本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

ちょうどええSF~『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』のレビュー~

日テレの番組『人生が変わる1分間の深イイ話』で紹介されてから、「ヘドロパパ」として、クズ人間っぷりがフィーチャーされるお笑いコンビ「2丁拳銃(の小堀氏)」だが、私はけっこう彼らの漫才は嫌いじゃなくて、とくに「ちょうどええ」ネタはいまでもたまにフレーズが頭をよぎったりする。

 


2丁拳銃の漫才ライブ 「クイズ・ちょうどえぇ」

 

 

もくじ

 

その意味で言えば、この作品はいろいろな意味で「ちょうどええ」作品だった。

 

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 


この本は盛りだくさんである。


●太平洋戦争で日本がアメリカに勝利した「歴史改変世界」
●巨大ロボット「メカ」による胸熱なバトルシーン
物語のカギを握る謎のオンラインゲーム「USA」
●拷問、人体改造、首切り! スプラッター満載
●無能でやる気ゼロの主人公日本万歳な特高女子のデコボココンビ
●アングラな世界で無謀なギャンブルバトル
●義手! ガンアーム! レーザー光線!


こんな風に書くと、いかにもマンガとアニメとゲームが好きなオタク外国人が書いた荒唐無稽なSFに思えるかもしれない。しかし、それらの要素が強すぎて子どもっぽさを感じてしまうかといえば、そんなことはまったくない。

 

交差する時系列とちょうどいいキャラクター設計


過去と現在を行ったりしたりしながらゆっくり進む物語は、少しずつ登場人物たちのキャラクターの薄皮をはぎながら、ドラマに深みを持たせている。特にエピローグの見せ方は秀逸だ。最後まで読み終えると、この情報を知った上で、もう一度最初から読みたくなる。

 

たしかに、無気力な主人公、怒りっぽくて「帝国万歳」なヒロイン、肉体改造しているアングラの帝王、バリバリ関西弁の女子など、いささかステレオタイプでアニメチックなキャラクターも多々登場する。しかし、それらのキャラクターに引っ張られない落ち着いた物語の進み方は、ちょうどいい。

 

ちょうどいい「日本っぽさ」


また、著者はかなり日本の文化に深い造詣を持っているようで、わざとらしさを感じさせない「さりげない日本らしさ」がさまざまなシーンに登場する。それにより、この作品の舞台が「日本合衆国(USJ)なのだ」ということを思い出させる。

 

登場人物たちが純潔の日本人ではなく、いろいろな国籍のハーフたちでありながらUSJの一員となっているところも、じつは民族の血が薄まるのは支配する側もされる側も同じことなのだということを思わせていて、リアリティがあり、ちょうどいい。

 

ちょうどいいロボットバトル


また、私が何よりも「ちょうどええ」と思ったのは、装丁画に描かれているUSJの最強の軍事力・巨大ロボット「メカ」の使い方だ。

 

表紙から誤解してはいけないが、主人公の石村紅功(いしむら・べにこ)も、彼の相棒となる特高警察の槻野昭子(つきの・あきこ)も、メカのパイロットではないし、作品を通じてメカを操縦することは一切ない。装丁は『パシフィック・リム』のようだが、ぜんぜん違う。

 

パシフィック・リム(字幕版)

パシフィック・リム(字幕版)

 

 

そもそも、メカのバトルシーンは、本書では2回だけだ(しかも、内1回は過去の回想)。それ以外に、USJの武力・対テロ抑止力としてメカが描写されることはあるが、ぶっちゃけ、メカはこの物語においてあまり重要な役割を占めてはいない。


しかしその一方で、戦うときにはガッツリ戦う。メカ同士のバトルシーンは描写が細かく、ソードを使って斬り合いをするところなんかはしっかりツボを抑えている。

 

説明しなさ加減もちょうどいい


もうひとつは、メカの動力源や駆動メカニズムなど、細かい設定がほとんど明らかにされない点だ。パイロットが被曝することから原子力が使われているようだが、具体的にどのようなシステムなのかなどは、あまり説明されない。しかしそれも、このメカが主人公ではないからこそ、それでいいのだと思える。


作品全体の雰囲気としては、『虐殺器官』や『マルドゥック・スクランブル』が近いだろうか。本格SFの世界観ながらも、キャラクターに適度な個性を持たせつつ、エンターテイメント性も兼ね備えている。

 

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 
マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)

 

 
なお、本書はとかくディックの『高い城の男』と比較されて語られるようだが、私は読んだことがないのでわからない。読んでみようと思う。

 

高い城の男

高い城の男

 

 

とにかく、見た目以上にけっこうしっかりしたSFなので、ラノベみたいなものをイメージして手に取ると苦戦するかもしれないが、しっかり腰をすえてよみ進めれば、かなり楽しめるはずだ。

 

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 上 (ハヤカワ文庫SF)

 
ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン 下 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

今日の一首

f:id:Ada_bana:20171127170814j:plain

 

21.

今来むと いひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな

素性法師 

 

現代語訳:

「すぐ行く」とあなたが言ったから9月の長い夜を待っていたのに

もう西の空で有明の月になってしまいました。

 

解説:

作者は男性だが、女性の気持ちを想像して読んだ歌。じつは解釈の方法は2つあって、一晩の出来事であるという「一夜説」と、毎晩待っている間に9月(長月)になってしまったという「月来(つきごろ)説」がある。ちなみに、百人一首を選んだ藤原定家は「月来説」を支持していた模様。

 

 

後記

 

ちょっと前まで「ツムツムランド」をやっていたけど


もう飽きた。

 

いまはすっかり動物の森ポケットキャンプです。

 

 

 

私はネコの「1ごう」くんが好きなのだが、彼のデザインは某ネコの地縛霊に似過ぎてはいないだろうか……

 

 

あと先日、スーパー久しぶりにディズニーランドに行ってきて、ついに「例のあの人」を写真に収めてきた。こちらだ。

 

 

知らない人が見たら「ミッキーがいない間にミニーを誘惑している怪しいおっさん」だが、彼はウォルト・ディズニーのお兄さんだが、詳しくはこの本を参照のこと。

 

ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯 完全復刻版

ウォルト・ディズニー 創造と冒険の生涯 完全復刻版

 

 

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。