本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『戦国自衛隊』(半村良・著)のレビュー

f:id:Ada_bana:20201123224944j:plain

新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)

新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)

 

 

1974年に発表された、たびたび映像化や舞台化などもされた、日本を代表する歴史SFの名作ですね。

 

戦国自衛隊1549

戦国自衛隊1549

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
戦国自衛隊

戦国自衛隊

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

文庫本を買ってみてまずびっくりしたのは、本の薄さでした。

「解説」を抜かすと165ページで終わり。

とにかくテンポが早いです。

状況説明が淡々としており、いつのまにか数年くらいの時間が経っていたりします。

といって、読者が状況についていけなくなるようなこともない。

自衛隊や日本の歴史についてしっかり調べて書かれているので、突拍子もない物語ながらリアリティが付け加えられています。

あ、ちなみにWikipediaのページには普通にネタバレが書かれているので気をつけてください。

 

近代兵器を装備した自衛隊が、日本海沿岸一帯で大演習を展開していた。新潟県富山県の県境に陸上自衛隊から第1師団、第12師団、そして海上自衛隊が集結して臨時の補給施設が設けられたが、そのうちの30名あまりを突如、「時震」が襲った。

次の瞬間、伊庭義明(いば よしあき)・三等陸尉を中心とするその一団は、携えていた大量の補給物資や近代兵器とともに戦国時代へタイムスリップ。まもなく、戦国武将の1人である長尾景虎(現実の歴史では、後の上杉謙信)と邂逅した伊庭たちは、合戦三昧の世の中へ組み込まれていく。

やがて伊庭たちは、この戦国時代と彼らが知る歴史とには微妙なズレが生じていることや、斎藤道三織田信長が存在していないことを知る。伊庭は景虎と手を組み、現代の兵器と戦術を用いることで戦国時代を勝ち続け、川中島の戦いを経て天下統一すら間近にするが、「我々が知る歴史と異なる歴史を持つこの世界における自らの役割は何か?」という疑問を拭えずにいた。

 

これは物語が始まって中盤くらいくらいでわかることですが、じつは自衛隊員たちが体験したのは単なるタイムトラベルではなく、パラレルワールドへの転移だったのです。

今風のマンガだったら、これら30人くらいの自衛隊員は仲間割れを起こしたり、じつは黒幕がいるみたいな展開にあるかもしれませんが、本作の場合はタイムトラベルという未曾有の異常事態に対しても自衛隊員はさすが冷静で、指揮系統に乱れが生じることもなく、バッサバッサと敵をなぎ倒していきます。

唯一、近代兵器を使っても苦戦させられたのは武田信玄でしょうか。武田信玄、強すぎ。

 

歴史ものというとどうしても登場人物が多くなり、しかも名前がコロコロ変わるし、ライトノベルみたいに個性的な名前ばかりというわけでもないので、だんだんだれがだれだかわからなくなってくるものだと思うのですが、『戦国自衛隊』の場合は店舗が良いせいか、それともその辺がうまく割愛されているのか、あまり混乱を来さないで物語を読み勧めることができましたね。

 

とちゅう、これはSFなのかなんなのかわからなくなりましたが、「大垣」のところで一気にSFに引き戻されました。

 

「しかしそれにしてもおかしいですね。美濃の土岐家の由緒をくわしく訊ねたんですが、僕らの世界にあった土岐氏の歴史とほとんど同じなんですよ。応仁の乱からの動乱で室町幕府の権威が失われると、それにともなって貴族と僧の経済を支えていていた制度も崩壊しちまうんです。京の公家の三条西家というのがこの美濃に荘園を持っていて、実際にその経営に当たっていたのが守護職の土岐家なんです。土岐家は清和源氏出だからそのつながりはほとんど武家と公家の関係のオリジナル・パターンと言っていいんです。そして守護代が斎藤氏なんですが、どうもこの世界の斎藤氏はまるで威勢が悪いんです。どうやら僕らの世界で有名な、あの油売りの松波庄九郎という男は、この世界では出世しそこなったんでしょうね。したがって斎藤道三は出現せず、その道三と深くつながるはずの織田信長も、歴史のプログラムからカットされてしまったんでしょう」

可能は聞かれるともなしに、ひとりで好きな歴史について喋っていた。が、義明はその言葉の中にハッとするものを感じた。

「すると可能は斎藤道三のほうが、歴史のプログラムの上では優位にあったというのか」

「いや、たとえですけれど……でも多分そうでしょう。だって、信長より道三のほうがずっと年上だし、歴史のファクターとして登場するのも先きなんですよ。僕らは歴史というと逆から見るしかないけど、実際には古い順に並んでいるわけです。時代の変化の過程は無限の可能性の中から、それぞれのファクターがただひとつの決定を行い、その決定を新しいファクターとして次の可能性が展開されるわけです」

「だった有名な乞食になった織田信長がいてもいいし、名家に生まれた木下藤吉郎がいたったいいはずじゃないか」

「それもそうですね。でも、それはあくまで原則論的に議論を進めた場合であって、こんな風にいろいろな歴史、つまり宇宙が多元であるなら、それは隣接した別の歴史の影響だって受けるのかも知れません。そうでなければな、何かとても大きなもの……たとえば時間とか空間とかを支配する、第五次元的な力がひとつの目的、あるいは意志のようなものを持ってずっと先きの先までひとつのプログラムを作ってしまっているということだってあり得ることですよ」

「すると何か、加納のいう無限の可能性をもつひとつのファクターが、任意にただひとつの決定をして行くという考え方は見せかけのことになるわけか」

「そうです。僕らはときどきそれを宿命という呼び方で意識するじゃないですか。この世界ではなぜか松波庄九郎を斎藤道三にはさせない仕組みになっていたんです。(略

 

なぜ、自衛隊員たちは突如として戦国時代に送り飛ばされてしまったのか。

歴史という第五次元的な力が彼らに何を求めていたのかという答えに答えは最後に明らかにされます。

サクッと読めて楽しかったので、気になる方はぜひ。

 

後記

最近LINEマンガで読んでた作品をザザッとまとめました。

 

 

いま小栗旬星野源で実写映画化されていますね。

未解決事件として有名なグリコ森永事件をベースにした社会派ミステリーです。

 

 

 

 オンラインゲームのトラブルによって全身クマ装備で異世界に送られてしまったゲーマーの女の子の物語です。

もはやこの種の物語設定は様式美のレベルですね。

 

 

 『動物のお医者さん』が代表作である大ベテラン・佐々木倫子先生による北海道の新人アナウンサーを主役にしたドタバタお仕事コメディ。

佐々木先生のいつものノリです。好きです。

 

 

突如学校に怪物が現れて閉じ込められてしまうのですが、この怪物、サイズの割には少食のようで、1日ひとり食べれば満足する模様。

そこで、毎日一人ずつ怪物にエサを与えることにした生徒たちのサバイバルホラーです。といっても、物語が始まった時点で7人くらいしか残っていなかったので、これどうやって展開するんだろうなーと不思議です。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。