本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『ハイ・コンセプト』のレビューを書いていたら天狗の仕業になったでござる

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たまにランナーズ・ハイならぬ「リーダーズ・ハイ」になる徒花です。あと、ときどき「ライターズ・ハイ」にもなる。

ちなみに、「ワーカーズ・ハイ」にもなりやすい。

 

もくじ

 

今回紹介する本はこちら。

 

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

 

 

いわゆる「意識高い系」の人たちが好むような、ビジネス系の自己啓発書である。

今回は本書の内容を紹介しつつ、関連性があるビジネス書をさりげなく紹介していく。

 

こんな人は本書を読む必要なし

 

まず大前提として、本書は「これからの時代にしっかり金を稼いで生きていきたい人」を対象に書かれている本だ

そのため、「できれば仕事なんてしたくないし、お金もそんなに必要ない」と考えている人は、別にこの本を読む必要はない。

 

だが、もし心持ちは前者であるにもかかわらず、現在「なんら新しいものを生み出さない仕事」に従事しているのであれば、その状況はなんとかしなければならないかもしれない。

なぜならそう遠くない将来、そうした単純労働(知的労働であっても)のほとんどはロボットか、もしくはもっと安くやってくれる発展途上国の労働力に奪われてしまうからだと、著者のダニエル・ピンク氏は主張する。

引用しよう。

 

未来をリードするのは、何かを創造できる人や他人と共感できる人、パターン認識に優れた人、そして物事に意義を見出せる人である。

つまり、芸術家や発明家、デザイナー、ストーリーテラー、介護従事者、カウンセラー、そして総括的に物事を考えられる人である。

 

ポイントは、そうでない人がすべて死に絶えるわけではない……ということろだろう。

べつに工場で単純労働に従事していようが、ただ生きていくだけなら、たぶん不可能ではない。

 

はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言

はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言

 

 

自分に投げかける3つの質問

 

①この仕事は、ほかの国ならもっと安くやれるだろうか?

②この仕事は、コンピュータならもっと速くやれるだろうか?

③自分が提供しているものは、豊かな時代の非物質的で超越した欲望を満足させられるだろうか?

 

本書の内容をすげー単純化すると

 

「左脳だけじゃなくて右脳もフル活用して働ける人間になれ!」ということだ。

 

これまでの仕事は、どちらかというと左脳をフル活用できる人が高い給与を勝ち得てきた。

つまり、「記憶力」「論理的思考能力」「瞬発力」「効率性」などに優れた人材である。

一方、これからの社会……本書で言う「第四の波」……が到来した社会では、そのほかに「発想力」「共感力」「表現力」「統合力」など、右脳の力を兼ね備えた人材が輝くと述べているのだ(右脳だけ発達して左脳が未発達ではダメだ)

 

これは「ペーパーテストや面接では測りきれない能力」(p113)と述べられている(じゃあ企業はどうやってそういう人を判別するんだという疑問が湧くが、あまり深く考えないようにしよう)

 

聞くだけで脳が目覚めるCDブック

聞くだけで脳が目覚めるCDブック

 

 

これからの時代に必要な6つの資質

 

ここからが本題になる。

あくまでこのエントリーでは簡潔にまとめるにとどめるので、もっとちゃんと知りたい人はちゃんと本を読むこと。

 

①実用性だけではなく、○○を考えられる

これからの時代、あらゆる商品やサービスは「役に立つ」だけでは選ばれない。

それにプラスアルファの価値を付加しなければならず、それがすなわち有意性である(とくに代表的なのはデザイン)

 

たとえばトースターをかっこよくデザインしても、あまり実用性は変わらないだろう。かっこよくなくても、おいしくパンが焼けさえすれば、トースターの「実用性」は十分満たせるからだ。

しかし実際のところ、トースターが本来の役目を担うのは24時間あるうちのたった数十分だけであり、それ以外の時間は「キッチンのインテリア」でしかない。

ここでデザインという「有意性」が発揮されるわけだし、じつは「有意性」のほうがその力を発揮する時間は長い。

 

「実用性」と「有意性」という、なんだか堅苦しい言葉を使うからちょっと難しく感じるだけかもしれない。

「有意性」というのは、いわば「実用性以外の良さ」といっても差し支えない(と思う)

それを考えられる人は、これからの時代、求められるのだ。

 

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由

 

 

 ②「物語」を作れる

私が最近電車に乗っていて気に入った広告がある。「カッシェロ・デル・ディアブロ」というワインだ。

下戸だからワインをいっさい飲まないにもかかわらず、私はこのワインのことをしっかり覚えていた。……いや、厳密にはワインの名前は覚えていない。

私が覚えていたのは「悪魔が守ったチリワイン」という、なんとも魅力的なキャッチコピーだけなのだが、これがいわゆるビジネスでいうところの「物語」である。

 

 

今の時代、「情報」そのものに価値はない。

なぜなら、ネットに接続すれば無料で即座に情報は手に入るからだ。

同時に、人々は日々、あまりにもたくさんの情報に触れているがために、いつしかその多くを「スルー」する力を身につけてしまった。

だからこそ、情報を「物語」という皿に乗せ、しっかり味わってもらう必要がある。

 

もちろん、物語といっても、フィクション……つまりウソはあまり好ましくない戦略だ。

ウソなんかつかなくても、物語のないものは絶対にない。

――もし、「物語」と言う言葉を仰々しく感じてしまうなら、こう言い換えてもいいだろう。

その商品やサービスが誕生するまでの「いきさつ」「理由」をおもしろおかしく語れるかどうか。それがカギになる。

 

 

③全体の調和を考えられる

真っ白のキャンバスに人の顔を描くとき、おそらく100人の画家がいれば100人の画家は、まずざっくりとした下絵を描くはずだ。

まず目だけを完成させてそこだけ色塗りする……人はいないだろう。

しかし実際のところ、世の中には「自分の仕事は目を描くだけであり、それ以外のことは良くわからないし、考えたこともない」という人がけっこういたりする。

とりわけ、大企業で働いている人に多い。

 

全体をみて物事が考えられると、なにがいいのか? 次のようにまとめられる。

 

●自分の活躍できる(求められる)範囲が広がるし、違うアプローチから問題を解決できる

●一見すると全然関係のなさそうなものを組み合わせて、新しいものを作り出すことができる(セレンディピティという言葉もある)

●比喩能力がたくみになり、人をひきつけられる

●一見すると関係のなさそうな物事の関連性がわかるから、ほかの人に比べて先見の明が持てる

乱読のセレンディピティ

乱読のセレンディピティ

 

 

④共感できる

これはすごく大事な素質だ。新しいもの……これまで世の中になかったものを作るとき、「本当にこれを必要とする人はいるのか?」という不安はクリエイターにつねにつきまとう(私自身がこういう悩みを常日頃抱えている)

こういうとき、相手の立場に立って、相手が何を望んでいるかを理解し、それに寄り添う……共感力が必要になるのである。

 

これは新しいものを作るという大げさなものだけにかかわるものではない。

日ごろのコミュニケーション、ひいては恋愛の巧拙をも分かつ要素であるのだが、実は案外この力をないがしろにしている人は多い。

結局のところ、一番の黄金ルールは「相手のしてほしいように相手を扱いなさい」ということなのだ。たいがいは、それでうまくいく。

 

ちなみに、一般には女性のほうがこういう細かいことに良く気づき、相手の真理状況を察知する力に長けているといわれている。

 

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

 

 

⑤遊び心がある

仕事ができる人はよく笑う。そしてなにより、仕事そのものを楽しんでいる。また、遊びそのものの有用性も現在は見直されている。

テレビゲームなどをプレイすることは、コンセプト時代に必要なさまざまな素養――周囲の情報を察知し、複数の情報を同時に処理し、さまざまな人の立場に立って行動を考えるなど――を育てることに役立っているとされる研究もある。

 

また、ジョークを理解するためには、右脳がキチンと働いていないといけない。

本文から、あるクイズを一門出題しよう。

「オチ当てクイズ」というやつだ。ふさわしいオチを、4つの選択肢から選んでほしい。

 

6月のある土曜日、ジョーンズ氏は隣人のスミス氏に会った。通りを彼のほうに向かって歩いてくる。
「スミスさん」
ジョーンズ氏は声をかけた。
「今日の午後、お宅の芝刈り機を使いますか?」
「あ、はい。使いますけど……」
 スミス氏は慎重に答えた。そこでジョーンズ氏はこう言った。

(a)「ああ、そうですか。終わったら、貸していただけますか?」

(b)「よかった! じゃあ、ゴルフクラブは使いませんね。貸してもらえます?」

(c)「おおっと!」 踏みつけた熊手が危うく顔に当たるところだった。

(d)「鳥たちがいつも草の種を食べてしまうんですよ」

 

たぶん、多くの人が正解できたと思う。もし間違えてしまった人は、右脳に障害がないか、検査を受けてみてもいいかもしれない。

なお、正解は本書のなかにある。

 

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

 

 

ホモ・ルーデンス (中公文庫)

ホモ・ルーデンス (中公文庫)

 

 

⑥精神的なものの価値を知っている

今日、私たちは恵まれた環境にいて、先進国にいる限り、食べるものがなかったり、着るものがなかったり、いきなり誰かに殺されたりすることはほとんどない。

つまり、多くの人は「最低限の欲求」がつねに満たされた状態にあり、物質を越えた先にある要求……を求めている。

 

人々が求めているだけではない。仕事に対してやりがいを持っている人は、そうではない人に比べて高い生産性をもたらすという。

人間は自分が得意なことを知り、それをだれか他人のために役立てているときに、大きな幸せを感じる。

つまり、自らのモチベーションや気持ちのむらを自分で管理できる人間……と言い換えることはできるかもしれない。

 

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法

 

 

オプティミストはなぜ成功するか

オプティミストはなぜ成功するか

 

 

(長い)おわりに

 

スピリチュアル……というと多くの人が眉をひそめるが、じつは、仕事ができてすごい地位にいる人ほど、こういうオカルトチックというか、スピリチュアルなことを信じているようにも思う(これは個人的な経験則なのであまり説得力がないが)

かくいう私も、神とか悪魔とかを信じているわけではないが「自分ではどうしようもできない大きな流れ」みたいなものはあるのかもしれないし、何らかの方法によってその流れを知ることができる(たぶん、流れそのもの変えることはできない)のかもしれないとかも考えている。

 

これは麻雀をやる人ならよく分かるかもしれない。

麻雀には「流れ」という概念がある(信じるか信じないかは別として)。麻雀は基本的に運が強く絡んでくるゲームだが、不思議なことに、ある一人の人間が立て続けに勝つ……ということがしばしば起こる。

これには参加者の心理的な働きとそれに基づく無意識下の戦略決定(つまり、勝っている相手は気が大きくなり、ほかの3人はそんなヤツにビビる)が寄与していると思うのだが、そこらへんがよく解明されていないため、「流れ」として信奉されていたりするのだ。

 

カール・グスタフユングは「集団的無意識」を提唱したが、ある意味ではこれが「自分ではどうしようもできない大きな流れ」――ひいては神……に近いものなのかもしれない……とか私などはボンヤリ考えてしまう。

もしくは、人間がどうやっても知覚できない四次元空間のエネルギーみたいなものがあるのかもしれない。あるいは天狗の仕業か。。。

 

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私は特定の神を信じていないが、同時に、人間がすべてどうにかできるとも考えてはいない。

 

「龍使い」になれる本

「龍使い」になれる本

 

 

『ハイ・コンセプト』のレビューからなぜ最後がこんな終わり方になったのか、自分でもよくわからない。

これも「自分ではどうしようもできない大きな流れ」のせいかもしれない。この世はよくわからないことで満ちている。

だからこそ、おもしろい。

 

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

 

 

まとまりがなくなったので今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。