本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『「レジリエンス」の鍛え方』のレビュー~自分の強みの見つけ方~

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正月で約1年ぶりの帰省を果たし、母親といろいろ話をしたのだが、「ビジネスや人生で大切なことがそんなにころころ変わるはずがないと思うのだが、なぜあんなにたくさんの新刊が出るのか」と問われ、ぐうの音も出なかった徒花である。

もくじ

新しい言葉は救いの神か

母親のいうことはもっともで、端的に言えば、ビジネス書や自己啓発書に書かれていることは、基本的には大して違いがない。ただ、著者が著名か否か、切り口が斬新か、中身が分かりやすいかどうか、くらいの差だろう。

あともうひとつのポイントは、新しい言葉である。人というものは往々にして「地道な努力」とか「我慢すること」を忌避し、「自分に足りないものを一瞬にして解決する何かがあるはずだ」と考え、それを求め続けている。そして、今まで自分が聞きなれない言葉が出てくると、それこそが自分を高めるために生み出された、これまでにないツールなのかもしれないという希望を抱き、金を払うわけだ。というわけで、今回紹介するのはこちら。

世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!  「レジリエンス」の鍛え方

世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方

 

もはや一昨年……という呼び方になってしまった年に出版された本なので、いささか古いが、こちらもそれなりに売れた本である。「レジリエンス」という言葉がいつごろ生まれたのかは定かではないが、そもそもはラテン語の「跳ねる(salire)」と「跳ね返す(resilire)」が組み合わさってできた物理学の用語らしい。これが心理学の分野で「弾力性、回復力」という意味でつかわれるようになり、ビジネスシーンに登場したというわけだ。要は、心の打たれ強さ、と考えればおおむね間違いではない。

んで、本書は「ポジティブサイコロジースクール」という、名前だけ聞くとどこかスピリチュアルっぽい印象も受けるちょっといかがわしげな組織の代表を務めている久世浩司氏の著書だ。

www.positivepsych.jp

一言で言えば「心を強くするにはどうすればいいか」ということが書かれていて、そのための方法として「程度な運動」「散歩」「瞑想」「自分の強みを見つける」「家族と仲良くする」「感謝する」などが紹介されている。まぁ、読んで損はないと思うが、別に新刊税抜1,300円の価値はないと思うので中古で十分だろう。ただ、徒花が本書の中でちょっとおもしろいと思ったのは、「フロー」というものである。

ハンガリーの人名ってちょっとおもしろい

フローというのはポジティブ心理学を生み出したミハイ・チクセントミハイ博士が生み出した用語で、「意識のよどみのない流れの体験」らしい。全然関係ないが、変わった名前の人だなぁと思って調べてみると、どうもハンガリーの人らしい。ということで、ハンガリー人の著名人をWiki先生で調べてみると、あまり聞きなじみのない名前がずらずら出てくる。ちょっと挙げてみよう。

  • コチシュ・シャーンドル(サッカー選手)
  • タルマクシ・ガボールロードレーサー
  • ディンニェーシュ・ラヨシュ(政治家)
  • ドホナーニ・エルネー(作曲家)
  • レーヴェース・ゲーザ(作曲家)

こういうのはおもしろい。ちなみに、ハンガリーは日本同様、国内においては姓→名の順番で表記するようだ。

転職についてる人とついてない人

閑話休題

さて、「意識のよどみのない流れの体験」といわれても意味がわからないと思うので、もう少し具体的に説明しよう。

世の社会人(この場合は仕事についている人の意味)は2種類に分けられる。「自分がしたい仕事をしている人」と「金を稼ぐために本当はしたくない仕事をしている人」だ。自分がどちらかを知るのは簡単、「もし宝くじで1000億円当選して、一生遊んで暮らせるとしたら、いまの仕事を続けるか否か」を考えればいい。ちなみに私は即座に「働く」と答えるだろう。

もちろん、どちらが幸福な人生を歩めるかは一概には言えないし、当初は後者だったものが、長年仕事を続けているうちに意識が前者に代わるということもあるので、この区分けそのものには大した意味がない。とはいえ、どうせ働くのならば楽しいほうがいい。

というわけで、チクセントミハイ博士はいわゆる天職についていそうな人にいろいろインタビューを行い、かれらの共通点のひとつを発見した。彼らは仕事をしているとき、我を忘れるような瞬間を体験しているのだ。時間の流れすらも忘れ、「まるで自然に生まれた流れに運ばれるようだった」と語ったという。

残念ながら私は仕事をしながらそんなにドンブラコした経験はないが、仕事が佳境に入ると本当に「あ」っという間に時間が流れていく。ついさっきまで朝の9時だったのが、いつのまにか13時くらいになっているのだ。不思議! それからまたしばらくすると、いつのまにか夜の8時くらいになっていたりする。とくに、原稿を読みながら赤字を入れる校正作業をしていると、恐ろしく時間の流れが速い。おそらくこれは私も「フロー」状態に入っているのだろう。

自分の強みの見つけ方

本書では「自分の強みの見つけ方」も紹介している。強みといえば、有名なのはこれだろう。

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす

 

一つ注意しておきたいのは、この本、中古で買ってはいけない、ということだ。なぜなら、本書はむしろ、本書に付属しているコードこそが大切だからである。ちなみに、本屋で買うのはおススメしない。なぜなら、悪い人が立ち読みでコードをメモし、それを使ってしまっている場合もあるらしいからだ。ネットで新品を買えばそういう心配はない……はず。

さて、久世氏はむしろ、via-is診断というものをおススメしている。こちらは無料で、誰でも気軽に受けることができるものだ。やり方は簡単。まずは下のサイトにアクセスする。

そこに書かれている通り、「名前」「Eメールアドレス」「パスワード設定」「性別」「生年月日」を打ち込み、登録する。すると、次の画面で「Take Survey」というボタンがあるので、それをクリックすると診断スタートだ。合計120の質問に答えていき、最後の画面で郵便番号と国を登録して「Complete Survey」を押せば終了。なんか英語でゴチャゴチャと書かれているが、無視して構わない。

そうすると、結果が出る。全部で24個の強みがあり、それが強い順から並べて表示されるのだ。一番下にあるのは、一番持っていない強み(つまり弱み)である。最終的に「強み」と判断できるのは、上位5つの項目だという。というわけで、徒花の強みトップ5を勝手にご紹介しよう。

1.寛容さ/慈悲心
寛容さ、慈悲心を強みとするあなたは、自分に対して過ちを犯した人をゆるします。あなたはいつも人にやり直すチャンスを与える人です。あなたという人間を導く信条は慈愛であり、復讐心ではありません。

2.公平さ
公平さを強みとするあなたにとって、あらゆる人々を公平に扱うことは揺るぎない信念の一つです。あなたは自分の個人的な感情が他者への評価をゆがめることを許しません。あなたは誰にでも公平にチャンスを与えます。

3.向学心
向学心を強みとするあなたは、授業でも、あるいは独学でも、新しいことを学ぶのが大好きです。あなたは学校や博物館あるいは読書など、いつでもどこでも学ぶ機会を得るのが大好きな人です。

4.知的柔軟性 [総合判断力、批判的思考力]
あらゆる角度から物事を考え抜いて検討することは、知的柔軟性を強みとするあなたを表す重要な要素の1つとなっています。あなたは決して安易に結論に飛びつくことなく、決断する際にはきちんとした証拠にのみ基づいて判断します。あなたは自分の考えを柔軟に変えることができる人です。

5.好奇心 [興味関心、新奇探索傾向、経験への積極性]
好奇心を強みとするあなたは、何事にも好奇心を抱きます。常に問いを持ち、あらゆる主題やテーマについて興味深く感じます。あなたは探求と発見を好む人です。

逆に私の弱みワースト5は以下。

20.ユーモア [遊戯心]
笑いやいたずらを好む。人に笑いをもたらす。明るい面を見る。ジョークを考える(必ずしも口にしなくてよい)。

21.感謝  
自分や周りに起こった良い出来事に目を向け、それに感謝する心を持つ。そして、感謝の気持ちを表す時間を持つ。

22.親切心 [寛大さ、心遣い、配慮、慈悲心、利他愛、「いい人」]
人に親切し、人のために良いことをする。他人を助け、面倒を見てあげる。

23.自律心[自制心]
自分の気持ちや振る舞いをコントロールする。規律正しい。自分の食欲や感情をコントロールする。

24.忍耐力 [我慢強さ、勤勉さ、完遂力]
始めたことを最後までやり遂げる。困難にあっても粘り強く前進し続ける。必ず課題を終わらせる。課題をやり遂げることに喜びを見出す。

「寛容だけど親切ではない」というのはなかなかおもしろい。興味がある人はぜひ一度お試しあれ。

おわりに

さて、去年から読書リーダーを使い始めて、記録をつけ始めたところ、2015年で読んだ本は合計151冊だった。ただし、カウントが始まっているのは4月からなので、だいたい200冊弱くらいだろうか。ブログで紹介している本は、読んだ本の中でごく一部である。

今年はいろいろ、個人的に大変なことが起こりそうな気がする。最近は「人間は何のために生きるのか?」「幸福とは何か?」ということを考えている。私もオッサンになってしまった……。

 

それでは、お粗末さまでした。