『幸せになる明晰夢の見方』(ディラン・ドゥッチロほか著)のレビュー
明晰夢というのをご存じでしょうか。
「これは夢だ」と、夢を見ている本人が自覚しながら見る夢です。
「明晰(めいせき)」というのは「はっきりしている」という意味ですね。
「頭脳明晰」などと使われます。
(ここでいう「夢」とは、将来の夢とかではなく、夜寝ているときに見る夢のことを指します)
ふつう、夢を見ている人は、「いま、自分は夢を見ている」とは気づけません。
起きて初めて「あ、夢だったのか」と気づくわけですね。
明晰夢はそんな当たり前を打ち砕き、「なんでも叶う夢の世界で好きなことやろうぜ」という欲深い人間が考え出した概念であります。
そして本書は、そんな欲深い人間のために書かれた本です。
これに比べると、「株式投資で億万長者」とか「愛され女になるコスメテク」なんて、まだまだかわいいというか、他愛のない欲望であるように感じられます。
明晰夢を見方を学ぶというのは、株式投資とか愛されメイクのやり方を学ぶよりもよほど不毛で、バカバカしいものです。
夢のなかでいくら自分の自由なことができたって、それは現実世界では毛ほどの役にも立たない、まったく影響を及ぼさないわけです。
こんな本を好き好んで読む人間の気がしれません。
さて、この本はアメリカの3人のライターさんがさまざまな文献をベースに、明晰夢の見方のメソッドをオリジナルに編み出したものをまとめた本です。
心理学の先生とか、脳科学の先生が書いたものではないので、科学的エビデンスがどれくらいあるのかは、よくわかりません。
ただ、私自身がこの本の内容をちょっとやてみたところ、変化がありました。
私はすごく寝付きがよい人間で、布団にはいると5分もかからずに寝てしまい、築くと朝になっている毎日です。
夢も、たぶん見ているのでしょうが、まったく覚えていないタイプです。
でも、本書の内容を実践したところ、残念ながらまだ明晰夢は見られていないのですが、夢の内容をすごく意識できるようになりました。
起きたあと、自分がどんな夢を見ていたか、それ以前よりもはるかに認識できるようになったのです。
もう少し続けていれば、明晰夢が見られるかもしれません。
この本では明晰夢を見るための方法として、夢日記をつけるとか、そういうテクニカルなことを教えてくれています。
でも、私がやったことはシンプルです。
「これは夢かな?」
と、起きている間にちょいちょい考える、ということです。
と同時に、自分の左の手のひらに指を押し付けるということをやってみました。
これは本書の中では「リアリティチェック」とよばれています。
マンガとかだと、信じられないことが起きたときにほっぺたをつねる行為をよくやりますよね。
夢だったらつねっても痛みを感じないから、痛みを感じるのであれば夢であると認識できるわけです。
左手のひらに指を押し付けるのもこれと同じで、夢だったら、指が突き抜けるそうです。
だから、起きているときからちょいちょいこの行為をやっていると、いざ夢を見たときにも同じ行為をして、夢かどうか確認しやすくなるということです。
これってけっこう、逆説的な話でおもしろいと思いました。
夢を夢であると認識するためには、現実の世界で「これは夢ではない」ということを認識する癖をつけることが大切なのです。
私たちがふだん夢を見て、それが夢であると認識できていないのであれば、私たちは現実生活をしているときに「これは現実である」と認識していないということでもあります。
現実すら認識できていないのに、夢を認識できるはずがありません。
たとえば、私は「いつか自分は死ぬ」ということをリアリティをもって考えることができません。
でも現実的には、生きている人間である以上、いつか必ず死んでしまうのです。
なお、本書で述べられていることですが、夢のことを「これは夢だ」と認識できても、その夢のなかで思うようなことを起こせるかどうかは、また別の問題です。
たとえば、空を飛ぶという行為を夢のなかでしようとしたとき、すごく大事になるのが「これは夢だから、私は空を飛べる」と"本気で”思うことです。
「夢とは言え、空を飛ぶなんてできるだろうか」という疑念があると、たとえ夢の中であっても空を飛ぶことはできません。
本当はなんでもできるのに、私たち自身の意識がそれをやめさせてしまうのです。
じつはこれは現実世界でも起きていることだと自己啓発の世界ではいわれていて、こういうのを「メンタルブロック」といいます。
仕事にしろ恋愛にしろ、現実は夢ほどなんでも思いどおりになるわけではないけれど、「自分はモテる」「自分はこの仕事を成功させられる」と信じ込まないと、その結果を手に入れることはできない、というロジックですね。
もしかすると、明晰夢を見て、明晰夢のなかで自由に行動できるようになるということは、こうした自分の意識を自在にコントロールするための訓練になりうるかもしれません。
もちろんそれが、現実世界でなにか役に立つかどうかは、私にはわかりませんが。
ただ、夢のなかの世界ですら、「自分にはできない」「どうせ無理だ」と思ってしまい、夢を楽しめないのはなんだか損な気もします。
明晰夢は脳が休まらなくて精神的に危険とか、そういうこともネットでは書かれていたりするので、のめり込み過ぎには注意ですが、試してみるのはおもしろいかもしれません。
後記
『無能なナナ』を見ました。
LINEマンガでも読んでいたのですが、けっこうおもしろいです。
舞台は、さまざまな特殊能力を持つ少年少女たちがあつめられた孤島です。
彼らは「人類の敵」とよばれる存在に対抗するため、共同生活をしながら日々鍛錬にいそしんでいます。
そんななか、「人の心が読める」という特殊能力を持った柊ナナという少女が新たに転向してくる、という物語です。
冒頭こそ、よくある異能力バトルマンガかと読者を錯覚させるように話が進んでいきますが、むしろこの作品は推理サスペンスです。
これ以上はネタバレになるので、気になる方はぜひ、とりあえずアニメの第1話を見てみてください。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。