本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

FINAL FANTASY XVの残念なシナリオはどうすればよかったのか

GWで「FINAL FANTASY XV」をクリアしました。

 

 

端的に言えば

「システムはおもしろい。世界観もいい。キャラクターは微妙。シナリオはクソ」

なゲームでしたね。

 

大雑把な物語としては、ルシスという国の王子様・ノクティスが、他国のお姫様との結婚式のためにボディガード兼友人の3人のお供と一緒に高級車に乗ってでかけ、なぜかモンスター共をなぎ倒していく物語です。

ただし、旅を始めた割と冒頭のところで、ルシスは停戦中だったニフルハイム帝国の突然の侵略を受けます。

それによってルシスの父が死んでしまったため、ノクティスは自分が王になるために各地に点在する王の墓をめぐり「王家の力」を集めて帝国を倒すことが目的になりました。

 

ちなみに今回はゲームのシナリオ上のネタバレを含むかもしれないので、今後プレイするかもしれない人は気をつけてください。

 

バトルシステム

まずシステムです。

今回はターン制バトルではなく、アクションゲームとなっています。

オープンワールド形式で、フィールド上にいるモンスターと一定距離まで近づくとバトルになります。

敵の攻撃をガード(回避)しつつ、武器や魔法で攻撃を加えていきます。

本作のバトルで勝つために重要なのは「バックアタック(背面攻撃)」「ガード&パリィ(反撃)」、それとシフトです。

シフトは主人公だけが使える特殊能力みたいなもので、平たくいうと「瞬間移動」。

アクションゲームだけどそれほど複雑すぎるわけでもなく、適度な爽快感もあるので、バトル自体は楽しいです。

ただ、「演出面」では物足りないところもありました。

今回はリアリティを追求したのか、アクションゲームでよくあるド派手なエフェクトみたいなものがなく、仲間の必殺技っぽいものも正直、地味です。

このアクションゲームのようなバトルシステムの流れは「FFⅦリメイク」にも引き継がれていますね。

 

ファイナルファンタジーVII リメイク - PS4

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今回は「魔法」の扱いも特殊です。

本作では魔法は自分で精製してつくり、消費していくものになっています。

フィールドの各地に「ファイア」「ブリザド」「サンダー」の魔力供給源があり、そこで魔力をチャージしておいて、発動させます。

魔法はけっこう強力な攻撃手段なので、フル活用していきます。(ただし、魔法は自分や仲間もダメージを受けます)

 

ほかにも「キャンプや宿泊施設で泊まらないと経験値が精算されない」「料理で一時的なバフ効果が発生する」などなど、これまでのFFシリーズにはないシステムが用意されています。

FFに限らず、シリーズ物のゲームは新作になるたびに新しいシステムを導入していきますが、今回のバトルシステム・成長システムはなかなか楽しめました。

 

エストが多い

 

本作はサブクエストがめちゃくちゃ多いです。

モンスターの討伐依頼などをこなしていきます。

このゲーム、いろいろなところでけっこうお金が必要になるのですが、普通にモンスターを倒してもお金が手に入らないので、金を稼ぐ方法としては、このクエストの報奨金がメインになります。

メインクエストとサブクエストに分かれていて、メインクエストだけやっていると、多分びっくりするくらいすぐにエンディングになります。

その代わり、サブクエストはめちゃくちゃ多く、本筋とは関係ないダンジョンなども各地にあるので、その当たりをやり込んでいくとかなり時間がかかる感じ。

過去の作品と比べると、イメージ的にはFF12と近いですね。

 

ただし、物語が中盤に入り、別の大陸に移ると一気に自由度が低くなります。

というよりも、ほとんど寄り道的要素がなくなり、エンディングまで一本道になってしまいます。

とくに終盤、せっかく別の大陸に行ったんだからそっちもレガリアで自由に移動できるのかと思ったのですが、それができないのはちょっと残念なポイントでした。

あと、テネブラエというヴェネチアっぽい街も、なぜかやたら迷路になっていて、生きたいところになかなかいけません。

これもなかなかフラストレーションが溜まるところでした。

 

ホラゲ要素はやめてくれ

 

私はホラーゲームが苦手なので絶対やらないのですが、じつはFF15ではちょっとしたホラゲ要素がちょいちょい出てきます。

まず、ゲーム内では昼と夜の概念があり、夜になると強いモンスター(シガイ)がウヨウヨ出てきます。

しかも街を離れると本当に真っ暗で、頼りになるのは各キャラクターが胸に身に着けているランプだけ。

そのランプもてらせる範囲は非常に狭く、しかもシガイはなにもないところからいきなり出てくる仕様なので、けっこうびっくりします。

ただ、これも草原など開けたフィールドならまだいいのですが、問題はダンジョン。

暗くて狭い通路を進んでいくわけですが、急にゴブリンやらインプやらに囲まれたりするのでかなりびっくりしてしまいます。

そのうえ、狭いところはキャラクター視点になり、あからさまにプレイヤードを驚かせるような演出もあります。

これは勘弁していただきたかった……。

 

極めつけは終盤、帝国内部に入っていくところです。

ここで、主人公は仲間たちと離れ離れになって単独行動を余儀なくされます。

しかも、武器をまともに使えなくなってしまうのです。

暗くて狭い通路をたった一人で、しかもろくに戦えない状態で進まざるを得ないというのは、心臓によくありません。

(いちおう、この部分では救済措置として別ルートもあります)

 

まさかFFでこんなに怖い思いをするとは……。

これも新しい取組の一環だと思うのですが、これは本当にこのゲームでいちばん嫌なところでした。そういうのはFFに求めてない。。。

 

世界観は嫌いじゃない

 

さて、そのようにホラゲ要素があるわけですが、全般的に世界観は悪くありません。

アメリカの片田舎を彷彿とさせるどこか寂れたガソリンスタンドとか、かと思えばいかにもファンタジーっぽい神話がリアルに存在します。

たとえば巨大隕石を巨人タイタンが支えているとか、それがじつは星を守る神様だとか、神様と交信できる巫女の存在とか。

自動車や発電・送電施設はもちろん、ロボット系も発達していますね。

FF6のような魔導アーマーもあります。

もろもろ説明不足なところもあるので、普通にゲームをしていてもよくわからないところが多々ありますが、置いてけぼりにされるほどでもなく、FF13のように意味がわからない専門用語も抑えめになっているのではないかと。

 

ただ、本当に後半、自由度がなくなってニフルハイム帝国に潜入するときなどは、ほんとうにつまらなくなりました。

帝国というくらいだからさぞかし大きな街なんだろうと思いきや、なんだか狭くて暗い通路を進むだけで、帝国の人はまったくみかけない。

帝国のある大陸には鉄道が走っているけど、途中で停まる駅も移動範囲がものすごく狭くて人がぜんぜんいない。

 

 パーティーメンバー固定はやっぱりつまらない

RPGの醍醐味といえばキャラクターだと思うのですが、まず残念なのが、バトルメンバーがつねに固定されてしまうというところです。

リアリティを追求した以上、「一緒に旅をしているはずなのに、なぜかバトルに参加しないメンバーがいる」という不思議な状況が成立できないのでしょう。

よくよく考えれば、控えのメンバーはバトルのときになにをしているのか謎です。

もちろん、ゲストキャラクターはたまに入ってきたりしますが、「自分でパーティーを選んで組む」という楽しみはありません。

 

あとはどうしても「男臭い」「全体的に地味」というところも気になります。

主人公とメインメンバーが全員男だし、ファッションもあまり特色がありません(衣装は変えられるけど)。

これも現代っぽいリアリティを追求した結果だと思うのですが、たとえばコル将軍とかも、モブキャラクターとほとんど変わらない外見をしているので、なんだかぜんぜん印象に残らないというか、「コル将軍って、だれだっけ?」となります。

 

これに関しては悪役の帝国のほうがそれっぽい格好をしているのですが、帝国は帝国でいろいろ残念なところがあります。

まず、ゲームの最初の方で帝国の幹部っぽい人たちが集結するムービーがあるのですが、本編ではそのムービーにしか登場しないキャラクターもいて、「あの人は一体どこに行ったんだ?」と疑問符が浮かびます。

いろいろ調べてみるとそれぞれの人達のドラマがあるようなのですが、これは本編だけをプレイしていてもわからないことのようで、そういうところは不親切ですね。

 

シナリオが残念すぎる

さて問題のシナリオなのですが、私はラスボスにがっかりしてしまいました。

結果的に言えば、ノクティスたちは最初から最後までラスボスに踊らされていたというわけなのですが、その動機があまりにも陳腐というか、幼稚というか、つまらない理由なわけなのです。

ただまあそれは百歩譲っていいとしても、終盤に入っていろいろ引き伸ばされた割にはやたらアッサリとラスボス戦が終わってしまった印象があります。

個人的な思いとしては、FFだったら最後は「なんかわけがわからん異形の存在」と戦いたかったわけですが、なんか最後も地味に終わったなあという感じです。

 

これは「キングダムハーツ3」でも感じたのですが、とにかく終盤のシナリオがひどすぎてがっかりします。

せっかくシガイの設定とかちょっとSFっぽい感じがしてよかったのに、それをまったく生かさずにサラッと終わらせた感じ。

 

他にも薄っぺらさが随所にあります。

仲間の一人グラディオスがいきなりいなくなるイベントがあり、ちょっとすると戻ってくるのですが、なぜいなくなったのかなどはまったく不明(これは追加エピソードでわかった模様です)。

本作のヒロインであるルナフレーナとも直接的な関わりがなく、ムービーの中でしか出てこないので、まったくルナフレーナにもノクティスにも感情移入できず、おそらく中盤の一大イベンだったであろう「あの出来事」に関しても「あっそう」としか思えませんでした。

それと後半、仲間内で喧嘩をする場面もあるのですが、ここがやたらにリアルで本当にギスギスしているのでやっているのがストレスになります。

とにかく、すべての出来事がプレーヤーにとっては「唐突」すぎて、なぜそうなったのかよく理解できないまま物事が進んでいきます。

あと、暗い。

このゲーム、なんかいい感じに感傷的に終わらせてはいますが、なかなか悲劇的な結末になっています。

 

FF15の最大の問題は「3つのテーマのぶつかり合い」

というわけで最初に戻りますが、このゲームは

「システムはおもしろい。世界観もいい。キャラクターは微妙。シナリオはクソ」

でした。

せっかくバトルシステムはいいし、きれいなグラフィックと壮大な世界観、設定もよかったのに、シナリオが後半になると駆け足になりすぎていました。

 

テーマソングに「スタンド・バイ・ミー」を使っているところからも、「仲間たちとの楽しかった旅の思い出」と比べながら最後の最後にギャップを感じてほしいという狙いがあるのかと思います。

 

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映画「スタンド・バイ・ミー」も、やはり4人の少年が旅に出るという物語で、最後はちょっと悲し目な感じで終わります。

だからこのゲームの最大のポイントは「4人の友情」にあると思うのですが、それにしてはズレたところが多かった。

 

たとえば、ストーリーコピーは

「父と子。そして王の物語。」

となっていて、ノクティスと父王の関係性に焦点が当てられています。

しかし、ロゴマークで使われているのはヒロインのルナフレーナであり、ストーリーをクリアするとそこにノクティスが寄り添うものに変わります。

つまり、ここではノクティスとルナフレーナの純愛をプッシュしているわけです。

でも、メインテーマは4人の友情……。

この「父と子の物語」「男女の恋物語」「4人の友情物語」という3つの柱がせめぎあい、どれも「自分が一番のテーマだ」と押し合いへし合いしているのです。

だから結局、このゲームは何を伝えたかったのか、焦点がぼやけてしまった。

 

私が思うに、このゲームはやはり「4人の友情」をもっと全面に押し出すべきで、それ以外の恋愛とか親子要素はオマケ的にするべきだったのではないかと。

ラスボスにしても、最後はやっぱり4人で力を合わせて倒すということが大事だったのではないかと思うのです。

ここのところで一本筋が通っていれば「パーティは男4人で固定」という設定にも意味が見出せました。

 

いろいろ挑戦的なところは評価できるし、予算とか時間とかの都合もあったんだろうけれど、やっぱりやらんでもいいゲームではありましたね。