『恋はデジャ・ブ』がめちゃくちゃおもしろかった
Amazonビデオでこの映画を見た。
1993年公開された映画で、まあどうしても映像に古臭さはあるが、ストーリーと作り方が素晴らしい。この三連休、暇な人は見てみて欲しい。
ジャンルはハートフル時間ファンタジー。なぜか同じ日を何度も繰り返すことになった男が織りなすいわゆる「ループもの」のヒューマンドラマである。
あらすじ
主人公のフィルは気象予報士。毎年、片田舎・パンクスタウニーに赴き、ウッドチャック(でかいプレーリードックみたいなやつ)を使った春の到来を占うイベントを取材していた。だが、高慢で自分のことしか考えず、田舎が大嫌いなフィルはこの毎年恒例のイベントにうんざり。さっさとペンシルベニアに帰ろうとするが、突然のブリザードで帰ることができなくなり、仕方なくもう一晩、パンクスタウニーの宿屋に泊ることになった。
翌日、フィルは異変に気づく。ラジオの音声が同じで、みんな、機能とまったく同じように彼に語りかけてくるのだ。なんと、彼は再び同じ日を繰り返していたのである。最初は戸惑うフィルだったが、どんな悪事やイタズラをしても翌朝6時になればリセットされることに気づいた彼は、次第に調子づくようになる。車を暴走させたり、美人の女性を口説いてワンナイトラブを楽しんだり、金を盗んだりと、やりたい放題をやり続けた。
やがて、フィルは一緒に取材をしていた美人ディレクター・リタを口説こうとする。しかし、もともとフィルに好感を抱いていなかった彼女はなかなか手ごわい。何度も同じ日を繰り返すうち、フィルは彼女の好みや素性を把握しながら効果的に迫っていくのだが、どうしても彼女とベッドを共にすることができなかった。
リタをものにできないうえ、いつまでたっても明日がやってこない日々に、フィルは次第に絶望感を抱いていく。だが、何度自殺しても、やっぱり同じ日を繰り返してしまうのだった。やがて、彼はなんとかリタに事情を説明し、自分の状況を理解してもらう。そうした紳士さが実を結び、彼はリタと一緒に眠りにつき、少しだけ心を癒されるのだった。
その翌日から、フィルの心境に変化が現れる。彼は街で見かけた困っている人々を助けるようになったのだ。物乞いのお爺さんに大金を渡し、車のパンクを直し、木から落ちそうになった少年を助け、のどにステーキを詰まらせたおじいさんを救ったりした。やがて、急に人が変わったフィルに、リタのほうが惹かれ始めて……
ストーリー展開としては、ディケンズの『クリスマス・キャロル』に近いかもしれない。こちらは強欲の老人・スクルージの元に3人の妖精が現れて彼に様々な体験をさせ、一晩で改心させる物語だ。
本作の場合、時間が何度も巻き戻るが、なぜそんなことが起きたのかについては一切言及されない。ので、SFというよりも、むしろファンタジーといった方が正確だろう。
フィルは少し異様な状況にすぐ適応しすぎな気がしないでもないが、実際に同じ日が繰り返されるようになった人間の真理を非常に丁寧に描いていると思う。つまり
①自分の欲望のままに行動する
②虚しさを覚えて自暴自棄になる
③親切にするようになる
まあ、普通に考えれば②から③にはならないと思うのだが、フィルの場合、その移行に一役買っているのがリタである。自暴自棄になったフィルはリタの優しさに触れることで、これまでの「自分のために相手を知る」から「相手のために相手を知る」という行動に変化していくのだ。
本作が伝えているのは「今日という一日の大切さ」である。
フィルは「今日」を何度もやり直すことになるので、たとえばリタを口説き落とそうとしたとき、ある失敗をしても次の「今日」でそれを反省していくらでもやり直すことができた。たとえ、それが決定的な失敗であっても、チャラにできてしまうからだ。
しかし、私たちはそうはならない。過去に戻れないように、今日という日はどうやっても繰り返せない。今日、なにか失敗をしたら、その失敗はもう二度と挽回するチャンスはないのである。
とはいえ、失敗を絶対に避けることはできない。大切なのは、たとえ失敗したとしても、手抜きをせず、後悔しないような行動をすることなのだ。そうしていれば、たとえ失敗に終わったとしても、人は後悔しないものである。
このことを端的に表すのが、途中、改心し始めたフィルが物乞いのお爺さんを救おうとする場面だ。
彼は最初、お金を渡すだけで終わるが、次には寒さに震えてるお爺さんを家に連れて帰る。だが夜中、急にお爺さんは体調を崩し、病院で亡くなってしまうのだ。医師によれば、寿命だったという。
フィルはなんとかお爺さんを救おうと、お腹いっぱい食事を食べさせ、人工呼吸を施すが、なにをどうやってもお爺さんを救うことはできないのである。
メメント・モリ(死を思え)にも近いが、今日一日がこのまま終わってしまって、本当に公開しないのかは、たまに思い出しておきたい。
というわけで、今日も良い一日を!
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。