本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『カッコーの歌』(フランシス・ハーディング著)のレビュー

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すばらしい物語に国境はありませんが、ことファンタジーというジャンルで言えば、ミステリーに並んで良質な作品がどんどん出てくるのはイギリスですね。

ちょっと挙げてみましたが、有名すぎる作品ばかりでキリがありません。

 

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)

 
ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

ガリヴァー旅行記 (岩波文庫)

 
ドリトル先生ものがたり 全13冊セット 美装ケース入り (岩波少年文庫)
 
ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)

ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)

  • 作者:C.S.ルイス
  • 発売日: 2000/06/16
  • メディア: ペーパーバック
 
クリスマス・キャロル (新潮文庫)

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

 

 

ほかにもピーター・ラビットやくまのプーさんパディントンなどキャラクターの宝庫です。

日本もそうですが、島国だとエンタメやキャラクターコンテンツが生まれやすい土壌があったりするのでしょうか。

 

さて今回紹介するこちらの本も、ファンタジー大国イギリスが生んだ小説家によるダーク・ファンタジーです。

 

カッコーの歌

カッコーの歌

 

 

作品の数はさほど多くありません。

調べた限りでは、邦訳されているのは『影を呑んだ少女』『嘘の木』と本書の3冊です。どれから読もうかちょっと悩んだのですが、なんとなくあらすじを読んでこちらからチャレンジしてみました。

 

影を呑んだ少女

影を呑んだ少女

 
嘘の木

嘘の木

 

 

あらすじはこんな感じです。

「あと七日」笑い声と共に言葉が聞こえる。 わたしは……わたしはトリス。池に落ちて記憶を失ったらしい。母、父、そして妹ペン。ペンはわたしをきらっている、わたしが偽者だと言う。破りとられた日記帳のページ、異常な食欲、恐ろしい記憶。そして耳もとでささやく声。「あと六日」。わたしに何が起きているの? 大評判となった『嘘の木』の著者が放つ、ファンタジーの傑作。英国幻想文学大賞受賞、カーネギー賞最終候補作。

 

これを読んでもなんとなくわかるように、この物語は記憶失った少女による7日間の物語です。

記憶を取り戻し、自分が何者であるかを知り、そして本当の自分を奪還する物語なのです。

といっても、最初の3日間くらいはびっくりするくらいあっという間に過ぎ去ります。

冒頭は主人公がひたすら悩み、しゃべる人形たちや自分の異常な食欲に悩むさまが続きます。

最初は若干まどろっこしい感じもしますが、中盤になって少女が自分の正体に気づき、いろいろと動き始めると物語のペースは一気にトップギアくらいに入り、加速していきます。

そこから一気に読める感じですね。

 

これは小説全般に関して言えることだと思うのですが、小説というのはマニュアル車に似ています。

最初はローギアからゆっくり発進して、セカンド、サード、トップとギアチェンジしていきます。

ただし、ギアチェンジするタイミングは著者や作品によってまちまちです。

最初からトップギアで始まる小説もあるし、ローギアが半分くらいまで続くものもあります。

読者としてはギアチェンジした瞬間がけっこう快感で、そこで弾みがつくといわゆる「一気読み必至」な状態になります。

うまい小説というのはこのギアチェンジのタイミングが絶妙で、読者が飽きそうなタイミングを見計らって絶妙なタイミングでギアを変えてくるわけです。

もちろん、セカンドからまたローギアに戻したりすることもあります。

 

この小説の場合、ちょっと序盤のローギア局面が多いような印象はありました。

冒頭、自分が何者なのかわからずに混乱する主人公・トリスの描写がけっこう続きます。

ギアが変わるのは、トリスが自分の正体を知り、行動を起こすようになってからです。

問題の原因が一人の魔法使いにあることがわかり、彼女は異形の者たち(ビサイダー)が住まう下腹界(アンダーベリー)へと向かうのです。

そのときの、アンダーベリーに入るときにどうすればいいか。

無事に戻ってくるためには雄鶏を袋に入れておき、入り口のところにナイフを突き立てておく必要があるのです。

こういう設定、いかにもファンタジーっぽいですよね。

好きです。こういうの。

 

カバーは暗めですが、話の進行自体は中盤以降、盛り上がってきてグイグイ読めます。

フランシス・ハーディングの別の本も読んでみようと思えました。

ファンタジー好きの人はぜひ。

 

カッコーの歌

カッコーの歌

 

 

後記

『どるから』がおもしろいです。

 

どるから (1) (バンブーコミックス)

どるから (1) (バンブーコミックス)

 

 

最初はちょっとエッチなシーンがある空手女子のマンガかなーと思ったのですが、これがまったく違うんですね。

あらすじはこんな感じです。

脱税の罪で実刑判決を受けたK-1創始者石井館長。1年間の刑期を終え静岡刑務所を出所した石井館長だったが、その直後、トラックにはねられ即死。そしてその魂はなんと女子高生・一ノ瀬ケイに乗り移ってしまう!K-1創世記から20年――格闘界のフィクサー石井和義が女子高生に憑依(!?)し、もう一度「空手」に向き合う青春浪漫ストーリー。

女子高生に乗り移ったオジサンが、存亡の危機にある街の空手道場の経営を立て直そうというストーリーなのですが、これがけっこう本格的なマーケティング用語とかしっかりとしたプロモーション戦略にそったものになっていて、格闘マンガと言うよりもビジネスマンガとしての側面が強いのです。

これはちょっと意外な展開で、引き込まれました。

ちなみに、私は格闘技に疎いので知らなかったのですが、石井館長というのは著者の一人としてしっかり名前が出ているK-1創始者石井和義さんで、石井さんは実際に脱税の容疑で2007~2008年まで収監されていましたとさ。

LINEマンガで無料で読めるから、暇だったらぜひ。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。