地政学がわかれば、歴史やニュースがおもしろい~『あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学』のレビュー~
今回紹介する本はこちら。
国際政治学者の先生が書いた地政学の本だ。
地政学とはなにか?
地政学というのは、本書の説明に沿えば「地図を戦略的に見る見方」である。
メルカトルによって世界地図ができあがってから、世界各国のリーダーたちは自分たちの国がどこにあり、どんな国がどのくらいの広さで、自分たちの国からどのくらいは慣れているのかを視覚的にわかるようになった。そのため、あらゆる戦略が地図をベースにして組み立てられるようになった。
地政学がわかると、歴史上の様々な出来事がわかるほか、現在進行形で進んでいる社会問題のカラクリが見えてくる。たとえば、
・なぜ、イギリスは極東の島国・日本と日英同盟を結んだのか?
・なぜ、日本は第二次世界大戦で敗れたのか?
・なぜ、アメリカがキューバと国交を正常化させたことがオバマ政権の数少ない功績なのか?
・なぜ、中国は強固に尖閣諸島の領有権を主張するのか?
などなど。
後半は日本礼賛的な書き方が多い
ただし、本書の場合、特に後半になると、著者の藤井氏による日本礼賛気味な歴史観、世界情勢観が隠す様子もなく出てくる。また、基本的にリアルタイムにおける最大の問題ごと(だと藤井氏が考えている)中国の世界覇権を狙うリスクなどの記述も増えてくるので、そこら辺の意見を異にする人にはあまり好ましい一冊とは言えないかもしれない。
※余談だが、右寄りな姿勢の人は中国を「チャイナ」もしくは「シナ」と呼ぶことが多い
とはいえ、地政学を知っていると歴史やニュースがさらにおもしろくなる。また、地政学をテーマにした本のなかでは「ランドパワー」「シーパワー」「ハートランド」など、地政学独自の用語を分かりやすく、しかも読者を飽きさせないようにおもしろく解説してくれるので、読んでみて損はない一冊だ。
地図を逆さに見てみると
地政学に関する記述もおもしろいが、個人的に本書で一番興味深かったのは、冒頭部分で述べられる、「地図の見方」についての藤井氏の見解である。
これを見て欲しい。
これは、日本でよく見る世界地図を逆さにしてみたものである。
以下、引用しよう。
よく考えてみれば、私たちの地球は宇宙空間に浮いていて、その宇宙空間に上下があるわけではない。私たちが宇宙の図を考えるときも、太陽系(ソーラーシステム)のなかで地球は常に北極を上にして太陽の周りを公転しているイメージを持つわけだが、別に縦に回っているとイメージしようと、斜めに回っていると考えようと自由なわけだ。
ただ、図を描くときの便宜上、あるいはそのほうが理解しやすいからそう描かれているにすぎない。地図も同じである。
ある天文学者が言っていたが、天動説(タラメイック・セオリー)というのはある意味では正しいそうである。天体の運動を説明するのに、地球が止まっていて全宇宙は動いていると説明してもかまわないというのだ。運動というのは相対的なものだから。ただ、そのような方法をとるとすべての天体は、非常に複雑な動きになるという。
ともかく、筆者が言いたいのは、地図を見るときは、いわゆる常識というものの枠からはずれろ、ということである。より正確に言えば先入観から自由になれ、ということなのだ。
「天動説もある意味では正しい」というのは、おもしろい視点である。たしかに、宇宙空間で2つの物体しかなく、片方だけが移動をしていたとき、果たしてどちらが動いていて、どちらが動いていないのかを断定するのはあまり意味がない。
先ほどの逆さ地図も同じで、普段よく見ている地図だと、まるで本州の上に北海道があるように見えるが、べつに北海道の上に本州があると考えたって間違いではないわけだ(実際、南半球に位置するオーストラリアでは逆さの地図が販売されているらしい)。
東京-モスクワと、東京-シドニーの距離は同じ
また、地図上で測ると、東京からモスクワまでの距離と、東京からシドニーまでの距離は同じだという。また、東京から韓国までの距離と、東京から沖縄までの距離もほぼ同じだ。
しかし、私たちはどうしてもモスクワよりシドニーのほうが近く感じるし、韓国よりも沖縄のほうが近く感じる。それはアクセスのしやすさとか、同じ国か否かという心理的な要素が実際の距離をゆがめてしまうのである。
私たちはなにかを見るときに、どうしても先入観や固定観念の影響を受け、物事をゆがめてみてしまう。しかし、ちょっと視点をずらしてみると、これまでとは異なる視点から物事を見て、新たな事実を発見できる可能性もあるのだ。そのことを本書はまた、伝えてくれているのである。
後記:『名探偵コナン から紅の恋歌』見てきた
先日、劇場版名探偵コナンを見てきた。
去年の『名探偵コナン 純黒の悪夢』も鑑賞したが、個人的には今年のほうが好みだった。というのも、ちゃんと殺人事件が起きて、その犯人探しがメインストーリーになっているからだ。
ただし、残念な点がある。事件を紐解くヒントのひとつに百人一首が取り上げられているのだが、そのかかわりがちょっと弱かったような気がするのだ。とはいえ、個人的には「百人一首が暗誦できたらかっこいいなあ!」と思ったので、ついついAmazonで百人一首を衝動買いしてしまった。後悔はしていない。
将棋盤や百人一首がある家ってなんかよい。
今回はこんなところで。
それでは、お粗末さまでした。