『セパレート思考』ほかのレビュー~ストレスが消える魔法の呪文~
ウォシュレットはかならず「最弱」になっているか確認してから使う徒花です。
もくじ
世に氾濫する「○○思考」
ビジネス書において「思考法」というのは昔からずっと鉄板のテーマで、「○○思考」という本は、書店に腐るほど並んでいる。ざっと一覧にしてみよう。
●ドナルド・トランプ 奇跡を起こす10倍思考 (経済界新書)
●天才思考: 全ての分野で圧倒的な成果を出すための共通の思考法を公開!
●論点思考
ゲーーーップ。みんな、完全に「こんな考えかたしてるのはオレだけだろ?」という自信満々ぶりがうかがいしれる(タイトルの決定権は出版社にあるので、著者が悪いわけじゃないが)。というわけで、今回紹介するのはこちらの本。
※完全に余談だが、Amazonで「セパレート」で検索すると、なぜかスタイルの良いお姉さんがボディストッキングを着た商品も出てくる
鈴木進介氏について
著者の鈴木進介氏は株式会社コンパスの代表取締役を務めている経営コンサルタントである。
だいたいこういう人の場合、プロフィールで有名な会社(○ッキンゼーとか、○クセンチュアとか)の名前を出してくるものなのだが、鈴木氏の場合は公式ホームページをみてもそういう名前が一切出てこないので、ガチで叩き上げの経歴を持った人であるようだ。25歳のときに「経歴なし」「金なし」「人脈なし」「ノウハウなし」で起業したと書かれているが、多分、そのとおりなのだろう。
総合レビューと概要
本の感想を端的にいえば、中の上、といったところだろうか。要するに、「頭を混乱させないために、紙に書き出して思考を仕分けしなさい」ということである。その際、どのような基準を持って仕分けすればいいのかを教えている。
内容がわかりやすいのは結構なことだし、おそらく間違ったことはいっていないのだろうが、ビビッとくる内容の主張がない。。。どちらかというと具体的なテクニックに傾倒しているのがイマイチだった。また、本書に限った話ではないが、こういう本は基本的に「個人の経験の話」をまとめたものなので、書かれている内容を実践してうまくいくかどうかはわからない。人によって、合う合わないはあるだろう。だがもちろん、学べる箇所はある。
基本的に2冊の本で主張している内容にはほぼ違いがないので、読みたいならどちらでも好きなほうを読めばよい。ただ、個人的には『本物の仕分け術』のほうをおススメしたい。なぜなら
●新書なので、値段が安い
●こちらのほうが後にだされたせいか、より内容が洗練されてまとまりがいい
からだ。タイトルのインパクトはたしかに「セパレート思考」のほうが強いが、発売後1年近くたっても書店で初刷りが売っているあたり、売れなかったに違いない。
「変えられること」と「変えられないこと」を区別する
徒花が個人的にいちばんいいと思った内容はこれだ。そもそも、「ストレスを感じている=自分には変えられないことを一生懸命変えようと無駄なことをしている状態」といえる。
たとえば、待っているバスがなかなか来ない状況を想像してみよう。これにイライラする人は、「バスの運行状況や道路の混雑状況は自分ではどうやっても変えられないのに、それをなんとかしたい(してほしい)と思っている」からだ。そして、勝手にストレスを感じている。人間とは難儀なものである。
だからこそ、セパレート思考では、現在自分がぶち当たっている問題を考えるとき「自分で変えられるもの」と「自分では変えられないもの」に仕分けする。そして、「自分で変えられるもの」をどうすればいいのかだけを考えるようにするのだ。
ここでひとつ、人生のあらゆる局面で利用できる私なりの「仕分け」をご紹介しよう。
●「過去」と「未来」は変えられないが、「現在」は変えられる
●「他人の気持ちと行動」は変えられないが、「自分の気持ちと行動」は変えられる
私が小さい頃、母が「兄弟は他人の始まり」とのたまっていたのを思い出した。けだし名言である。世の中を見ていると、「なんとか他人を自分の思い通りに動かそう」と考えている人が多いように見受けられるが、他人は自分のコントロール外にある存在なのだから、基本的にそういう好意の大部分は無意味である。
※追記 ラインホルド・ニーバーの祈り
神よ、わたしに授けてください。
変えられるものを変える勇気を。
変えられないものを受け入れる冷静さを。
そして、その2つを見極める知恵を。
魔法の呪文「しょうがないなぁ┐(´ー`)┌」
なにか「自分では変えられないもの」が自分の邪魔をするようになったら、私は「しょうがないなぁ┐(´ー`)┌ヤレヤレ」と考えるようにしている。だって、しょうがないものはしょうがないのだ。
そんなふうに気持ちを切り替えられないと思う人も多いかもしれないが、じつは、多くの人はこういう「いい意味でのあきらめ」を日々、たくさんしている。
たとえばの話、ディズニーランドにいくつもりだったのに、史上まれに見る超大型台風が関東に上陸してTDLが休園状態になってしまったとする。精神的に未熟な幼稚園児だったら「ディズニー行きたい! ディズニーいきたいぃぃぃああああっ!」と一日中泣き喚くかもしれない。だが、精神的に成熟した大人は、最初こそ悲しんだりするものの、だいたい(昼前には)あきらめる。そして、「じゃあ、仕方ないから家で映画でも見ながら宅配ピザでも食べるか」と、プランBに移行するのだ。
要は、この考え方を仕事やほかのシーンでも応用すればよいだけの話である。変えられないものを無理やり変えようとしても、自分が疲れるだけだ。大切なのは「しょうがないなぁ┐(´ー`)┌ヤレヤレ」といったんため息をついたあと、「じゃあ、どうしようか?」と代替案や現状に即した方法を考えることだ。
おわりに
最近読んだとあるブログで「なるほどな」と思った言葉がある。(細かいところはうろ覚え)
「営業の仕事は売れない商品を売ることではなく、売れる商品をもっと売ることである」
編集者という仕事をしていると、ともすれば自分が作った本が売れない理由を営業のせいにしがちだ。「営業の人がもっと書店に働きかけてくれれば、もっと売れたのに」「もっと広告を打ってくれたら売れたのに」などなど。しかし、
●営業の人が力を入れて売り込んでくれるか
●書店が大規模に陳列してくれるか
●消費者が本を買ってくれるか
ということは、もはや私には「変えられないこと」である(┐(´ー`)┌ヤレヤレ)。もし営業が力を入れて売り込んでくれないのであれば、次からは力を入れて売り込まざるを得ないような本/力を入れて売り込みたくなっちゃう本を作るしかない。自分ができるところで自分ができることをするしか、道はないのだ。
そのブログには次のようなことも書かれていた。
「初版を売り切るのは、担当編集者の責任」
なかなか胸にズキュンと来るオコトバである。結局のところ「いい商品は宣伝しなくても売れるかもしれないが、悪い商品はいくら宣伝しても売れない」。肝に銘じ、私は今日も「売れる本」の企画を考えよう。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。