年末年始はコレを読んどけアワード2020 ~小説・人文・ビジネス・実用~
今年は新型コロナの影響で私の仕事も在宅になったりして、わりと本を読む時間が増えました。
2020年12月7日時点で、今年読んだ本は259冊。最多は5月で、41冊も読んでいました。
なかにはマンガも含まれるのですが、今年も年末年始のお休みのときにぜひ読んでいただきたい本を10冊ご紹介していきます。
では始めましょう。
もくじ
- 1.『書くことについて』(スティーブン・キング/小学館)
- 2.『PIXAR 世界一のアニメション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー/文響社)
- 3.『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智/KADOKAWA)
- 4.『13歳からのアート思考』(末永幸歩/ダイヤモンド社)
- 5.『三体』(劉 慈欣/早川書房)
- 6.『13歳からの世界征服』(中田考/百万年書房)
- 7.『メインテーマは殺人』(アンソニー・ホロヴィッツ/早川書房)
- 8.『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(山下泰平/柏書房)
- 9.『壱人両名:江戸の知られざる二重身分』(尾脇秀和/NHK出版)
- 10.『高校生からわかる「資本論」』(池上彰/ホーム社)
- ベスト・オブ・ベストは……
1.『書くことについて』(スティーブン・キング/小学館)
現代を代表するベストセラー作家のひとり、スティーブン・キングが「小説家になる方法」をあけすけに語った自伝的な一冊です。
もしも小説家になりたい、という方がいれば、この本は一度は読んでおくべきでしょう。
そもそも小説とはなんなのか、人々から支持される小説とはどんなものかということがすっごくわかりやすく語られています。
大事なのは「わかりやすさ」です。難しい言葉を使わない。文章は短くする。そういう基本的なルールを守りましょう。
今回はあえて選びませんでしたが、こちらの『ベストセラーコード』もたいへん参考になります。
こちらはアルゴリズムを駆使して、売れている小説によく使われているテーマや単語などを分析した一冊です。アメリカの小説ばかりなので直接的な参考にはならないかもしれませんが、じつは結論はキングの『書くことについて』と似ています。
また、小説家を目指すということであれば、森博嗣さんの新書もなかなか刺激的でおもしろいので一読の価値があります。小説家になるに当たって、「役に立つか」どうかはわかりませんが。
2.『PIXAR 世界一のアニメション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー/文響社)
世界を代表するアニメーション制作会社「PIXAR(ピクサー)」の元財務責任者が、どんな紆余曲折を経て現在のピクサーが誕生したのかを語るビジネス書です。
とにかくレビーさんがいろいろたいへんな目にあうので、読んでいると否が応でも著者に感情移入してしまいます。基本的に自分勝手でわがままなスティーブ・ジョブズと、クリエイター陣との軋轢に悩まされ、最後の最後まで裏方に徹してがんばります。
あの『トイ・ストーリー』がどれだけの苦労を経て、世に生み出されてたのか。へたなフィクションよりぜんぜんおもしろい物語です。
こうしたビジネス系の物語はちょこちょこおもしろいものがあります。今年読んだものののなかでは、『コンテナ物語』や『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』もまあまあおもしろかったですね。
3.『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智/KADOKAWA)
ド直球のホラー小説です。死ぬほど怖いです。一人暮らしの人は読まないほうがいいでしょう。マジで怖いので。ひたすら怖いです。それ以上の説明は不要でしょう。
「怖い」について知りたい人は、こちらも読んでみましょう。
4.『13歳からのアート思考』(末永幸歩/ダイヤモンド社)
美術には興味がない人でも、これはぜひ一度は読んでほしい一冊です。
世間評価されている「名画」には、名画と言われるだけの理由があります。それを子どもでもわかるように、非常に論理的に、明快に解説してくれる本です。
ピカソはなにがすごいといわれているのか、なぜ現代芸術は絵の具を塗りたくっただけのようなものが評価されたりするのか、その意味がよくわかります。
もう一冊、どちらを選ぼうかすっごく悩んだのが、こちらの『絵を見る技術』です。
この本もめちゃくちゃおもしろいです。
名画が名画たる所以を説明してくれるのは『13歳からのアート思考』と同じなのですが、 これはどちらかというと古典的名画の美しさを理路整然と解説している本なので、ちょっととっつきにくいかもしれません。しかしこちらも最高におもしろいです。
5.『三体』(劉 慈欣/早川書房)
これはもう、文句なくおもしろい超傑作SFです。なかなかのボリュームなのですが、読み始めると止まらなくなります。これこそ正月に読むべき本かもしれません。
中国の歴史や宇宙物理学などの知識が求められる部分が出てきますが、けっこう丁寧に説明してくれますし、物語全体の進み方がとてもうまいのでグイグイ惹きつけられていきます。
6.『13歳からの世界征服』(中田考/百万年書房)
今年読んだなかでブッチギリの、ぶっ飛んだ怪作です。私はこういう本が大好きです。
自らムスリムになったイスラム教法学者が、中学生くらいが悩みそうなことの解決策を提示していくいわゆる人生相談的な本なのですが、イスラムの教えに基づいて導かれるロジックは、日本人には奇々怪々、理解を超越したところにあります。
ただ、よくよく読んでみると、実は唯一神だけを大事にしてそれ以外のものを軽視するという考え方は、ある意味で日本人にとってすごく生きやすくなる指針となりうるのかもしれません。読むとムスリムになりたくなるかもしれませんが、そのあたりは自己責任で。
7.『メインテーマは殺人』(アンソニー・ホロヴィッツ/早川書房)
今年読んだなかで一番おもしろかったミステリーです。
特筆するべきは、探偵役であるホーソーンの嫌な奴っぷりです。名探偵は奇人変人の宝庫ですが、ホーソーンの場合は「まじでこんなやつと仕事で付き合わなくなったら嫌だな」と感じさせるような、リアリティのある嫌な奴なのです。でもそれがいい。
肝心のトリックとストーリーラインはミステリーの黄金律に従い、キッチリカッチリ最後に落としてくれます。不完全燃焼感はなし! すべての伏線を回収し、謎をスッキリ解いてくれる爽快な一冊でした。
8.『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(山下泰平/柏書房)
タイトルだけでインパクト抜群ですが、タイトルに負けないくらい中身もギュギュッと凝縮された濃い~一冊です。私はこういう、日常生活でとくに役に立たないけれどムダに凝った本が好きです。
著者自身のスタンスがふざけたりしているわけではないのですが、とかく明治時代のエンタメ小説の主人公たちが何でもかんでも暴力と勢いだけで解決しようとしてしまうので、読んでておかしみが出てきます。
ちなみに、著者の山下さんははてなブロガーであり、新書も一冊出しています。
こちらは実用書に寄せていますが、やはり明治の人たちのぶっ飛びぶりがいかんなく表現されていて趣のある一冊となっています。
9.『壱人両名:江戸の知られざる二重身分』(尾脇秀和/NHK出版)
江戸時代というと士農工商と身分がはっきりと別れていて、窮屈な世の中だったように感じられるかもしれないけれど、じつは身分というのは現代の私たちがカンガよりも柔軟で、いい加減なものだったんだよということを伝える一冊です。
この本でおもしろいのは、日本は昔から「本音と建前」をうまく使いわけて社会を形成していたというところです。いちおうルールは決めるけれど、それは場合によっては守らなくても良かったりする。
そして、彼らは時と場合に応じてさまざまな名前と身分を使い分けていました。副業が解禁され、働き方が多様化して、ネットとリアルの2つの社会を生きている私たちにはなんだか馴染みがあるルールに思えます。
10.『高校生からわかる「資本論」』(池上彰/ホーム社)
今更ながらちゃんと資本論の内容を理解しようといくつか解説本を読んだなかで、抜群にわかりやすくてなるほどなあと思ったのがこちらの一冊でした。さすが池上先生。
なぜ、格差は縮まらないのか。それは資本主義が構造上、そうなるべくしてそうなるようなシステムになっているからなのです。
いわゆる労働者、サラリーマンこそ、資本論の内容は理解しておくべきなんじゃないでしょうか。
ベスト・オブ・ベストは……
これでしょう。
これは本当にいい本でした。
そして、この本が売れるのはなんだか嬉しい気持ちもあります。
それでは、良いお年を。