本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

精製されたものは基本的に危ない、かもね ~『「お菓子中毒」から抜け出す方法』のレビュー

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糖質制限はすっかり世の中に定着した感がある。

 

もくじ 

 

糖質制限時代はそんなに新しいものではなかったのだけど、私の印象では、1つの契機になったのは2012年に刊行された『おやじダイエット部の奇跡』がヒットしたことではないかな、と思う。

 

おやじダイエット部の奇跡 「糖質制限」で平均22kg減を叩き出した中年男たちの物語

おやじダイエット部の奇跡 「糖質制限」で平均22kg減を叩き出した中年男たちの物語

 

 

もっと古い本でも「ご飯を食べるな」「パンを食べるな」など、炭水化物の危険性を指摘するものはあったが、それらは「糖尿病予防」など健康維持を目的としたものがメインで、それが「ダイエット」に結びついていなかったように思う。

 

今回紹介する本も、基本的には「糖質」が人体にもたらすリスクから警鐘を鳴らす一冊だ。

 

著者の白澤卓二先生について 

「お菓子中毒」を抜け出す方法~あの超加工食品があなたを蝕む~

「お菓子中毒」を抜け出す方法~あの超加工食品があなたを蝕む~

 

※ブックデザイン:フロッグキングスタジオ、DTP:キャップス、イラスト:宮野耕治、カバー・部扉写真:Shutterstock、編集協力:大政智子

 

著者の白澤卓二先生は白澤抗加齢医学研究所というところの所長を務めている医学博士で、専門は寿命制御遺伝子の分子遺伝学、アルツハイマー病の分子生物学、アスリートの遺伝子研究など。

かなりたくさんの著書があり、テレビなどのメディアにもしょっちゅう登場している。

本書のきっかけになったのは2012年に出版された『「砂糖」をやめれば10歳若返る!』のようだ。

 

「砂糖」をやめれば10歳若返る! (ベスト新書)

「砂糖」をやめれば10歳若返る! (ベスト新書)

 

 

「お菓子中毒」と「超加工食品」

さて本書で述べる「お菓子中毒」とはなにかというと、「お菓子を食べないとイライラする」「毎日のように食べてしまう」というような生活習慣の人のことを指すらしい。

もう1つ特徴的なワードが「超加工食品」だ。

こちらは「精製されたり、遺伝子操作されたり、不自然な原料でつくられた中毒をもたらす食品」と定義している。

 

遺伝子操作や「不自然な原料」が体に悪そうなのは感覚的に理解できると思うが、じつは「精製」というのはけっこう危険だという意見がある。

たとえば、砂糖は「サトウキビ」「てん菜」という植物が原料になっていることが多いのだが、人工的に精製されて純度が高くなると、中毒性をもたらしたり、体に害を与えるという考え方だ。

 

たとえば、発売された当初のコカ・コーラでは原料の一部にコカの葉が加えられていて、南米の一部の地域ではお茶などの嗜好品として口にされるが、これを抽出・生成したものがコカインになる。

コカインは非常に中毒性の高い麻薬の1つで、強烈な依存症に陥り、深刻な禁断症状を引き起こす。

 

「精製されて純度が高くなったもの=中毒性が高くなる」という図式も成り立つかもしれない、ということだ。

塩に関しても、いわゆる真っ白・サラサラな塩化ナトリウムよりも岩塩などのほうが健康にいいとされるのは、ミネラルなど余計なものが含まれて塩としての純度が低いから……という言い方ができるかもしれない。

 

精製された砂糖のリスク

砂糖の場合、純度が高くなると血糖値を急激に上昇させるようになる。

 

血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖グルコース)の量です。砂糖の主成分であるショ糖はブドウ糖と果糖が結合した二種糖です。精製度が高くなるほど消化・吸収されやすく、体内に入ると血糖値を急激に上昇させてしまいます。

血糖値の急上昇は肥満を招き、糖尿病、動脈硬化認知症、ガンなどさまざまな病気のリスクを高めることがわかってきました。甘いお菓子の大きなリスクのひとつが、この血糖値の急上昇です。

 

結局の所、お菓子や加工食品などが危険だとされるのは、「精製された物質で味付けされているから」ということになる。

そもそもの話、どのような添加物、化学物質も、もとを正せば自然界に存在するものを原料としてつくられているのだから、成分そのものが変質しているわけではない。

しかし、同じ成分であっても生成して純度が高まることが良くないわけだ。

 

小麦はなぜ悪いのか

もう1つ、本書では小麦の危険性について言及されている。

小麦の場合は精製されているわけではないのだが、現在出回っている小麦はグルテンという物質が多く含まれていて、それが問題なのだという。

 

グルテンというのはタンパク質の一種で、体内に入るとさまざまなタンパク質に分解されるのだが、それらのタンパク質が免疫機能のバランスを崩したり、腸の粘膜の炎症を引き起こしたりして、さまざまな不調の原因になるという。

グルテンについての認識が広まったのは、テニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチ氏の著書が翻訳された辺だろうか。

 

ジョコビッチの生まれ変わる食事 新装版

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グルテンを多く含む小麦は、確実に中毒をもたらします。これは、科学的に証明された、間違いのない事実です。

グルテンを食べると、胃でポリペプチド混合物というタンパク質に分解されるのですが、やっかいなことに、この物質は、血液脳関門(脳に有害な物質が入らないように、脳と脳以外を隔てるフィルター)を突破することが、アメリカの国立衛生研究所(NIH)のクリスティン・ジオドロ博士らの研究でわかりました。

本来、タンパク質のような分子が大きいものは血液脳関門を突破できません。ブドウ糖アミノ酸、ケトン体など、神経細胞に必要なものだけが厳選され、脳の中に入ることをゆるされているのですが、グルテン由来のタンパク質である小麦ポリペプチドは、この関所を通過できてしまうのです。

さらに、この小麦ペプチドは、血液脳関門を突破後、脳のモルヒネ受容体と結びつき、麻薬と同等の中毒症状を引き起こすことがわかりました(このモルヒネ受容体は、アヘンやモルヒネ、ヘロインを摂取したときに結合する受容体と同じもの)。

 

グルテンとリーキーガット

グルテンが具体的にどういう不調をもたらすのかということだが、やはり腸へのダメージが大きい。

最近聞くことが多くなったのが「リーキーガット」だ。

これは「漏れやすい腸」という意味の言葉で、腸内の炎症によって粘膜の細胞と細胞の間に隙間ができ、そこから、本来は血液中に送られない物質が漏れ出すことで体への不調を引き起こすものだ。

たとえば

・頭がすっきりしない

・下痢、便秘、腹痛

・頭痛や偏頭痛、めまい

・うつ症状

・倦怠感、疲労

・肌荒れ、ニキビ、じんましん、むくみ

などがリーキーガット症候群に該当する。

 

リーキーガットについては、こちらの本についても書かれているので、参考にされたし。

 

最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~ (ACTIVE HEALTH 001)
 

 

本書では砂糖や小麦の他にも、食塩や油の危険性についても書かれている。

まあ、あんまり気にしすぎると、それこそなにも食べられなくなってしまうのだが、私の経験からも、やっぱり炭水化物をあまり食べなくなってからいろいろと調子が良くなってきたのは事実。

ゼロか100かで考えると息苦しいから、「ちょっとマシなほう」を選び続けることで生活の質を向上させていくのがいいんじゃないかな、と思う。

 

後記

最近考えているのは、「おもしろさ」と「正しさ」はトレードオフの関係にある、ということ。

たとえば今回のエントリーで紹介した白澤卓二先生の著書『「砂糖」をやめれば10歳若返る!』というのは、厳密に言えば正しくない。

少なくとも論文でこんなタイトルはつけられないだろう。

この意味のままで厳密に言い換えるなら、『「砂糖」をやめれば肉体が10歳若返るくらいの効果が得られる可能性がある!』というのが正しい。

ただ、こんなタイトルの本は間違いなく売れない。

なんで売れないのかというと、これはおもしろくないからだ。

 

おもしろい(面白い)の語源については、「目の前がぱっとひらける」というところから来ているといわれている。

個人的な解釈を加えれば、「おもしろい=予想外」であるといえる。

4コマ漫画なども、4コマ目で予想外の展開が来るからオチになるのであって、4コマ目が予想通りの展開だったおもしろくはならない。

 

※逆説的だが、英語の有名なジョークに「ニワトリはどうして道を横切ったの?」「反対側へ行くためさ!」というものがある。もしこのジョークのどこがおもしろいのかわからないなら、その感覚は極めて正しい。なぜなら、このジョークは「世界一おもしろくないジョーク」として有名だからだ

 

 

正しいだけでは誰も耳を傾けてくれないが、そこにいい塩梅で「おもしろさ」を交えれば、人は興味を持ってくれる。

もちろん、おもしろさに継投しすぎて事実を歪めたり、誤解をされたりするのは本末転倒だけど。

その意味で、今回のエントリーは極力おもしろくないタイトルにしてみた次第。

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。