いろいろ不憫すぎる人生だった鬼才 ~『知られざる天才 ニコラ・テスラ』のレビュー
世界にはけっこうな偉業を成し遂げたのに、なぜかあまり知名度が高くない人がいるもので、今回紹介するニコラ・テスラもその1人だろう。
もくじ
テスラの場合、知っている人はもちろん知っているが、その知っている人も、歴史上の偉人としてではなく、サブカルチャーよりの危ない人と認識されているケースが多い。
実際、グーグルトレンドで「ニコラ・テスラ」を検索してみると、関連トピックとして「都市伝説」「終末論」というキーワードが出てくる。
いわゆるマッドサイエンティスト的な扱いが少なくない。
今回は、そんなニコラ・テスラの生涯と実績、さらには現代日本に根付いているテスラのイメージの源泉について語ったこちらをベースに書いていこう。
サブタイトルは「エジソンが恐れた発明家」とある。
このとおり、テスラはエジソンと同じ時代に生きた発明家で、エジソンが直流システムで電力を一般に供給しようとしていたのに対し、テスラは交流システムの実用化を進めた。
そして結果的にテスラが勝利し、現代でも一般家庭で使っている電気は交流システムで供給されており、いまのように電気が普及したのはテスラがいたからこそともいえる。
さらに、最近スマートフォンの充電方法でも採用されている「無線送電システム」も、風力・太陽光・地熱発電を具体的に考えていたのもテスラだった。
アメリカではもうちょっと評価が高く、たとえばイーロン・マスクがCEOを務める新しい電気自動車メーカーも、彼の名前からずばり社名を「テスラ」にしている。
テスラがとくにサブカルチャーよりの文脈で語られるようになったのは、
・才能はあったけど世渡りは下手だったからいつも貧乏で不遇だった
・イケメンだったけど生涯独身、最後は孤独死
・コロラドスプリングスで行われた放電実験の写真が有名になりすぎた(しかも椅子に座ってなんか本を読んでいる風なのもまた様になっている)
・「電気の魔術師」と呼ばれるようになった
・「世界システム」「フリーエネルギー」「人工衛星を使った宇宙送電」「殺人光線」「人口地震発生装置」など、ロマンあふれる言葉が付随する
・日本の場合は、オウム真理教が1995年に発生した阪神・淡路大震災が起きた際に「ニコラ・テスラの地震兵器で引き起こされた可能性が高い」などと機関紙で発表した
まあこのあたりのことが原因だろう。
とくに、同時代を生きたライバルのエジソンと比べてどうしても日陰者感がでてしまう。
エジソンが起こしたゼネラル・エレクトリック(GE)がいまだに世界を代表する大企業となっているのに比べて、テスラは基本的に常に研究資金が足りておらず、潔癖症であるがゆえに単身でホテルを転々とする生活を送っていた。
エジソンと同じくらいの才能はあったけれど、社会的成功は得られなかった人物なのだ。しかも、最後はホテルで孤独死し、翌朝、掃除に来たメイドに発見されたという。
「世界システム」とはなにか
ロマンあふれる、SF好きならウズウズしてしまう名称だが、これはようするに
「無線による電力の送電システムと情報の伝達システム、すなわち無線電信、ラジオ放送、写真電送、ファクシミリなどの技術を合わせた名称」
のことだ。
テスラはコロラドスプリングスの実験などを経て、地球そのものが電気を帯びていることを知り、地球を媒介とした大規模な送電・情報通信システム開発を考えていたのである。
そのためにテスラは、アンテナコイルの載った高さ60メートルのアンテナ塔(ワーデンクリフタワー)を建造しようとしたのだ。
しかし結果的には、資金不足からこの研究は頓挫してしまうのだが、これは単純にテスラが、これまで協力してきた電力会社の利益を損ねるような研究を無遠慮に始めてしまったことにも原因がある。(無線送電が可能になれば伝染網が必要なくなるので)
「殺人光線」の正体
こちらも中学生男子がついつい目を引かれてしまうワードだが、ようするにどういうことかは、本書から一部を抜粋したい。
この頃に発表されたアイデアで、大きな反響を呼んだのが「殺人光線」である。
第一次大戦から六年後、イギリスの科学者ヘンリー・グリンデル・マシューズが飛行機を一瞬で打ち落とす光線を発明したというニュースが伝わってきた。続いてドイツ、ロシア、アメリカからも同様の発表がもたらされた。戦車、毒ガス、航空機などの新兵器が投入された対戦の記憶がまだ生々しかっただけに、究極兵器の発表は大きな関心を集めた。
こうした騒ぎにコロラドスプリングスの地方紙が異論を唱えた。当今話題の殺人光線の発明者は、ほかでもない、二五年も前に当地で放電実験を行ったテスラ博士であると。この折は沈黙を守ったテスラだったが、一〇年後、新聞を通してこんな構想を語った。
自分が目下開発中の防御兵器は、あらゆる種類の放射能発生装置である。開発には大規模な施設と、二百万ドルの建造費用がかかるが、完成すれば「大国であろうと小国であろうとあらゆる国を、軍隊や航空機その他の攻撃方法に対して難攻不落」にし、「二百マイル(約三百二十キロ)以内に近づいたものは、人であれ機械であれ、すべてを破壊する」ことが可能になる。同時に、それはすべてをすべての攻撃をはね付ける「力の壁」ともなるはずだ。
この発表を受けて、各紙いっせいにあのテスラが殺人光線を研究中と書き立てた。孤高の発明家と殺人兵器のコンビはネタとして最高だったが、テスラ自身はそれが殺人光線であることは否定した。光線は遠距離では拡散してしまい、初期のエネルギーを保てないからである。
(中略)
今日の研究者は、これを荷電粒子兵器の先駆的記述と見なしている。
荷電粒子兵器とは、電子、陽子、イオンなどの粒子を超高速に加速して発射し、目標を破壊する兵器である。レーガン米大統領が一九八〇年代に提唱したSDI(戦略防衛構想)でも、ミサイルの迎撃手段として提案されたが実現はしなかった。テスラの構想はこれを先取りしたものだというのである。
一方、二百マイル以内に近づいたものをすべて破壊する力の壁については、定常波を利用した攻撃・防御兵器とされ、現代では、「テスラシールド」とか「スカラー兵器」の名で呼ばれている。
荷電粒子兵器もSFとかフィクションでたまに目にする用語だが、要するに電荷を持った粒子を放出してぶつかった物体を破壊するものだ。
理屈としてはつくれるようだが、そのための莫大な電力の集め方とか、大気中で直進させる方法とかでかなり高いハードルがあり、実現には至っていない。
マッドサイエンティストという最後の幻想
テスラやエジソンが活躍した時代は、まだ科学がギリギリ魔術と結び付いていた最後の時代だった。 エジソンは「メンローパークの魔術師」と、テスラは「電気の魔術師」と呼ばれていた。
(ちなみに、落合陽一さんは「現代の魔術師」とも呼ばれていたが、最近その呼称はなりをひそめている)
しかし20世紀にはいると、資本家たちが企業の中に研究所を作り、そこで研究・開発を行うようになった。
つまり、科学は突出した個人(つまり天才)が単独で行うものではなく、新しい発明は優秀な集団によってより効率的に開発されるようになったのだ。
テスラは現代のフィクションの世界などではマッドサイエンティスト扱いされることもあるが、 それはひとえに、科学者が個人のブランドで活躍していた最後の時代の、なぞめいた人物だったからだ。
テスラの世界的再評価がこのような時期に起こったのは偶然ではない。発明家が魔術師であった最後の時代を生きた発明家は、断片化した科学・技術再生のシンボルにふさわしかったのだ。
けっこういろいろすごいことをやっているんだけど、なんだかイマイチ世間からは評価されず、最後は1人で寂しく死んでしまう。
そんなニコラ・テスラは、もしかしたら「世界で一番不憫だった天才」なのかもしれない。
後記
いまさらながら、「ドラガリアロスト」をはじめました。
任天堂とサイゲームスがタッグを組んだスマーろフォン用のアクションRPGアプリで、3人の仲間を引き連れつつ、自由に移動できるフィールドで戦える。
グラフィックは可愛らしい感じなんだけど、やっぱり女の子は露出多め。
ただ、わりと最初にけっこうな回数でガチャが引けるので、まあ1人くらいは当たりキャラが引けるだろうというところがちょっと優しい。
まあ、ストーリーとかキャラクターとかゲーム性としては特筆するべきものはないんだけど、音楽がいい!
オープニングテーマの「終わらない世界で」もいい。
歌手のDAOKOさんは米津玄師と一緒に「打上花火」歌った人ですね。
序盤のホーム画面で流れるこっちの曲もいい。
曲に合わせてキャラたちがリズムとってるわけですよ。
DAOKO × 中田ヤスタカ「ぼくらのネットワーク」MUSIC VIDEO
何度も聞いてるとだんだんくせになってくるわけです。
ただ、個人的に一番のお気に入りはガチャの結果画面で流れるこちらの曲。
やってない人だとぜんっぜんわからないと思うけど、このうたのリズムに合わせてガチャ排出キャラがでてくるとけっこうテンションが上がるわけですよ。
もうちょっとやってみよう。
というわけで今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。