコリン・トレボロウ氏になっている。まぁ、パニックムービーとしては可も不可もない安定したおもしろさ。ただ、恐竜同士のバトルシーンもけっこう多いので、小さい男の子とかはかなり興奮して見れそう。また、従来のシリーズで一貫して一番厄介な敵役だったヴェロキラプトルが今回は人間との絆を見せるなど、過去作品と比べてみるとおもしろい。

シリーズを通してみたほうが楽しめる、かも

なお、作中では詳しく説明されないが、終盤で大活躍するT-レックスは第1作目にでてきたのと同じ個体で、20差異を超える高齢レックスである。そう知ると、最後はだいぶがんばってくれたなぁと感心する。また、舞台となる島も第1作目と同じ。さらに、シリーズを通じて事件の原因を作った主要人物であるヘンリー・ウー博士も同じ俳優さんで登場している(しかも、本作でも殺されずに逃げおおせたため、おそらく次の作品にも登場するんじゃないだろうか)。本作だけでも独立して楽しめるが、シリーズを通してみるのもいい。

まぁ、とりあえずあんまり物事を考えずに見ることができる。

ミニオンズ』のレビュー

ミニオンズ [DVD]

ミニオンズ [DVD]

 

あらすじ

人類誕生以前から存在するミニオンたちは、最強最悪の主に仕えることを生きがいとし、ティラノサウルス、原始人、エジプトのファラオ、吸血鬼、ナポレオンといった様々な悪党に仕えてきた。だが、主たちはことごとく死んでしまう。主を失った彼らは氷の洞窟内に移り、主のいないやる気のない生活を送っていた。

1968年、こうした状況を打破すべく立ち上がったケビンは、仲間のスチュアート、ボブとともに旅立ち、アメリカ大陸に渡って大悪党「スカーレット・オーバーキル」と出会う。彼女の手下となった3人はイギリス女王の冠を盗もうと画策するが、なぜかその際、ボブが偶然伝説の剣エクスカリバーを引き抜いてしまい、新しいイギリスの君主に即位。スカーレットはケビンたちが裏切ったと思い込み、イギリス君主の座をめぐって戦いを繰り広げることになるのだった。

『怪盗グルーの月泥棒』で人気を博したサブキャラクター、ミニオンズを主役にしたスピンオフ作品。時系列的には、グルーと出会う前のミニオンズの物語となっている。ギャグはまあまあで、ミニオンズはかわいいが、メインストーリーはちょっと粗が目立つのが難。ミニオンズの場合、「大勢いる」というのがかわいさの大きな要素のひとつだと思うので、個々のミニオンズのキャラクターを強く立たせると魅力が減ってしまうような気がする。

『龍三と七人の子分たち』のレビュー

あらすじ

「金無し、先無し、怖いもの無し! ジジイが最高!!」

若いころ、ヤクザの兄貴だった龍三は息子・龍平のもとで隠居生活を過ごしていたが、一般企業に勤める息子らからは煙たがられ、窮屈な生活を送っていた。

ある日、連休に龍平が妻の実家へ帰省している最中、留守を預かる最中に、暴走族上がりの男がリーダーを務める半グレ集団・京浜連合からオレオレ詐欺の電話がかかる。オヤジ狩りや浄水器詐欺などけち臭い手段で金を稼ぐ京浜連合のやり方に怒った龍三は、かつての仲間たちを集めて再び暴力団『一龍会』を結成し、京浜連合のシマを荒らして抗争を吹っかけることを決めるのだった。

監督は北野武氏で、作中でも刑事役として出演している。藤竜也をはじめとする元やくざの爺さんたちはカッコよさとユーモラスがなかなかいい塩梅で、けっこう笑える。それぞれのジジイたちもキャラクターが際立っていて、飽きない。とくに、京浜連合の事務所にカチコミをかけに行く場面はなかなかの爆笑モノ。いかにも、現代の日本が舞台でなければ作り出せないような笑いだった。そして、唐突な終わり方はなんとも日本映画っぽい。

傍から見ている分には楽しいのだが、もし周囲にこんな老人がいたら迷惑千万だろうなぁなどと。だが、北野監督作品の中では比較的、万人が楽しめる作品だと思う。ちなみに、映画の中のこまごまとしたエピソードは北野監督の周囲で起きた出来事がベースにされているようだ。

おわりに

ひっそりnoteも始めました。もう少し記事がたまったら、ブログのサイドバーにリンクを貼っておきます。このブログは今後、レビューを中心にして、それ以外の話はnoteのほうに書いていこうかなぁと思っちょります。こちらはブログよりもさらにテキトーに書いていて、更新頻度も不定期。

 

それでは、お粗末さまでした。