マッキンゼーって結局なんなのさ?~人はなぜ働くのか?~
「なんのために働くのか」という疑問は、大人にとって永遠の命題であるように感じる。
「生活の糧のため」というのはちょっと空しい。だからといって「社会に貢献するため」というのは白々しい。個人的に思うのは「仕事は自己を表現する手段」なのではないかということだ。
人間は自己を表現したい存在である。自分は他者とは違う存在であることをアピールしたいものなのだ。だから「愛されたがる(誰かにとって特別な存在に成りたがる)」し、「才能」「権力」「名声」などにあこがれる。私がこうやってブログを書いているのも、自分の考えや感性、言葉を表現したいという欲求に基づいて行われている。
だから芸術家は仕事をしない。彼らは絵画や彫刻、文章、音楽などを生み出すことによってこの表現欲求を満たしているのだ。たまたまその価値が社会に認められればラッキーである。そうでない場合は、それこそ「生活の糧」のために働かなければならない。なでしこジャパンのメンバーがほかに仕事をしているのも、この「生活の糧」のためだろう。
しかし、こうした人は一握りである。多くの人は自らが何者かをわかっていない。自己を表現するにも、芸術家のように胸のうちから湧き出る情熱のようなものがないから、とくになにも表せるものがないのだ。
だから仕事につく。大工になれば「建物を作る知識と技術を持った職人」としての自分を表現できる。銀行員になれば「お金に関する専門知識と安定した仕事を持った自分」を誇れる。人は自分を何者か確定させ、それを社会に表現するために働くのである。
――というわけで、今回のテーマは「マッキンゼーってなんなのさ!?」ということである。マッキンゼーという名前は、熱心なビジネス書ジャンキーなら知らないはずはない、世界の超一流企業の筆頭格だ。マッキンゼーをタイトルに入れたビジネス書は数々ある。
しかししかし、名前は聞いたことがあるけれど、そもそもマッキンゼーとはなにをやっている会社なのか、ちゃんと分かっている人はどのくらいいるんだろうか? 少なくとも、私はこのエントリーを書くまで全然知らなかった。そこで、マッキンゼーの基礎知識を学んでいこう。
マッキンゼー・アンド・カンパニーについて
マッキンゼーとは1926年にシカゴ大学経営学部教授のジェームズ・O・マッキンゼーにより設立された、アメリカのコンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニーの略称である。以上。
それでは、お粗末さまでした。
冗談は置いといて、とにかくマッキンゼーというのは人の名前である。カンパニーというのはいまでこそ会社という意味が一般的だが、本来は「仲間」という意味も持つ。つまり、「マッキンゼー・アンド・カンパニー」とは、意訳すれば「マッキンゼーと愉快な仲間たち」だ。社名から既にネタを仕込んでくるあたり、流石である。
設立当初は「カーニー&マッキンゼー」という会社だったが、ケンカでもしたのか、のちに「マッキンゼ-・アンド・カンパニー」と「A.T.カーニー」の2つに分かれている。その後、世界60カ国に支社を持つグローバルな戦略系コンサルティングファームとして君臨している会社なのだ。コンサルティング業界の中ではトップの実力を持っているのである。
注目されるのは「人材が優秀」「給料が高い」という点。平均年収は1,000万円を超える。ただし、完全に実力主義の会社なので個人差が大きいようだ。キャリアや性別などは関係ない。そして、使えないヤツはどんどんクビを切られていく厳しい環境である。
日本の会社のように終身雇用を是としているわけではないので、マッキンゼーで修行して他の業界に転進する有名人も多い。一番代表的なのは経済評論家――というよりもマルチタレントとしてテレビで活躍している勝間和代氏だろう。ほかには作家としても活躍している大前研一氏、DeNAの元社長・南場智子氏などが著名といっていい。この企業風土は、日本の会社ではリクルートがマネをしている。
また、マッキンゼーを経てお笑いタレントになった人もいる。それがこの石井てる美氏だ。お笑いタレントとして成功しているのかは定かではないが、キッチリ本は出している。ヒラリー・クリントンの物真似コントなどが得意なようだが、テレビで見たことはない。
私がマッキンゼーを辞めた理由 ―自分の人生を切り拓く決断力― (角川書店単行本)
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んで、マッキンゼーは何がすごいの?
マッキンゼーは世界に先駆けて企業のコンサルティングを業務として提供し始めたパイオニアだが、だから強いわけではない。経験が少ない20代の人間でも、有能ならば即活躍させるだけのノウハウ、システムを作り上げているのだ。だからこそ、「そんなマッキンゼーのノウハウ教えまっせ」というビジネス書が世の中に氾濫しているのだ。
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ここで見逃してはいけないのは「有能ならば」という部分である。いかにマッキンゼーでも、「怠惰で向上心・根気・情熱に欠けた、頭の回転が鈍くて理解力・行動力・積極性が乏しいマヌケなボンクラ」はどうしようもない。
なお、東洋経済オンラインのこちらの記事によれば、最近は「アップ・アンド・アウト(昇格して去る)が増えている」とのこと。この背景にあるのはライバルのコンサル会社・BCGが追い上げてきていることがあるようだ。だから、以下のような本も出てきているのかもしれない。
こうした状況には「卒業生の活躍は人材育成に成功したことの証し。卒業生の成功はマッキンゼーの成功そのものだ」(ジョルジュ・デヴォー日本支社長)とのこと。負け惜しみのようにも聞こえるが、マッキンゼーの日本のトップが言ってるんだからきっとその通りなんだろう。なにしろマッキンゼーなんだから!
出版業界は流行り廃りが激しい。あまりにも一気にマッキンゼー本が増えてしまうと、マッキンゼーというコンテンツは「消費される」ものになってしまうだろう。もちろん、マッキンゼーを銘打った本が書店から消え去ったとしてもマッキンゼーの業績とはなんの関係もないので、困るのは新たなネタを探さなければならない出版社だろうが。
そんなこんなで、お粗末さまでした。