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本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』が納得できない

ミステリー

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「ミステリーが好き」とか言っておきながら、実はわたくし、シャーロック・ホームズシリーズをほとんど読んだことがない。

もくじ

読んだことがあるのは、『バスカヴィル家の犬』くらい。しかも、読んだのは小学生だか中学生のことなので、内容もよく覚えていない。

バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)

バスカヴィル家の犬 (新潮文庫)

 

んで、こんな本を読んだ。

なんで読んだのかというと、私のAmazonの「欲しいものリスト」に入っていたからだ。なんで「欲しいものリスト」に入っていたのかというと、それがよくわからない……。おそらく、単純にタイトルがおもしろいからだろうと私は推理する。

北原尚彦氏について

北原尚彦(きたはら・なおひこ)氏は1962年生まれの小説家。青山学院大学在籍中には推理小説研究会に所属し、おそらく1990年の『ホームズ君は恋探偵』が商業デビュー作と思われる。

ホームズ君は恋探偵 (講談社X文庫―ティーンズハート)

ホームズ君は恋探偵 (講談社X文庫―ティーンズハート)

 

この作品は「北原なおみ」という女性のペンネームを使っているが、それはおそらくこの作品のレーベル・講談社X文庫がティーンの女の子たちを読者対象としたものだったためだろう。ドイルのシャーロックシリーズマニアであり、日本シャーロック・ホームズ・クラブの会員であり、ホームズをテーマにした小説のほか、ホームズを題材にしたエッセイの執筆、さらにはホームズを解説した洋書の翻訳なども手掛けている生粋のシャーロキアンである。

その一方で日本SF作家クラブの会員でもあり、白泉社からは「スペース・プリンセス・ヒカリ」シリーズと称される作品群も発表している。

銀星号発進せよ! (スペース・プリンセス・ヒカリ 1)

銀星号発進せよ! (スペース・プリンセス・ヒカリ 1)

 

また、ちょっと意外なところでは、スクウェア・エニックスからPS2のゲームスターオーシャン Till the End of Timeのノベライズ作品を書いたりもしている。

スターオーシャンTill the End of Time〈Side1〉惑星ハイダ~エリクール2号星 (GAME NOVELS)

スターオーシャンTill the End of Time〈Side1〉惑星ハイダ~エリクール2号星 (GAME NOVELS)

 

『ジョン、全裸同盟へ行く』の概要

本作は北原氏がお得意とするシャーロック・ホームズパスティーシュものだが、ちょっと変わっているのは「舞台が21世紀の現代である」という点。周知のとおり、ホームズは19世紀のロンドンを舞台に活躍した名探偵だが、本作ではそのホームズと相棒のジョン・ワトソンがパソコンやスマホ、さらにはあの日本生まれの文房具なんかを使っていたりする。そして、本書はワトソン君がブログにアップする予定だったエピソードをまとめたものというスタイルだ。とはいっても別にタイムスリップとかそういうSF的な要素はなく、あくまで「現代にホームズとワトソンが暮らしていたら」という体裁で物語が進んでいくのだ。

適度にユーモアを交えながら、でも本筋はしっかり殺人が起こったりするミステリーなので、なかなかおもしろい。本家の話をもじった短編集なので、それぞれの話について簡単に感想を述べていこう。

『ジョンの推理法修行』

元ネタはドイル自身が手掛けたパロディ外伝『ワトソンの推理法』(『まだらの紐 ドイル傑作集 1』に収録)

まだらの紐―ドイル傑作集1 (創元推理文庫)

まだらの紐―ドイル傑作集1 (創元推理文庫)

 

一応事件は起こるが、どちらかというとホームズとワトソンの関係性を分かりやすく伝えるような、彼らの日常生活を描いたものになっている。一目見ただけで相手の素性をズバズバ推理してしまうホームズの手腕や、そんなホームズに翻弄されるワトソンの関係性がよくわかるため、ホームズに明るくない読者でも理解しやすい導入だ。

『ジョン、全裸連盟へ行く』

表題作で、元ネタは『赤毛連盟』

赤毛連盟 (ポプラポケット文庫―名探偵ホームズ (701-1))

赤毛連盟 (ポプラポケット文庫―名探偵ホームズ (701-1))

 

全裸愛好家だけが加入できる組織をなぜか脱退させられた原因の追究を求めに来た男性の依頼にこたえるため、ジョンことワトソンが全裸になってその連盟に加入してみるというストーリーである。『ジョンの推理法修行』よりも笑えるシーンが多く、おもしろい。

しかし、個人的にはホームズとワトソンといったらマンガ家、いしいひさいち氏のホームズとワトソンが思い浮かぶので、あのハゲでヒゲのワトソンの裸を頭の中でイメージしてしまった……。

『ジョンと人生のねじれた女』

元ネタは短編唇のねじれた男(『シャーロック・ホームズの冒険』に収録)

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

 

妻の出かけ先を尾行していた男の目の前からその妻が消失し、その行方を追う物語。まあおもしろいが、ほかの話に比べると印象に残りにくい。

『ジョンと美人サイクリスト』

元ネタは『謎の自転車乗り』(ほかの翻訳だと『美しき自転車乗り』『孤独の自転車乗り』などとも。短編集『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されている)

シャーロック・ホームズの帰還 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの帰還 (新潮文庫)

 

美人モデルが自転車でストーキングされているので何とかしてほしいという相談を受けて、ジョンがそのモデルと一緒にサイクリング通勤するという話。『ジョン、全裸連盟へ行く』とちょっとしたつながりがあり、ここらへんから本シリーズにおけるジョンのキャラクター……というか立ち位置がはっきりしてくる。これもなかなかおもしろい。

『ジョン、三恐怖館へ行く』

元ネタは短編『三破風館』(『シャーロック・ホームズの事件簿』に収録)

シャーロック・ホームズの事件簿 (新潮文庫)

シャーロック・ホームズの事件簿 (新潮文庫)

 

3つの不審死があった屋敷で怪死を遂げた若い息子の死の真相を探るため、ホームズとワトソンがその屋敷に泊まる話。当然、息子が死んだいわくつきの部屋に泊まるのはジョンである。これまでの事件のトリックはとくに現代らしさを感じさせるものではなかったが(全裸連盟はちょっと別)、本作は現代ならではの、しかも日本発祥のあるものがキーになっている。きれいにまとまっていて、おもしろい。

『ジョンとまだらの網』

元ネタは『まだらの紐』

まだらの紐―ドイル傑作集1 (創元推理文庫)

まだらの紐―ドイル傑作集1 (創元推理文庫)

 

結婚を決めた兄がある部屋に泊まったところ死んでしまい、同じく結婚が決まった弟が同じ部屋に泊まらざるを得なくなったため、兄の死の真相解明をホームズたちが解明する物語。当然、兄が死んだベッドで眠るのはジョンである。

トリックはちょっといまいちだったが、濃ゆい登場人物と奇抜な舞台設定で、かなり印象に残る作品。なぜこんなにもジョンはモテるのか……。

ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』の視聴に至った経緯と感想

実は本作、あとがきによればBBCが制作した人気ドラマ『SHERLOCK/シャーロック』にインスパイアされて、その設定をまねて作られた作品なのである。ちゃんと日本BBCにもお伺いを立て、公認をもらったらしい。

私も「たいへんおもしろい」といった評判は聞き及んでいたので興味はあったのだが、いかんせんドラマとなると視聴するのになかなか時間がかかるので手を出さないでいた。しかし、よくよく調べるとhuluのラインナップにあったし、1シーズンが3話で完結(1話はだいたい90分くらいなので、1シーズン270分くらい)とわかったので、とりあえずシーズン1だけ見てみたのだ。おそらく、先にレビューした小説のワトソン君はこのドラマのワトソンを思浮かべるのが正解だろう。

しかし、私はイマイチだった。その原因は、とにもかくにも1話目にある。

みんな、あの1話目に納得できるの??

以下は壮大なタバレになるので、これから視聴する人は注意していただきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

簡単にあらすじを説明すると、連続服毒自殺事件の真相究明をしていたホームズとワトソンは、あるタクシー運転手が犯人だと突き止める。犯人がどうやって「被害者たちに自分から毒薬を飲ませていたか」というと、銃で脅しながら2つの薬入りの瓶を差し出してこんなゲームを持ちかけたのだ。

「片方の瓶には毒薬が入っている。どちらかを選んで飲め。お前が選ばなかった方の瓶の薬は自分が選ぶ。そして同時に飲むのだ。選ばないのであれば、銃で撃ち殺す」

ゲームに参加しなければ問答無用で殺されるのだから、被害者たちは薬を選んで飲み、そして死んだ。

さて、この連続服毒自殺事件の真相を聞いて、私は頭の中でいくつかの推論をくみ上げた。本当に片方にだけ毒を仕込んでいるのであれば、ただのギャンブルゲームになってしまう。ということは、「どちらにも毒が仕込んである」「どちらにも毒を仕込んでいない」のどちらかしかありえない。

前者の場合、犯人は事前に毒を無効化する何かを飲んでゲームに臨んでいたということだろう(にしても、かなりリスキーだが)。後者の場合、実は毒物は薬に仕込んでいたのではなく、瓶の一部、もしくは被害者だけが手を触れるだろう箇所に塗っておいて、薬以外からなんらかの方法で毒を摂取させていたはずだ。論理的に考えると、犯人がゲームで勝ち続けるにはこのどちらかしかありえないと考え、私はどっちのルートなのか、わくわくしながら見ていた。

が、しかし……このトリックは結局、なにも説明されないまま1話目が終わってしまったのである!!! 私は混乱した。私は早送りもしないでずっと見ていたつもりだったが、いつのまにかその解説を見逃してしまったのだろうか? しかし、巻き戻してもそんな説明のくだりは見つけられない。

私はネットで、だれかこのことについて解説していないのか検索した。しかし、私が納得できるような説明をしている人はいない……。そこで私は、次にこのストーリーの元ネタである『緋色の研究』のネタを探してみた(私は本書も読んでいない)。 

緋色の研究 (新潮文庫)

緋色の研究 (新潮文庫)

 

んで、私はまたも驚愕する。『緋色の研究』ではドラマと同様、犯人が被害者に毒を選ばせるゲームを行うのだが、どうやって勝っていたのかというと「神の意思にゆだねた」というのだ。つまり、ほんとに運任せのギャンブルをしていた、ということなのである。ドラマはもちろん、緋色の研究のオマージュなので、おそらく理屈は同じなのだろう。ふざけんなと、私は憤るほかなかった。

このドラマ、ミステリマニアは見てもおもしろくないかも

もちろん、原作はそれこそミステリー草分けの時期に書かれたものなのだから、トリックがチープだったりするのは仕方がない。小説の場合、毒選びを「神」に任せていたとしても、まあ許容しよう。しかし、ドラマはいくら原作のオマージュとはいっても、これだけたくさんのミステリーが毎年量産されている現代に作られたものなのだから、なにかしらの理屈をつけて説明してほしかった。だから私は、非常にモヤモヤした気持ちでこのドラマ第1話目を見終わったのである。

このファーストインプレッションが最悪だったためか、2話目以降も、なんだかあまり期待できなくなった。胸躍るトリックらしいトリックは何もなく、どちらかというとミステリーテイストなただの冒険活劇で、私の中でのドラマの評価はだだ下がりになった。このドラマはミステリーマニアではなく、シャーロキアン向けに作られたものであり、シャーロック・ホームズを愛している人にとっては原作を大事にしたおもしろい作品なのかもしれないが、意表を突くトリックを期待すると、それは裏切られることになる作品だと言わざるを得ない。

シャーロックよりポアロ見ようぜ!!

さて、そこで私がおススメしたのはなんといってもデビッド・スーシェが主演のドラマ『名探偵ポアロである。

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

 

だんぜん、こっちのほうがおもしろい。ちょっといろいろ古臭いところはあるけど。

あと、日本のアニメになるが、『アガサ・クリスティーの名探偵ポアロとマープル』もオススメだ。私はドイルよりもクリスティ派なのだ。密室! アリバイ! 謎の符丁!

とにかく、もうシャーロックはお腹いっぱいなので、気になる終わり方ではあったがシーズン2は見ない。ただ、ホームズの短編集は、読んでみてもいいかもしれないと思った。そもそもの話、最初に『バスカヴィル家の犬』を選んでしまったことがそもそもの失敗だったように思う。

 

というわけで、お粗末さまでした。