現代人なら覚えておきたい死後のライフハック ~『ゾンビの作法』のレビュー~
「教養」という言葉は人によって定義が異なるが、教養を備える目的のひとつに「将来に備える」というものがある。
もくじ
これまでの教養に欠けていたもの
たとえば歴史を学ぶことは目の前のビジネスの効率化にはつながらないかもしれないが、大きな社会変動とそれに伴うニーズの変容を人よりも早くつかむヒントになる(かもしれない)。もちろん、それ以外にもリスクを的確に把握し、世界がどのように変わっても生き抜いていく力も、教養であるといえるだろう。
その意味で、私たちが考えておくべきことは、もちろん自然災害や核戦争、原子力事故などがあるが、忘れてはならないのは生物学的危害(バイオハザード)である。すなわち、いつ何時、死者がゾンビとしてよみがえり、私たちに襲いくるとも限らないのだから、そのような状況を想定し、対策を知っておくことが不可欠なのである。
これまでの教養に欠けていたもの!
……以上が、従来の教養およびバイオハザードにおける訓戒であったが、じつは、これでは不完全であった。危機管理とはつねに「最悪」をシミュレートしなければならないのだが、「ゾンビに襲われる」というのはシミュレートとしてはまだまだ思慮に欠けていた。
どいういうことかというと、私たちはゾンビに襲われる可能性と同時に、自らがゾンビとなる可能性を考慮しなければならないのである。
もし自分がゾンビになってしまった場合に、どのように生き延びるべきかをしっかり考え抜いておかなければならない。とくに、ここが大事な部分なのだが、ゾンビになると思考能力が著しく欠如するらしいので、頭がハッキリした状態でこれらの知識を仕入れておくのが望ましい
『ゾンビの作法』
そのための非常に参考になる本が、これだ。
本書は既存のゾンビに向けて書かれたもので、冒頭において酸素消費者(つまり生きている人間)がこの本を読むことを堅く禁じている。しかし、これは既存のゾンビたちが、真実が書かれたこの本を人間が読むことで自分たちの対策をされてしまうことを恐れているが故の注意喚起であるので、無視してかまわない。
逆に考えれば、本書は「ゾンビになってしまったときのマニュアル」であると同時に、「ゾンビと戦うときのマニュアル」でもあるわけだ。
脳みその確保が重要事項
さてゾンビになったらまずなにをするべきか。答えは簡単で、新鮮な脳みそを食べる……ということに尽きる。ここで重要なのは「新鮮な」という部分だ。死後24時間以上を経過した肉を摂取してもゾンビ(ウィルス)の栄養になることはなく、むしろ悪影響を及ぼす。
そのため、新鮮な脳みそを手に入れるためにもっとも確実なのは、生きている人間の脳みそにかじりつくことなのである。
新鮮な脳みそを体内に取り込むと、そのゾンビは一定時間、飛んだり跳ねたり走ったりできる。この状態ならさらに人間が襲いやすくなるため、そのままブレイン・ハイ(脳みそ狂乱)状態を維持する脳みそコンボを決めるのが望ましいだろう。
人間を襲うときのコツ
しかし、ブレイン・ハイ状態になっていない場合、人間を襲うのはなかなか難しい。パニックになっている気弱な人間や、ゾンビから逃げられないほどのデブを見つけられれば幸運だが、多くの人はすばやく逃げたり隠れたり、場合によってはバールのようなものや鉄パイプ(場合によってはナイフや拳銃、ショットガン、ライフル)などで応戦してくるだろう。
ゾンビは痛覚がなく、血液も凝固しているのでそうした攻撃のほとんどは意味がないが、自分の脳みそを破壊されると「第二の死」を迎えてしまうため、気をつけなければならない。幸い、日本にチャック・ノリスはいないが、その代わりに吉田沙保里がいることを忘れてはならない。
では、ノロノロと歩きながらウーウーうめくしかできない状況で、脳みそにありつくにはどうすればいいのか。そのヒントは「人海戦術」である。
まずは仲間を増やせ
幸いなことに、ゾンビウィルスは体液や飛沫から簡単に感染させられるので、たとえ相手を仕留め損なっても、傷を負わせることができれば高確率で仲間を増やせる。
最初から脳みそを食べようとすると人間の袋叩きに合う可能性があるので、まずは適当に人間を襲撃して仲間を増やすのを先決にしたほうが得策だろう。
仲間を捨て駒にしろ
ゾンビ仲間が増えたら、ここでチームプレイの開始である。とはいえ、ほとんどの人間は本書を読んでいないため、ゾンビとしてどのように行動すればいいのかを理解しないままゾンビになってしまっている。これが、持つものと持たざるものを隔てるターニングポイントとなる。
ここで我々としては、チームメンバーであっても彼らを「捨て駒」として利用するのが賢いやり方だ。獲物を追い立てる囮役をやらせたり、ダイヤモンド陣形の先頭に配置させたりする。あくまで自分は後方などからじっくり迫ろう。
ダイヤモンド陣形の図。本書はイラストや図解も豊富なので、すでにゾンビになっている人にも理解しやすいところがGood。
このような教養を知っているか否かは、ときとして生死を分ける境界線になる。ゾンビになってしまうようなときは尚更だ。この本にはそれ以外にも、移動手段や強襲方法、ゾンビの栄養学などが網羅されている。
この本は第二の人生を成功に導く強力な武器になるし、おそらくこの本を読んだ人にとって、そのリスタートは、そう遠い未来の出来事ではないと確信している。
今日の一首
42.
契りきな かたみに袖を しぼりつつ
すゑの松山 波こさじとは
現代語訳:
約束しましたよね。たがいに涙で濡れた袖を絞りながら。
松山を波がこすことがないように、二人の心も決して変わらないと。
解説:
約束したのに心変わりした女性を非難する歌……なんだけど、じつはこれは代筆で、詠み手の清原元輔は「こういう歌を詠んでくれ」と頼まれたので、想像で作っている。「松山」は宮城県にある松の名所で、海岸から離れているために波が届くことがめったになく、「決して変わらないもの」「ありえないこと」の歌まくらとして使われる。しょっぱなで倒置法を用い、「契りきな」を強調することで恨めしさを強調している。
後記
最近は「South Park: Phone Destroyer™」をやっている。
簡単に説明すると、サウスパークのキャラクターを使った「にゃんこ大戦争」である。
もともとサウスパークが好きだったので軽い気持ちでやってみたのだが、びっくりしたのが、提供元がUbisoftだった点。私はそんなにUbisoftのゲームはやってないのだけど、奥さんがPS4でレインボーシックスシージにはまっている。そのせいか、たしかにいろいろ仕様が洋ゲーっぽい。それだけ。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。