本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『世界最強の商人』のレビュー~人生を成功に導く9つの宣言~

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どれだけ天気が良かろうと、部屋から一歩も出ない日々を過ごしています。

もくじ

私は基本的に小説のネタバレとか、ビジネス書の内容を事細かに書くことはしない派なのだが、今回紹介するこちらの本に限っては書いていこうかと思う。というのは、本書の内容は書いておくことによって読んだ人の役に立つと思うと同時に、書いても役には立たないと思うからだ。

世界最強の商人 (角川文庫)

世界最強の商人 (角川文庫)

 

自己啓発書に書いてある内容は大切じゃない

自己啓発書というのは基本的に、よほどヘボな本でない限り、どれも同じことが書いてある。つまり、実をいうと書かれている内容は全然大切ではないし、人気があったり「名作」と呼ばれるものほど、その根底にあるメッセージは驚くほどに通っているものなのだ。

じゃあ、自己啓発書をいろいろ読むことに意味がないのかというと、まぁ、端的に言えばそうだ。ただし、それは「自己啓発書を読むことに意味がない」という意味ではないことは留意しておくべきだろう。じゃあどうすれば役立つのか、ということは本書の中に書かれているので、その部分については本エントリーではあまり言及しないことにする。ネタバレして万が一にも本の売り上げが落ちてしまうことは、一応出版業界の末端に籍を置く私としても望むところではないからだ。

オグ・マンディーノについて

1923年、アメリカに生まれたオグ・マンディーノは、決して生まれながらの成功者ではなかった。むしろ、その半生は失敗と挫折にまみれたものだった。

まず最初の不幸は大学入学間近のころ、母親が休止して大学進学の夢が断たれたことに始まる。金を稼ぐ必要に駆られたマンディーノは最初、製紙工場で働きはじめ、その後は陸軍航空隊に入隊して第二次世界大戦時にはドイツに爆撃しに行ったりしていた。

戦後はためたお金を使ってニューヨークに部屋を借り、作家になるべく執筆活動を開始するが、どこからも相手にされず断念。仕方なく生命保険のセールスマンになり、結婚をして子どもももうけたが、生活は貧乏でいつしかアルコール中毒になり、妻と離縁して子どもとも離れ離れになる。おそらく、彼はセールスマンをつづけながらも、本当は作家になりたいという願望を捨てきれなかったのだろう。

絶望の淵に立たされた彼はピストルを手に入れて自殺を図るも、なぜか気が変わってふらりと図書館に足を向ける(ここらへんの心理状況がよくわからん)。マンディーノはそこでいわゆる自己啓発書の大家たちの本を読み漁り、一念発起。再び保険会社のセールスマンになると、今度はめざましい成績を上げてどんどん出世し、1965年には自己啓発系の出版社で編集長に就任した。その傍ら、『世界最強の商人』の執筆を開始して1968年に刊行。わずか111ページ余りの短い小説ながら、大ヒット作となった。本人は1996年に死去している。

本書の構成について

本書は自己啓発書であるが、いわゆるほかの多くの自己啓発書と違う点は「ストーリー仕立て」になっている点だ。最近では大ヒットした『嫌われる勇気』なども対話形式の物語帳になってページを進めていくタイプの本だが、本書はより本格的な小説の体を取っている。というわけで、そこのあらすじを紹介。

紀元前何年かのころ、ハフィッドという「世界最強の商人」と呼ばれた男がいた。彼は商業によって莫大な――それこそ一生をかけても使いきれない富をたった一代で築き、多くの商人たちの尊敬を集めていた。

だが、そんなハフィッドももう若くはない。彼は自らの人生の終焉を感じ、もっとも信頼する召使・エラスムスにある秘密を打ち明ける。彼は誰も足を踏み入れさせたことのない塔の一室にエラスムスを招き入れ、ハフィッドが何よりも大切にしている宝物の正体を明かしたのだ。それは、全10巻からなる巻物だった。ハフィッドは「この巻物に書かれている原則をすべて修得した者は、望むすべての富を蓄積する力を持つ」と語る。

そしてハフィッドは語り始める。彼はどのようにしてこの巻物を手に入れたのか、そして、その巻物に何が書かれているのかを。

ここからハフィッドの回顧録が始まり、そして、本書の中盤くらいまで進むと、いよいよ巻物に書かれている内容が始まる――という寸法。本としては、高めるだけ期待感を高めてから本題に入るうまい作りといえる。んで、徒花はこれから10の巻物のうち、9つの巻物に書かれていることをここで書いてしまうわけだが、やっぱりこの内容はそこに至るまでのストーリーを読んでからではないとなかなか身に染みこまないと思うので、やはりこのエントリーだけを読んでも意味がないとは思う。どちらかというと、書くのは個人的な備忘録的な意味を込めているのであしからず。

なお、最後はまたハフィッドの物語に戻るわけだが、最後は「ああ、そうなるわけね」というオチがつく。まぁ、ボリュームは少ないが、一応は歴史スペクタルとして、小説としてもまずまずの終わり方をしているのも特徴的だ。御託はこれくらいにして、以下、綴っていこう。なお、引用部分は厳密には本の内容とは異なり、徒花風にまとめ直した内容であることはご了承いただきたい。

巻物の第1巻 習慣

私は今日から新しい人生を始める。

じつは、成功者と失敗者の間にあるたったひとつの違いは「習慣」によるものだ。良い習慣は成功を導き、人生を良いものにしてくれる。反対に、悪い習慣は失敗を招き、人生を不満足なものに終わらせる。

ならば、私は今日から良い習慣を作り、その奴隷となろう。 

おもしろいのは、「なにが良い習慣なのか?」ということについて言及していない点だ。しかし、おそらく多くの人は自分の日常生活を振り返って、自分の何が「良い習慣」で、なにが「悪い習慣」なのかを判断できるのではないかと思う。むしろ、「こういう習慣を作りなさい」と具体的に言及されてしまうと、その内容は時代の変化にそぐわないものになってしまいかねないから、普遍的な内容にはなり得ない。おそらく、そのことを勘案して具体的に述べていないのだと思う。

なお、有名な『7つの習慣』は内容がかなり難しいので、マンガ版のほうがおススメ。 

まんがでわかる 7つの習慣

まんがでわかる 7つの習慣

 

巻物の第2巻 愛

私は今日という日を心からの愛をもって迎えよう。

なぜなら、愛はいかなる事業においても成功を約束してくれるカギだからだ。愛を最大の武器とすれば、いかなる人もその武器には太刀打ちできない。愛をもってすべての物事、人に接すれば、いつしか障害は失せ、敵はいなくなる。

そしてなによりも大切なことは、自分自身を愛することだ。私は自分の肉体を守るためにその欲求をすべて認めることはせず、節制して心身の健康を保つ。それが、自分自身に対する愛である。

「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」という言葉を言ったのはマザー・テレサだが、愛というのは単に相手に優しく接することではなく、「相手に関心を持つ」ということである。たとえば会話の時、相手の反応も顧みずにひたすら自分の話ばかりをする人は愛に欠けている。

となれば、「自分を愛する」ということの意味合いも変わってくる。これは自分を甘やかすということではなく、自分自身に関心を持つ――すなわち、自分の感情や願望を見つめ直すということにつながるのではないだろうか。

豊かに成功するホ・オポノポノ 愛と感謝のパワーがもたらすビジネスの大転換

豊かに成功するホ・オポノポノ 愛と感謝のパワーがもたらすビジネスの大転換

 

巻物の第3巻 継続

私は成功するまで頑張りぬく。

人生の栄光は旅の最終目的地で待ち受けるものであって、そのためにどれだけの歩数を要するのかを把握することはできない。だから私は、つねにもう一歩先に踏み出そう。それでもダメなら、さらにもう一歩先に踏み出す。私は今日という一日を失敗で終わらせたくないからだ。

成功するための偉大な原理のひとつは「永くやり続けること」である。

ここらへんは第1巻とちょっと重複する内容ではある。なぜなら、習慣というのは継続によって身につけていくものだからだ。まぁ、それがなかなかできないから、多くの人は成功者にはなれないのだろうけれど……。 

30日で人生を変える 「続ける」習慣

30日で人生を変える 「続ける」習慣

 

巻物の第4巻 今

私はこの大自然最大の奇蹟だ。

私は数多く生きる人間のひとりだが、私たちはみんな違っている。私は唯一、かけがえのない存在だ。だからこそ、私が持っている価値――技能、知識、肉体――は、私自身が活用しなければならない。私は最大の資源である私自身を最大限活用するための努力をしよう。

私は、私という資源を「いまこの瞬間」にすべて投入する。

「いま、この瞬間」を大切にするという考え方は個人的に最近注目している「マインドフルネス」の考え方に近しいものがある。実際、瞑想を取り入れることもちょっとだけ本書で触れられている。以下の本はお坊さんが書いた本だが、マインドフルネスの考え方が取り入れられていて、なかなか分かりやすい。

巻物の第5巻 死

私は今日が人生の最期の日だと思って生きよう。

そう考えれば、昨日の不運を嘆いたり、明日の不安に頭を抱えている暇などないことに気付くはずだ。私は昨日のことも考えないし、明日のことも考えない。ただ、今日をどのように生きるかだけを考える。

そして気づくはずだ。お金よりも何よりも「時間」というものが貴重であることに。時間は銀行に預けて保管したり、増やしたりすることはできない。今日やるべきことは必ず今日のうちにやり遂げよう。明日に延ばすことは、絶対にやめよう。

これについては先日書いたエントリーでも触れている。

あと、最近話題になった本では、おそらくこの本も近いことを主張しているのではないかと思う。読んでないけど。

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

 

巻物の第6巻 感情

今日、私は自分の感情の主人となる。

私は日によって喜びや憂鬱や怒りなど、いろいろな感情に支配されてきた。しかし、怒りや憎しみは不幸な結果しか生まない。であれば、私は今日から感情に支配されるのをやめて、感情を支配する立場になろう。怒り、悲しみ、劣等感、自信過剰、卑屈さ、自己満足などを支配下に置こう。

もしも誰かに感情的な対応をされても、気にしないようにしよう。その相手は、まだ自分の感情をコントロールする術を知らないだけなのだ。一方、自分の感情をコントロールできる私は、そうした感情的な対応を我慢できる。明日になれば、相手の感情は変わっているだろう。だから、一度の対応で人を判断してはいけない。

ポイントだと思うのは、感情をあらわにしたり、怒りを感じること自体を否定しているわけではないという部分だ。感情が心の中に現れてしまうのは、人間なんだから仕方がない。しかし、そうした感情が湧いていることを表に出すか出さないか、それをコントロールできないのは問題だ。

私が昔話をしたことがある人は、部下を叱責するときにかならず「よし、怒るぞ」と自分の胸に呼びかけてから怒るという。つまり、自分のなかの怒りの感情をしっかりコントロールしているわけだ。ここらへんの技術は、「アンガーマネジメント」として知られているので気になる人は読んでみてもいいかもしれない。怒りというのは特に、制御が難しい感情だからだ。

アンガーマネジメント 怒らない伝え方

アンガーマネジメント 怒らない伝え方

 

あと、この本もけっこうなロングセラー品で、売れ続けている。

巻物の第7巻 笑い

私は世間を笑おう。

あらゆる生物の中で、笑うことができるのは人間だけだ。笑いは、お金も必要なくいつでも使える私の大きな財産のひとつだ。笑えば消化も良くなるし、命も長らえる。そして、世間を笑い、自分自身を笑おう。自分を重要な資源だと考えている人間なんて、滑稽だ。

それでも、ときにはどうしても笑えないときがある。そんなときは、この魔法の言葉を唱えよう。

「これもまた過ぎ去っていく」

どんな悩みも、貧乏も、辛い境遇も、不運も、悲しみも、100年後まで続くだろうか? 私が死んだ後も、そうした物事は変わらずあなたを苦しめるものだろうか?

笑うと、すべてのものは適正な大きさに引き戻されていく。過大評価していた物事が実はたいしたことがないと気づくし、とんでもない不幸だと思っていた物事もじつはたいしたことがないと気づく。笑うことが出来さえすれば、私は決して貧乏、不幸にはならないだろう。

笑いが実際に健康にポジティブな影響を与えるということは昔から研究がされていて、おそらくそれはその通りなのだろう。そして本書の主張でおもしろいのは、笑いが単に辛さを拭い去ってくれるだけではなく、自信過剰や慢心などの感情をも引き下げてくれると主張している点だ。ここまでの内容を一気に吹き飛ばすような項目だが、たしかに、成功したい一心で頑張っている姿というのは客観的に見ればなるほど滑稽であるし、「自分は滑稽なことをしている」と認識しているのは大切かもしれない

笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)

笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)

 

巻物の第8巻 目標

今日、私は自分の価値を100倍にする。

私は麦の一粒に似ている。そのまま豚のえさになることもあるし、パンに焼かれることもあるし、畑にまかれて100倍以上の麦を生むこともある。しかし、麦と私には大きな違いがある。麦は自分で運命を選べないが、私は自分で自分の運命を選べるのだ。

だから、私は必ず自分の人生に目標を立てる。私は豚のえさにはなりたくないから、畑にまかれて新たに麦を生み出す存在になるという目標を立てるのだ。そして、私はその時、決して低すぎる目標を立てるという失態は犯さない。なぜなら、月を狙ってやりを投げて鷲に当たるほうが、鷲を狙って石に当たるよりもずっといいからだ。

そして私は自分の目標を広く人々に公言する。言葉に出して宣言すると、私に逃げ道はなくなるし、笑う人が出るかもしれない。しかし、言葉にすることで私の意志は強靭になり、かならず味方になる人が現れるだろう。そして私は、ある目標が達成されたらすぐに次の目標を立て、自分の価値を100倍にしていく。

どこの本に書いてあったか忘れたが、こんなことが書いてあった。うろ覚えなので、細かい部分は間違っているかもしれないが、大綱は間違ってないと思う。

「人間にとって一番幸福を感じるのは、目標達成のために一生懸命になっているときと、目標を達成した瞬間だ。目標を達成してしまうと、人は不幸になる。だから、常に目標を掲げてそれにまい進する状態を維持できている人こそが幸福なのである」

たとえば、開始直後からレベル99で、最強の武器と防具を装備していて、所持金がマックスで、魔王が簡単に倒せるドラクエなんて、誰も買わないだろう。私はコツコツとレベル上げするのが結構好きなのだが、ゲームの中でさえ、じつはみんな苦労をしたがっているのだ。この理論にしたがって書かれた自己啓発本が以下の本である。まだ読んでいる途中だが、一応紹介しておく。

巻物の第9巻 行動

私は今、行動する。

どんなに立派な目標を立てても、行動しなければ意味がない。どんな詳細な地図も、自動的に人を目的地には運んでくれないのと同じだ。

行動を阻害するのは恐怖だ。そして、どんなに勇敢な人でも、心の奥底には恐怖があることを私は知っている。彼らには恐怖がないわけではなく、恐怖を乗り越えているからこそ「勇敢」と称されるのだ。そして、恐怖心を克服するためには、ためらわず「すぐに行動する」以外に道はない。

私は今、行動する。私は今、行動する。私は今、行動する。私は今、行動する。

この言葉を何度も何度も繰り返そう。これが本能的な反応になるまで繰り返そう。世間が評価するのは私の考えではなく行動だ。失敗者が恐れて立ち止まっている間に、私は行動して成功を勝ち取ってしまおう。

これは第5巻とほとんど同じだし、繰り返しだ。しかし、とにかく大事なことだから2回いったのだろう。私がこのエントリーを読んでもあまり意味がないだろうといった意味は、ここにあるし、自己啓発書を読み漁っても意味がないといった意味もここにある。自己啓発書をいくら読んでも、行動に移さない者には成功は訪れない。

おわりに

私は仕事をするうえで、「今後3年間で発行部数3万部を超える本を3冊以上作る」という目標を掲げている。これは出版不況のなかではけっこう難しい目標だ。でも、決して不可能ではない。それにやっぱり目標を立てていないと、なにを目指して仕事をしているのかわからなくなるから、やっぱり大切だ。

あと個人的には、目標はできるだけ具体的に立てたほうがいい。というのも、私は上記の目標を立てるようになってから、「この本は3万部を超える内容か?」というのを意識しながら仕事をするようになった。もちろん、だからといって作った本が3万部を超えるようになるわけではないが、感覚がわかるようになる。

つまり、「この本が8000部くらいの売れ行きだから、この本と同じレベルではダメなんだな」とか、そういう感覚が身に付くようになってくるのだ。幻冬舎見城徹氏は「一度10万部を超える本を作ったことがある人間は、何度でも10万部を超える本を作れる」といっていたが、それも何となく納得できる。一度体験すると、「10万部を超える本の感覚」がきっと身につくのだ。だから、売る前から「この本はどのくらい売れそうか」と予測ができるようになるし、そうすればそれを10万部売れる本にできるかということもわかるようになるのだろう。

これはたぶん、ブログでも同じだと思う。一度、10万アクセスを超える記事を1つ作ることができると、「どういう記事が10万アクセスを集めるのか」が感覚でわかるようになるのだ。こうして、成功者はさらに成功していくのではないだろうか。そしてみんな、その最初の第一歩を経験するためにいろいろと苦労している。私もそんな状況でもがいているひとりなのだ。がんばろ。

それでは、お粗末さまでした。