本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『外資系エグゼクティブの逆転思考マネジメント』のレビューほか~ビジネス書を買うときにチェックすべきこと~

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最近、若干、下ネタ気味なエントリーが続いていたので、ここらでみんな大好きなBusinessの話をしようじゃないか。

もくじ

櫻田毅について

というわけで、今回はプロローグもなく本題に入る。こちら。

外資系エグゼクティブの逆転思考マネジメント

外資系エグゼクティブの逆転思考マネジメント

 

まずは著者の櫻田毅氏を紹介していこう。

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櫻田 毅のすべて | 櫻田 毅オフィシャルサイト – こんにちは!櫻田 毅(さくらだ たけし)です。より

櫻田氏は1957年、佐賀県生まれ。九州大学卒業後、三井造船で潜水艦の設計技師をしていた。その後、なぜかSMBC日興証券に転職し、資産運用業務に携わる。それから外資系のラッセル・インベストメントにまた転職し、そこで役員まで勤め上げた文句なしのエリートだ。一見するとちょっと間抜けにも見えるオッサンだが、ただのオッサンではないのである。

ラッセル・インベストメント(日本) - ホーム | Russell Investments

現在ではラッセル・インベストメントもやめて独立し、アークス&コーチングという会社の代表をしている。これはどういう会社かというと、講演会やビジネスコーチ、コラムニストとして櫻田氏が活動するためのものだ。

これはあくまで徒花の勝手な想像だが、おそらくもう一生遊んで暮らせる分だけ金を稼いで満足してしまったため、この人の人生はもう趣味のレベルに入ってしまったのではないだろうか。まぁ、もしかすると世の中に出回っているほとんどのビジネス書の著者は、そういうお気楽な気持ちで世の凡百なビジネスパーソンたちにアドバイスを送っているのかもしれないが。

ビジネス書を買うときは奥付辺りをチェックすること

あと、この本の奥付の辺りを見ると、次のことが書かれている。

企画協力▲天田幸宏(コンセプトワークス株式会社)

協力▲NPO法人企画のたまご屋さん

コンセプトワークスは商業出版をプロデュースする会社だ。

そして「企画のたまご屋さん」も、本を出したい個人に代わって各出版社に働きかけてくれる出版エージェントである。

それぞれWebサイトを調べると、コンセプトワークスは36万~120万円の費用がかかるし、「企画のたまご屋さん」は出版が決まったときに「印税の30%をよこせ」といっている。なかなかボロそうな商売だ。つまり、櫻田氏はこの2社の協力を経て、ようやく商業出版にこぎつけたというわけである。ビジネス書を購入するときは、奥付にこうした表記があるかどうか、見てみるのもひとつの手だろう。

こうした出版コンサルティング会社はほかにもいくつかある。たとえばプレスコンサルティングとか、

アップルシードエージェンシーとか

The Appleseed Agency Ltd. / アップルシード・エージェンシー

ネクストサービス株式会社とかだ。

とくに最近は、暇とカネをもてあました団塊の世代あたりが「自分の格をあげるために本を出版したいが、自費出版はイヤだ!」という欲求を抱いているケースも少なくない。そんな欲望をかなえるために、こうした会社は甘い言葉を使ってなんとか彼らから金を引き出そうとしているのである。

んで、この本は読む価値のないビジネス書なの?

と、ここまでけっこう散々に叩いてきたものの、そんな櫻田氏が書いた本書がまったく読む価値のないダメダメなビジネス書かと問われれば「まったく、そんなことはない」。

たしかに、目新しいことはあまり言っていないし、文章のセンスが卓越しているわけではないし、誰かの人生を劇的な変えるようなパワーを持った本ではないことは確かだ。しかし、言っていること葉理解しやすいし、文章は適度なユーモアがあって読みやすいし、「なるほどね」とちょっと感心できるような内容はところどころに見られる。曇りなき眼で見定め、自らの意思で情報を取捨選択できる人であれば、まぁ読んでも損にはならない本だろう。

というわけで、次からは徒花が読んでいて「なるほどね」とちょっと感心したようなところをいくつかピックアップしてお届けしよう。

※ただし、本書はあくまでもチームの「マネジメント」をテーマに掲げているので、下っ端で部下がひとりもいない私のような人間が読んでもほとんど意味はないだろう。同様に、フリーランスで自由気ままに働いている人にとっても価値はきわめて小さい。

本書のハイライト

「がんばれ」ではなく「工夫しろ」と発破をかける

ついつい「がんばれ」といってしまいがちだが、そもそも「がんばらないと達成できない状態」も問題。「がんばらなくても達成できる」ように工夫することを求めたほうが良い、ということ。

部下からフィードバックをもらう

上司から部下へフィードバックすることはあっても、日本企業の場合、その逆の機会は設けられない。上下関係があってもお互いをフィードバックしあうことで、部下は「上司にフィードバックしてもらう意義」を理解できるようになる。

ブレストは時間の無駄

複数人で集まり、とにかく自由にアイディアを出し合う「ブレインストーミング」は意味がない。人数が多くなると人は手を抜き、結局2~3人の発言内容がメインになっていく。それよりも、本当に当事者になっている人間がごく少数で必死に考え抜くことでブレイクスルーを起こす。

一番大事なところは絶対に部下に任せない

よい上司であろうとしている人ほど「部下にいろいろ任せよう」と考えるそうだが、なんでもかんでも任せるのは大間違いである。とくに、その仕事の成否を分けるような重要な部分は、むしろ上司が引き取ってしっかり成功させることが大事だという。べつにこれは部下の成果を奪っているのではなく、チームとして「勝ち癖」を覚えさせる効果があるためだ。

プライベートで部下に気を遣わせない

著者が証券会社に勤務していたとき、ある上司は部下に向かって「中元、歳暮、年賀状は一切不要、そんなことをしたヤツは評価を下げる」と宣言したらしい。私は生まれてこのかた、年賀状一枚誰かに送ったことはないし、必要性も感じていないので、とても共感できる。

部下を気遣って自分が早く帰る上司は分かってない

よい上司であろうとしている人は、自分が早く帰宅することで部下も早く帰宅させようとする。しかし、これは根本的な問題を分かっていながら放置している上司の行動だ。つまり、自分の部下が「上司の顔色を伺って行動している」ことを知っているのに、抜本的な解決策を実施できていないのである。

おわりに

こんなところだろうか。そういえば、あと本書で気になったのはデザインについてだ。よほどデザイン代をケチったのか、タイトルもまったく気合が入っていないし、中面のデザインもどこかテキトーな感じがした。著者の意欲は高かったのかもしれないが、担当した編集者の意欲はそんなでもなかったのかもしれない、と感じた次第である。

 

それでは、お粗末さまでした。