Audibleのメリット、デメリットと所感
オーディオブックというものがあってだな。
もくじ
「聞く本」とも呼ばれるこれは、まだ日本ではメジャーにはなっていない。
ただ、いつごろから始めたのかはわからないが、じつは現在、Amazonのオーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」が1ヶ月無料サービスを展開している。(いつから始まっていたのかは知らない)
システムは単純だ。月額1500円で、ラインナップされているすべてのオーディオブックが聴き放題。Febe!など、ほかのサイトでは作品ごとのダウンロード販売がメインで、しかも価格は紙の本と変わらない(1つ1500円くらい)なので、単純に比較すればAudibleのほうがお得といえる。
ただし、Audibleはまだ肝心のラインナップが貧弱だ。はっきりいって、現在の品揃えなら、1ヶ月の無料体験期間中に聴きたい本は全部聴けてしまうのではないかと思う。というわけで、この1ヶ月無料体験を私もやってみたので、その感想と、オーディオブックのメリット・デメリットをまとめておきたい。
また、小説からビジネス書、さらにはエロ本まで、とりあえず目についたオーディオブックをざっと聴いてみたので、ついでにそれらのコンテンツのレビューも併せて載せておく。
メリット
●読むのがラク
読書というのは、冷静に考えればけっこう面倒な行為だ。本を手に持ち、字面を目で追って、ときどきページをめくらなければならない。ハードカバーなどの大きな本だと、寝っころがりながら読むのも一苦労。数冊かばんに入れれば、それなりの重さにもなる。
それに比べて、オーディオブックは音声データをダウンロードしてしまえばいつでも、どこでも読める。身動きの取れない満員電車だろうと、スマホをポケットに入れたまま読書ができるわけだ。また、寝る前にベッドに入り、照明を消して、目をつむったまま楽しめるのもいい。
デメリット
●読む速度が遅い
本によるが、私はけっこう飛ばし読みしているので、簡単なものなら1時間くらいで読了してしまう。しかし、オーディオブックだとそれができない。ナレーションの人が丁寧に全部読んでくれるので、通常速度で聴くと、だいたい1冊につき5~6時間かかる。長い……。
とくにAudibleの場合は倍速~8倍速まで設定できるが、実際に聞いてみると早口になるわけではなく、単に朗読音声が途切れ途切れになるだけなので、ぜんぜんなにをいっているのか分からなくなり、使えない。じつは、倍速などに対応させる場合、単純に早送りするだけでは聞き取れないのだ(ちょっと音源に加工をしなければならないので、手間がかかる)。
●ダウンロードにけっこう通信量を使う
いったんDLしてしまえばラクだが、それなりのデータ量をダウンロードする必要があるので、ネット環境によってはこれが結構な負担になるかもしれない。
●調べられない・マーカーがひけない
kindleなどだとマーカー機能があって、気になった一文などにマーカーを引くことができるし、分からない言葉はそのまま検索することも可能だ。
しかし、オーディオブックの場合はそれができない。特に私の場合、ブログを書くときにはけっこう読み終えた本を読み直しつつレビューを書いたりするので、これができないのはけっこうつらい。
●ときどき、だれのセリフかわからない
これは小説の場合だが、作品によってひとりのナレーターがすべてを担当しているものがある。もちろん、ナレーターさんは声色を変えるなど工夫してくれているのだが、いかんせん、会話文が続くと、「どこまでが誰のセリフなのか」「誰の発言なのか」がよくわからなくなるときがある。筋書きが分からなくなるほど深刻な事態にはならないが、ちょっとモヤっとする。
結論:デメリットが目立つが、局所的には便利
結果として、デメリットばかりが目立つ結果になってしまった。しかし、次のような立場の人が本を読むのには便利かもしれない。
●仕事がめちゃくちゃ忙しい、勉強家のビジネスパーソン
●小さい子どもを育てている最中のお母さん
●老眼で小さい文字が見づらくなっている高齢者
●声優ファン
私は最近長距離バスを使ったのだが、そういうときにも便利だ。さすがにバスの中で本は読めないが、オーディオブックなら乗車中も楽しめる。
あと、上記に当てはまらない読書家でも、読むのが億劫な翻訳本とか、専門書とか、とにかく長い小説などは、文章で読むよりも労力が減り、内容も理解しやすくなるかもしれない。個人的には、せめて倍速でもうすこし聞き取れるようになれば使いやすいのになぁと思う。
ただ、これで月額1500円を支払うのはいかがなものか……。あと、ちなみにPCでは視聴できず、聞くためにはスマホかkindleが必要だが、これは別に大した問題にはならないだろう。
聴いてみた所感
ともあれ、Audibleでいくつかの作品を聴いてみたので、続いてそのレビューをば。
『タルト・タタンの夢』
街中にあるフレンチ料理やを舞台にした日常ミステリー。殺人事件はおろか、法律を犯すような犯罪すら起こらない。ただ、短編集なので気楽に聞けるほか、ナレーションの人の抑揚もいい感じに抑えられているので、そこそこ心地よく聴ける。
『君はどこにでも行ける』
ホリエモンが若い人に向けて書いた自己啓発書だが、びっくりしたのは堀江さん自身が「はじめに」部分を読み上げている点。しかし、かなり棒読みで、声の抑揚は皆無、さらに声が暗いので、「まさかこれでずっと続くんじゃないよな……」と、聞き始めた瞬間はすごく心配になった。もちろん、本編に入るとプロのナレーションが入るのでご安心。
『黒猫』
Audible初心者におすすめ。まず、話が短いのでわずか40分で聞き終えられる手軽さがあるのと、登場人物およびセリフが少ないので、わざとらしさがない。落ち着いた声だけで聴いていると、物語の不気味さが引き立つような感じだ。
『名探偵ポワロシリーズ 「マースドン館の悲劇」』
かなり良かった!最高だった!
なぜならこれ、ドラマ『名探偵ポアロ』と同じ声優さんをしっかり使っているのだ! だから、声を聴いているだけであのデビット・スーシェが頭に思い浮かんでいて、すごく楽しい。もちろん、脇役の人々の声もそれぞれ違う人が担当しているので、臨場感もある。おもしろい。ドラマがまた見たくなりましたわ。
『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』
小説仕立てのビジネス書。けっこうおもしろかったが、ナレーションの男性ひとりですべてのキャラクターを担当しているのが残念。とくに、主人公の女の子は「げげげ!」と90°直角お辞儀が得意技なかなりキャラの立ったいい役回りなのだが、それも男性が演じているのはちと萎える。
『世界一ふざけた夢の叶え方』
3人の男性が「自分が夢をかなえるまでの軌跡」をつづった自己啓発書。いちおう、男性3人のナレーションがそれぞれのパートを担当しているのだが、逆にこれは別にひとりが全部を担当してもいいんじゃないかと……。
それより気になるのは「(笑)」が多用されている点。徒花はこれが嫌いなので、文章に書かれているだけでも気になってしまうのだが、それがAudible版になると、この部分もしっかりと「かっこわらい」と音読してくれちゃうのだ。これはいただけない。完全にしらける。
『時をかける少女』
さまざまなメディアに展開されている原作。これも小説ながら、女性のナレーターがひとりで全部を担当している。それは別にいいのだが、いかんせん、主人公の和子がかなり感情表現が豊かで、しかもぶりっ子のようにも聞こえるので、そこらへんがイラッ☆としてしまう。まぁこれは、単に好みの問題だろう。
『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』
まぁ、ふつー。
『艶妻映子・痴情記』
なぜか官能小説のジャンルだと人妻ものばかりなのは、何か理由があるのだろうか? とりあえず聞いてみたが、もちろん、朗読は女性である。ただ、これを聞くくらいだったらネットでエロ動画でも探したほうが効率的ではなかろうか。もちろん、個人の趣味の問題だが。
おわりに
いろいろブーブーいってきたが、せっかくAudibleが無料で体験できるのだから、興味がある人はやってみていいだろう。ただ、そこでの注意すべき点は「ナレーターの人数と性別」である。幸い、サイトでは「試し聞き」ができるようになっているので、まずはそれを聞いてからダウンロードするか判断したほうがいいだろう。
ちなみに私は、Audibleに申し込むつもりはない。これであれば、やっぱり本を自分で読んだ方が早いし理解しやすいからだ。
まぁとりあえず、今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。