本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

お金持ちになるデメリット~『お金持ちの教科書』のレビュー~

今回紹介する本はこちら。

 

お金持ちの教科書

お金持ちの教科書

 

 

経営やIT、資産運用のコンサルをする傍ら、自身も億単位で金を動かしている著者が、お金持ちの実態を明らかにした一冊。

 

もくじ

 

お金持ち、億万長者、大富豪、といったワードは、ビジネス実用書でよく出てくる鉄板ワードの一つだ。結局、みんなカネがほしい。

最近だと、こちらの本も売れ行きがいい。

 

マレーシア大富豪の教え

マレーシア大富豪の教え

 

 

本書がおもしろいのは、世間一般で「お金持ち」として一くくりにされてしまいがちな人々を厳密に定義づけ、分類している点だ。

 

お金持ちの境界線は「1億円」と「3000万円」

 

まず、お金持ちの定義のひとつは「1億円」である。1億円の金融資産があれば、それを運用して1年間に3.5%くらいの利回りを期待できる。1億円の3.5%は350万円なので、これなら働かなくても暮らしていけるといえるわけだ。

 

ちなみに、年収1000万円くらいだと生活レベルはそれ以下の人々とそんなに変わらない。一般庶民と生活のレベルが明らかに変わってくるのは、年収3000万円を越えてきたあたりからだ。このくらいになると、高級レストランに行くのではなく、自分が高級レストランのオーナーになる、という発想をするようになる。

 

その資産はストックか、フローか

 

ただし、同じお金持ちでも、ストックが多いのか、それともフローが多いのかによって、その性格はまったく異なる。

 

たとえば、代々続いている由緒ある家柄はたしかに土地や建物はたくさん持っているかもしれない。しかし、「現金の入り」を見れば、じつはそこらへんにいるサラリーマンとそんなに変わらないことも少なくない。

そもそも、日本は相続税がやたら高く、最大だと資産価値の55%をカネで支払わなければならない。そのため、相続税を支払うために土地を切り売りしなければならない“お金持ち”も少なくないわけだ。

 

じゃあ、たとえばIT企業の社長などは毎月たくさんのお金が入ってきて楽な暮らしかといえば、案外そうでもない。

そもそも、そういう人たちはキャッシュを多く持っていても、それと同じくらいたくさんの借金をしていることがある。たとえば、ベンチャーや中小企業の場合、銀行からお金を借り入れるには社長の個人保証を求められることが少なくない。これはつまり、もし事業が失敗したら、社長個人にその債務が降りかかってくるということで、自己破産は必至だ。

 

お金持ちはだいたい不安にさいなまれている

 

一般庶民は、お金がたくさんあれば金銭面での不安が消えるから、精神が安定すると思いがちだ。

しかしどっこい、そうでもないらしい。以下引用。

 

サラリーマンを経てゼロから会社を立ち上げ資産家となったSさんは、今では十億単位の財産を持っているが、まったく安心感を得られないどころか、ますます不安になっている。Sさんが会社を立ち上げたのは、ある程度の財産を築いて安心した人生を送りたかったからだ。

(中略)

たしかに、Sさんはいくつかの事業を軌道に乗せたことによって、たとえ病気になっても今の生活水準を維持できる仕組みを手に入れた。だが、今度は別の不安がSさんを苦しめている。今の事業がダメになったら、自分には何もなくなってしまうのではないかという恐怖である。

ある心理カウンセラーによれば、Sさんのようなケースはごく当たり前のものだという。人間の欲求には限りがなく、ひとつの課題を克服しても、すぐに次の課題で頭を悩ませてしまう。

(中略)

お金持ちの場合、失いたくないものがあまりにも大きいため、お金をなくすのではないかという不安な気持ちは想像を超えるものになるらしい。

 

行動経済学を学べばわかるが、ダニエル・カーネマンらが行った実験によって、人間は意思決定を行う際、利益よりも損失を回避しようとする傾向が強くなる(損失回避性)。人間は得する喜びよりも、損する悲しみのほうが大きく感じる。

 

お金持ちには友達がいない

 

都内に住む資産家のMさんは、大学の同級生たちとの飲み会が苦手だ。

(中略)

多くの友人たちは、30年ローンで公害のマンションを購入している。一方Mさんは、港区の高級マンション住まいだ。最近は無理してローンを組まずに賃貸のままでいる人も増えてきたが、Mさん世代はいわゆる昭和な人が多く、マイホームは絶対的な憧れである。Mさんに言わせると、住宅ローンの自虐ネタが出てくるとピンチだという。

「いやー、オレも30年間マンションの奴隷だよ」

「もしオレが今死んだら、ローンはチャラになって嫁さんは喜ぶかも」

「お前も完全に守りに入ったな」

ひとしきり自虐ネタを疲労し合った後に、皆はハッとMさんだけはそうではないことに気づき、「お前は違うからなあ」とボソッと言われてしまう。最後に割り勘するときも「また無駄金を使ってしまった! 止められないんだよな」などのセリフの後に「あ、お前は関係ないか!」と一言加わってくる。

 

ちなみに、お金持ちの人は時間の感覚が一般人とはまるで違う。彼らは基本的に時間もお金で換算するので、「無駄な時間=無駄な出費」なのだ。とくに、年収が上がれば上がるほど、その人の一時間あたりの価値は上がっていくので、ヘタすれば1時間無駄話をするだけで1万円以上損することだってある。

 

とはいえ、気の置けない仲間とわいわいやるのは大切なことだし、意味があるのではないだろうか? だが、お金持ちにとってはそうでもないらしい。Uさんはいう。

「私も昔はごくふつうのOLでしたから、そのような生活をしていました。でも、昔の私も含めていくのですが、庶民って話がいつも同じなんですよね」

(中略)

では、お金持ち同士は仲良くならないのだろうか? Uさんの答えはこうだ。

「もちろん、お金持ち同士の集まりというのはあります。ここではあまり気兼ねなくお金の話もできるので助かってます。ただ、皆さん用心深いので、核心部分はなかなか話しません。なので、本当の友だちにはなれませんね」

 

お金持ちの行動習慣

 

本書は他にもいろいろ面白いことが満載なのだが、ひとつずつ書いていくと膨大な文章量になるので、以下、個人的になるほどと思ったことを箇条書きにしていく。詳しく知りたい人は本書を読んで欲しい。

 

●お金持ちがよく「ありがとう」を口にするのは、自分が感謝の言葉を述べる効果をよく理解しているから

●お金持ちは外見的なコンプレックスを持っていて、それを払拭するためにお金を稼ぐ人が少なくない

お金持ちは人に感謝をしない。感謝は態度や言葉ではなく、行動で表現する

●お金持ちは人に裏切られたりしても、必ず自分のせいにする

●お金持ちはお金の話をよくするし、人が金の話をするのも嫌がらない

●お金持ちは必ずリスクをとる

お金持ちになれるように考えを変えるには30代前半がタイムリミット。30代後半以降は、もう思考や行動を変えるのは難しくなる

 

お金持ちになるメリット

 

さて、今回はお金持ちのデメリットばかりを書いてきたが、それでもお金持ちになるメリットはいくつかある。

 

まず、自分が本当にやりたいことがわかるようになる

 

サラリーマンを辞めて実業家になったある男性は、昔はラーメンの食べ歩きが趣味だった。自分のブログに、食べに行ったラーメン店の情報を細かく書き込むくらい、食べ歩きにハマっており、その趣味に没頭しているときが一番幸せであると本気で思っていた。だが知人から誘われ、ある事業に共同創業者として参加してから、彼の価値観は大きく変わってしまった。事業は大成功し、創業者のひとりである彼には、かなりの額のお金が舞い込んできたのである。

彼は、事業を立ち上げてからもラーメンの食べ歩きを続けていたが、あることをきっかけに、それをピタッとやめてしまった。(中略)

気がついたときには、おいしいラーメン店めぐりにはすっかり興味がなくなってしまっていた。自分が食べたい味は、自分が所有する店で食べることができる。他の店に行く必要がなくなってしまったのだ。

 

お金があることのメリットは、自分がやって見たいと思ったことを実現できる点だ。これはよくいわれることだが、自分が「コレが好きだ」とおもっていることが、本当にそうなのかは疑わしい。もっと別のことにチャレンジしたら、そっちのほうに興味を奪われることはよくある。

 

お金は不幸を減らしてくれる

 

お金で幸せは買えない。しかし、お金は確実に不幸を減らしてくれる。

というよりも、お金が十分にあると、問題を解決するための手段に広がりが出るのだ。以下、長いが引用しよう。

 

資産家であるBさん夫妻には、大学に入ったばかりの一人娘がいるのだが、夏休みに彼氏ができたという。(中略)

季節が変わり冬になったある日、娘さんは、お父さんには絶対内緒でという条件で、突然母親(Bさんの奥さん)に彼氏のことを相談した。彼氏は同い年のミュージシャンの卵で、バイトをしながらストリートで音楽活動をしているという。

(中略)

さすがにBさんに内緒にしておくことはできない。奥さんは娘に「私がお父さんに話しておくから、後は自分の口で説明しなさい」と言い、Bさんにすべてを話して、娘の話を聞いてくれるように頼んだ。「とにかく、頭ごなしに否定しないでね」と言ったのだが、Bさんの反応は意外にも「わかった。俺に任せておいて」という気楽なものだった。

1週間後、Bさんは娘の彼氏を家に招待し、食事をしながら聞いた。

(中略)

Bさん「わかった。最終的には結婚は親が決めることじゃない。でも2人はまだ未成年だし、父親としては、相手にちゃんと生活能力があるかを見極めたいという思いがあることは理解できるだろ?」

彼氏「はい……」

Bさん「ところで、話は変わるんだけど。君は○○音楽院って知っているよね?」

(中略)

Bさん「費用は全額出すから、留学してみないか?」

彼氏「えっ……」

Bさん「いい成績を残して日本に帰ってくれば確実にプロとして食っていけるだろ。そうなったら結婚してもいいよ。もし留学途中で気持ちが冷めたら別れればいい。たとえそうなっても、卒業するまでの費用は責任を持つから気にしなくていい。ただ条件は、留学中には娘と同棲しないことだ」

 

ちなみに、その彼氏は留学した半年後、留学先の日本人留学生と付き合い始めて、娘さんとは別れたらしい。ある意味で「金で物事を解決」した例だ。

 

お金持ちとは何か?

自分は本当にお金持ちになりたいと心の底から思えるのか?

そんなことを考えさせてくれる良書である。

 

お金持ちの教科書

お金持ちの教科書

 

 

今日の一首

 

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72

音に聞く たかしの濱の あだ浪は

かけじや袖の ぬれもこそすれ

祐子内親王家紀伊

 

現代語訳:

(浮気者として)うわさに名高い高師の浜の気まぐれな波のように、あなたの言葉は気にかけないようにします。袖をぬらしてしまいますから。

 

解説:

一見するとシンプルに光景を描写している歌のようだが、かなり技巧が凝らされている。「高師の浜」は現在の大阪府堺にあったところだが、次に続く波を表現する「高いとかかっている。また、「あだ浪」は「意味もなく立つ浪」の意味だが、じつは「あだなり」は「浮気な」という意味もある。濡れるのも、波に触れたからと、涙を流しての、どちらとも受け取れる。

 

後記

映画『ウォークラフト』を見た。

 

ウォークラフト (字幕版)

ウォークラフト (字幕版)

 

 

オンラインゲームが原作で、いわゆる指輪物語系のファンタジーな世界が舞台なんだけど、特徴的なのが敵役として登場することが多いオークが主人公の一翼を担っている、という点。

で、クソだった。前半とかCGとか世界観はいいんだけど、後半にかけてがクソすぎる。いろいろご都合主義で、超展開で、続編を作る気満々だったようで、物語がもろもろ片手落ちどころか99手落ちくらいしている残念な感じだった。後半にかけてがとにかく雑すぎる。

『流浪に剣心』とか『ちはやふる』とか、人気漫画が原作で最初から前後編を立て続けに上映するならともかく、見切り発車の状態で続編ありきの映画を作るのはやはり握手なのだろうなあと思った次第。

 

P.S.

ちょっと海外に行ってきます。

 

 

というわけで、今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。