本をいっぱい読むコツ……を書こうと思った件
先日、読書メーターでとある方からメッセージをいただいた。
もくじ
その中で私が気になったのが
「読みたい本はたくさんあるのですが、なかなか読み進められなくて困ってます。」
という部分。
そういう声はよく聞く。私自身も、読みたい本をすべて読めているわけではない。
だが、それでも私は月間平均20冊ペースで本を読んでいるので、たぶん、読んでいる方だと思う。
なので、「もっと本を読みたいけどなかなか本を読む時間がなかなかない」という人に向けて、今回のエントリーは書いてみたい。
①本は読みきらなくていい
まず、読書家なら誰もが、読み始めてみて「思ったよりおもしろくないなぁ」と感じる本に出会う経験があるはずだ。
そういう本は、捨て置けばよい。
とくに最後まで読まなければならないという決まりなんてないのだから、おもしろくないと感じた本は途中で読むのをやめてしまえばいいのだ。
とはいえ、図書館で借りた本ならいざ知らず、自分でカネを出して買った本を読むのをやめる……というのは心理的抵抗があると思う。
そういう人には、経済学でいう「サンクコスト」をお伝えしたい。これは私が大学の経済学部に入って一番最初の講座で習ったものである。
たとえば定価1500円(+税)の本を購入したとしよう。すると、この1500円(+税)はサンクコストになる。サンクコストというのは「なにをどうやっても、もう戻ってこないコスト(費用)」のことだ。
つまり、1500円(+税)の本を読もうが読むまいが、もう1500円(+税)は戻ってこないのだ。だから、もうこの費用は考えてはいけない。
そしてもし、この本が予想と違って全然おもしろくない(もしくは自分には難しすぎる)と感じるなら、いやいや読むのは経済学的には間違っている。
それよりも、もっと別のおもしろい本を探すなり、代わりに映画を見るなりしたほうが、よほどベネフィット(便益)があるはずだ。
投資で言うロスカット(損きり)の概念にも近いかもしれない。
読書は投資である。(ともいえる)
そして、投資である以上、損することもある。問題は損をしてしまったときに、どれだけ早く気持を切り替えて次の投資先を探せるかなのだ。
②本は数冊を同時に読む
日本の食事では「三角食べ」という食べ方がある。ご飯、味噌汁、おかずの3つを順繰りに食べることで、「おかずだけ食べてご飯が余った」という事態を防ぐものだ。
これと同じように、徒花としては「三角読み」をおススメしたい。3冊の本を同時並行でバランスよく読んでいくのだ。
ジャンルもバラけさせたほうがいい。たとえば私は「小説系」「実用書系」「専門書系」を同時に読むことが多い。
はっきりいって、よほどおもしろい本(もしくは内容の薄い本)でない限り、一度の読書で最後まで読みきるのは難しい。
そして、その日そのときの気分によって、読みたい本は変わるものだ。(たとえば「今日はミステリーを読む気分じゃないなぁ」とか)
であれば、「読み始めた本は最後まで読み切る」というつまらないポリシーは捨ててしまおう。読みたいものを読みたいときに読みたいだけ読めばいい。
③本棚を持たない
私は本棚を持っていない。
なぜかというと、いちいち整理するのが面倒くさいからだ。
しかしもう一つの理由は、「本を家のいたるところに散在させている」からである。(もちろん私は一人暮らし用の集合住宅に住んでいるので、そんなに部屋がいくつもあるわけではない)
基本的には、リビングの片隅にダンボールを置いて、そこに山積みにしている。だが、キッチンの冷蔵庫の脇のキャビネットにも置いてある。あと、玄関の脇の棚の上にも本がある。ベッドの上にもだいたい1~2冊の本があり、パソコンを置いている机の上にも1~2冊の本がある。トイレにも本が1~2冊ある。かばんの中につねに入っている本もある。
とにかく、私の部屋ではバスルーム以外、どこにいてもなにかしらの本が目に入る。
思うのだが、本棚に整然と並べられている本は、なんだか読む気が起きない。本棚に並んだ本は本棚を構成する一つの要素となっているで、そこから一冊だけ抜き出すのに精神的な気力を要するのだ。
しかし、床に1冊だけ置いてあったり、棚の上に1冊だけ置かれていると、手に取るときの精神的な負担はまったくない。気がつくと手にとってページをめくってしまう(のは私だけかもしれないけど)。
こんまりさんの片付けのルールには完全に反してしまうが、本の置き場所をあまりガッチリと決めてはいけない(だから部屋が片付かないのだが)。
たくさん本を読みたいのならば、いついかなるときも本のことが意識の片隅にあった方がいい。
そのためには、本棚という本のホームを作らず、「家の中すべてが本棚」という生活にしたほうがいいと思うのである。
④5分だけ読む
オサレな喫茶店に入ってコーヒーをすすりながら本を読む――うーむ、さまになる。
……が、私はそういう読み方はほぼしない。
たまに週末、何の予定も入っていないと近所のベローチェに行って本を読んだりするが、そこは恐ろしく騒がしいので、冒頭のイメージとは程遠い。
それから、いざ「本を読もう!」と意気込んでベローチェでLサイズのコーヒーを頼み、タバコをふかしながらイヤホンでモーツァルトを聞きつつ本を読み始めても、案外気分が乗らないものである。
ついついスマホを取り出してパズドラを始めてしまったりする。結局、1時間くらいしか滞在しないことが多い。
「人間の集中力は90分が限界」という話をよく聞くが、私はそんなに長く保たないと考える。
人間の集中力が続くのは、せいぜい5~10分程度じゃないだろうか。
とくに、本を読むというのは「能動に近い受動行為」である。
つまり、どっちつかずなのだ。
たとえば映画やテレビは完全な受動行為なので、あまり負担はない……というか、そもそも集中力がそんなに要らない。
一方、たとえば文章を書く行為は能動行為だが、つねに指を動かして作業し続けているので、案外集中力が続いたりする。
しかし、本は受動行為でありながら積極的に文章を「読む」という能動行為が必要であり、その割には「たまにページをめくる」くらいで身体動作は極めて少ない。
つまり、読書というのは一番集中力が持続しにくい行為なのではないかと思うのだ。
であれば、最初から意気込んで本を読んでもそれが持続しないのは当然である。
乱暴な言い方かもしれないが、喫茶店で本を読むという行為は本を読むために行うのではなく、「本を読んでいる自分」に酔いしれるための行為であるような気もする。
もちろんそれ自体が悪いわけではないが、喫茶店に入って本を読むことそのものは「たくさんの本を読みたい」という目的とは相いれないのではないか……と考えるのである。
⑤緩急をつけて読む
本には、「大事な部分」と「大事じゃない部分」がある。
たとえば小説なら「本筋に関係ある個所」と「本筋に関係ない場所」があるわけだ。
ビジネス書でも「コアメッセージ」と「そうでもないメッセージ」がある。
これは本ごとにどこが「大事な部分」かが変わるので伝えるのは難しいが、本をたくさん読んでいると、読んでいるだけで「じっくり読むべき場所」と「サラッと読み流しても場所」がわかるようになるのだ。
これがつまり「緩急をつけて読む」ということである。
これは慣れと感覚的な話なので、とにかくたくさん読むしかない。
⑥本を読むのをやめる
ここまで書いてきて思ったが、突き詰めて考えれば本なんて別に読まなくてもいいものである。死にはしない。
そもそも、人は往々にして「やりたい」から始めた行為がいつのまにか「やらなければならない」に変わってしまう。
つまり、「もっとたくさん本を読みたいけど、読めない」という人は、本を読む行為が義務的なものになってきている可能性がある。
だとすれば、いっそのこと本を読むのをやめてしまえばいいのではないか。
もし、それでも、どうしてももっと本が読みたいならば、睡眠時間を削ってでも本を読めばいい。
だが、多くの人がそれをしないのは「睡眠」と「読書」を天秤にかけたとき、睡眠のほうが勝ってしまうからである(もしくは「健康」のほうが「読書」より勝ってしまう)。それは非常に健全で正しい考え方だと思う。
本を読むのは、ただ人生を生きていくにはまったく不要だ。
読むにしても、別にそんなにたくさん読む必要はまったくない。
という結論に落ち着く。
おわりに
最近はビジネス書で「読書術」をテーマにした本がたくさんある。
私などは読むことで何かを得ようとする不純な動機で本を読むのをあまり好まないが(実用書を作っている人間としてはあるまじき考えだが)、世の中にはそういう人が多いのも事実で、私自身がそういう人たちによって飯を食わせてもらっているのも事実である。
読書とはそもそもなんなのか?
そもそも自分のなかに湧き上がる「~したい」という気持ちが本当に純粋なものかどうかというのは、考えてみる必要があるのかもしれない。
遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
- 作者: 印南敦史
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (2件) を見る
読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門
- 作者: 佐藤優
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: 単行本
- 購入: 10人 クリック: 361回
- この商品を含むブログ (66件) を見る
読書は「アウトプット」が99%: その1冊にもっと「付加価値」をつける読み方 (知的生きかた文庫)
- 作者: 藤井孝一
- 出版社/メーカー: 三笠書房
- 発売日: 2013/12/24
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (5件) を見る
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。