ニワトリを殺すな!
サターニャちゃんはかわいいなぁ!
もくじ
それはともかく、今回紹介するのはこちら。
- 作者: ケビン・D.ワン,Kevin D. Wang
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 16回
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翻訳書のような翻訳書じゃないやーつ
ビジネス系の自己啓発書である。
翻訳本っぽく見えるが、翻訳本ではない。
というのも、著者は本書の執筆時、東京のオフィスで働いていて、いろいろな人の協力を得て幻冬舎から刊行することになったらしいからだ。
ケビン氏が日本語ペラペラなのかは定かではないが、日本の文化に造詣があり、かなり日本の企業について考えている人物なのだろう。
https://www.keiomcc.com/magazine/sekigaku15/
とくに、あとがきでも述べているように本書に出てくるメンター的なキャラクターは本田技研工業の創業者・本田宗一郎氏をモデルとしているらしく、同氏をモチーフにした小道具なども登場している。
※余談だが、翻訳本の場合はたいていは総トビラ(表紙をめくって一ページ目)のウラのページに「原題」と「原著の出版年」と「コピーライト」が英語で書いてある。ここを見ると、オリジナルタイトルがどのくらい改変されているかもわかるので、見るとなかなかおもしろい。
全編ストーリー形式のビジネス啓発書
内容の紹介に移ろう。
本書は全編がストーリーに沿って展開される、物語形式のビジネス書だ。
主人公のデビットは銀行マンだが、上司に命じられてベンチャー企業に(イヤイヤ)出向する。
どうせ勢いだけで管理をテキトーにやっている会社だろうと見くびったデビットだが、参加してみたその企業の会議で彼は度肝を抜かれる光景を目の当たりにする。
そして、会議室のドアの張り紙の一文
「ニワトリを殺すな」
にこめられた意味を、その出向先企業の社長ジェームスから教えられるのだった。
本全体の雰囲気としては『仕事は楽しいかね?』に近い感じがする。
あれは個人の働き方にフォーカスした自己啓発書だが、本書はどちらかというと企業文化論に焦点を当てているわけだ。
しかも文字は大きく、欧米風のラフタッチなイラストが適宜入り、かなり短時間で読める内容。
小難しい専門用語も登場せず、ビジネスに明るくない人でもこれなら楽しみながら読めるのではないかと思われる。
「ニワトリを殺すな」の意味
本書によればニワトリは傷ついたニワトリを見つけると、仲間であってもその傷口をつっついて殺してしまう性質を持つ、けっこう残虐な生き物らしい。
そして、じつはこのニワトリと似た行動は、さまざまな企業の中でも起こっていると、ジェームスは述べる。
会議などで新しい企画を提案したり、進めているプロジェクトが上手くいっていないことを報告すると、人々はその可能性をつぶし、責任者を非難することばかりを考える。
それが、会社の発展をつぶしてしまう要因だと述べるのだ。
試してみることに失敗はない
『仕事は楽しいかね?』でも述べられていたのだが、こうした人々の黄金律は次のようなものである。
「新しいことにチャレンジしての失敗は、本当は失敗ではない」
「なんでも『試してみる』ことが大切」
じつは多くの人々は、これまでの経験(親や教師、上司などに言われてきたネガティブワード)に洗脳されていて、「失敗は悪いこと」だと考えている。
そして、なにかアイディアを思いついても、「成功するか、失敗しないか」をまず考えて、結局、行動しないまま自分で自分のアイディアをつぶしてしまうのだ。
でも責められるべき失敗もある
ただし、ここがキモなのだが、どんな失敗でもすべて許されるわけではない――ということは理解しておかなければならない。
許されないのは、失敗を次に生かそうとしないことだ。
これが、許されない失敗である。
「失敗は成功の母」などという格言があるが、実際問題として、失敗は勝手に母親になるわけではない。
失敗を分析し、「どうすればいいか」と次の段階を考えることができた場合のみ、失敗は次に成功を生み出すのだ。
とくに、失敗を恥ずかしいと思っている人たちは、自分の失敗を隠したり、ごまかしたり、記憶から消去しようとしてしまう。
これは、磨けば光るダイヤの原石を道端に捨てているようなものだ。
「自分はベテランだ」と思った瞬間に腐敗が始まる
ビジネスパーソンでも学者でもクリエイターでも、「自分はそれなりにベテランになった」と思った瞬間から、転落の可能性が顔を覗かせるようになる。
本当のプロフェッショナルは、はるか高みをつねに目指しいている。
彼は自分の現在の仕事に満足しない。
それを怠けることはマンネリ化につながり、惰性や腐敗を引き起こす。
消費者は賢い
本を購入する場合、著者やタイトルやあらすじを見て判断する人が多いと思う。
しかし、本当にこだわってつくられた本は「文字の大きさ」「フォントの種類」「小見出しの位置と内容」「紙の質」「ちょっとした言葉の選び方」「余白の大きさ」「本のサイズ」「紙の厚さ」などにこだわっている。
もちろん、一般の読者はそれを感じない。
しかし、人々はそうしたこだわりの有無を直感によって感じ取り、じつは無意識的に評価している。
だから、「どうせ読者はこんなところにこだわらないだろう」と消費者を見くびると、痛い目を見る。
同じように、「これくらいの小さな違いを、客はわからないだろう」と思っていると、いつまでたっても絶対に高評価はもらえないのだ。
創造=アイディア×情熱
これは私も最近よく思うことなのだが、最終的に物事がうまくいくかどうかは「やる気」にすべてかかっている。
どれだけ良いアイディアが思い浮かんでも、
どれだけ地頭と要領と良くても、
どれだけしっかりとした理論と計算に基づいていても
本人のモチベーションが低ければなにも成し遂げられない。
「為せば成る、為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
上杉鷹山
「できる・できない」は問題ではないのだ。
ただ、「やる・やらない」が問題なのだと思う。
おわりに
この本、Amazonでもそれなりにレビューがついていて高評価だし、売上データを調べてみるとなかなか売れているっぽい。
個人的な推定だが、発行部数4~5万部くらいはいっているんじゃないだろうか。
このくらいの売上が立っている本にはけっこう良書が多いのだが、いかんせん本が多すぎるので埋もれてしまっているケースも多い。
イメージとしては、やはり10万部というのがひとつのボーダーラインになっていて、ここを突破すると、読書習慣がある人にはそれなりに知られる一冊になるケースが多い。
かくいう私も本書の存在を知らなかったので、まだまだ勉強不足な自分を実感した次第だった。
- 作者: ケビン・D.ワン,Kevin D. Wang
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2003/03
- メディア: 単行本
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今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした