映画『デッドプール』のレビューと熱意についての考察~両者は関係ありません~
ムービー・マスターピース デッドプール デッドプール 1/6スケール プラスチック製 塗装済み可動フィギュア
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フィクションの世界には「第四の壁」がある。
もくじ
これは要するに、「演者と観客を隔てる壁」のことである。
もともとは演劇の世界で生まれた言葉らしく、舞台では演者たちが3面を壁に囲まれ、残る1面は観客席となっている。しかし、そこには目に見えない透明な壁があり、舞台と客席を厳密に区分しているのだ。
この「第四の壁」は舞台でなくても、あらゆるフィクション作品には存在する。ただし、後年になると、あえてこの第四の壁を破る手法やキャラクターが登場するようになるわけで、そのひとりが、デッドプールなのである。
デッドプールはちょいちょい、スクリーンの前にいる観客たちに向かって話しかける。彼は自分が「映画の中の登場人物」だと認識しているのだ。
ミステリーではわりと簡単に「第四の壁」が突破される
この「第四の壁を突破する」手法は、現代ではさほど珍しいものではない。日本の映像作品で代表的な人物は古畑任三郎だろうか。彼は終盤になると、いきなり視聴者に語りかけ、事件解決のヒントをくれたりする。
そもそもミステリーは古くから「読者への挑戦状」というものがある。多くは著者がいきなり乱入してきて読者に挑戦するのだが、作品によってはいきなり作中の登場人物が読者に向かって語りかけてくるパターンもある。『探偵小説のための~』シリーズはその代表作だ。
探偵小説のためのノスタルジア 「木剋土」 (講談社ノベルス)
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本シリーズでは探偵役の陰陽師・小諸るいかが読者に挑戦してくる。なお、本作はけっこう百合百合しいのでご注意いただきたい。
ゲームも「第四の壁」を突破してくる
ゲームでもよくある。有名なのは『マザー2』だろうが、最近のものだと『ブレイブリーセカンド』もおもしろかった。
このゲームでは、途中で登場するキャラクターたちが「自分たちは何者かの意思によって操作されている」ということに気付くのだ。
※ゲーム自体は、前作の『ブレイブリーデフォルト』のおもしろかったけど
主人公になってはいけないキャラクターもいる
そろそろ映画『デッドプール』の内容の話に入ろう。
感想を一言で述べるなら「おもしろかった」で終わるのだが、じゃあ人におススメしたくなるほどかというと、……そうでもない。
そもそも鑑賞する前からデッドプールという個性的なキャラクターがこの映画の売りだとは認識していたので、作中でそれを楽しめたという点は間違いないが、予想以上のおもしろさはなかった。
そもそもデッドプールはイカレたトリックスターという立ち位置で、正体がわからないからこそ彼の言動はおもしろいのだ。じつは暗い過去を背負っているとか、恋人に再会するために行動しているという背景を聞かされると、あんまり笑えなくなってくるものである。
しかし、主人公である以上、主人公の過去や行動の同期を深堀りしないと作品が成立しないので、それは仕方がない部分だろう。
そう考えると、デッドプールはやっぱり主役にしてはいけないキャラクターなのだろう。彼はほかのヒーローたちの作品の脇役として、作品を思いっきり引っ掻き回すのが本分に違いない。
もちろん、本作がつまらないわけではない。ハリウッドが少なからぬ予算をかけ、シナリオも練り上げられているので、「卒のない」仕上がりになっている。ので、あまり頭を使わずに映画を楽しみたい場合にはピッタリな作品だ。
おわりに
最近は、人を動かすのは結局「ロジックよりパッション」なんじゃないか――ということをよく考えている……というか実感している。
私の仕事は自分の企画を上司に了承してもらうのが仕事だが、結局データやロジックを使って相手を論破しても、相手を納得させるのは難しい。人間は理性ではなく、感情で動く生き物だからだ。
また、いろいろな人の話を聞いたりしていると、だいたい「売れた本」というのは、当初、社内で猛烈な反対を受けたものが少なくない。それでも、担当編集者が執念を見せて発売した結果、ヒットしたものも多いようだ(もちろん、粘ったからと言ってすべての本が売れるわけではないだろうが)。
結局、人は相手が「真剣」なのかだけを見て判断しているんじゃないか。
自分の意見を裏付けるための意見やデータを一生懸命集めたり、賛同者を見つけたり、一度断られてもあきらめることなく主張し続けることは、結局その人の「熱意」を形にしているに過ぎない。
逆に言えば、どれだけ完璧なロジックを立てて相手を論破できても、その根底から「熱意」がくみ取れなければ、相手を動かすことは出来ないのだろう。
という、映画とは全く関係のない話をして今回は終わる。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。