本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

「仮説」とは「妄想」である~『ぼくらの仮説が世界をつくる』のレビュー~

f:id:Ada_bana:20170412180827j:plain

最近はまた、PDCA系の本が流行っている。


おそらくその火付け役の一つになったのが、これだろう。

 

鬼速PDCA

鬼速PDCA

 

 

いまさらPDCAについて細かい説明はしないので、知らない人は検索して調べてほしいが、PDCAのなかで一番難しいのはどこか、ご存知だろうか。

 

じつは、一番難しいのは最初のステップ「プラン」である。というか、ほとんどのひとがここができていない。

プランというのは計画のことだが、これは別に進捗表を作るとか、締め切りを設定するとか、そういうことだけではない。

言ってみれば、「仮説をつくる」ということだ。

 

『ぼくらの仮説が世界をつくる』

 

「仮説をつくる」とはどういうことかというと、「こうすればこうなるんじゃないかなぁ」と、行動する前に考えることだ。

というわけで、今回紹介するのがこちら。

 

ぼくらの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

 

 

ご存知の人も多いと思うが、『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』を手がけた敏腕編集者・佐渡島傭平氏のビジネス書である。

 

ドラゴン桜(1) (モーニングコミックス)

ドラゴン桜(1) (モーニングコミックス)

 

 

宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス)

宇宙兄弟(1) (モーニングコミックス)

 

 

本書のメッセージは、

「仕事をするときには仮説をつくろうね!」

ということである。

 

仮説=「こうしたらいいのに」

 

どんな人でも働いているときに「もっとコレをこうしたらいいのに」と思うことはよくあると思う。それが大事なのだ。

たとえば、著者の佐渡島氏は『宇宙兄弟』を手がけた当初のことを述べている。

このマンガは当初、圧倒的に男性読者が多かった。しかし、当時のヒットマンガは『聖☆おにいさん』をはじめ、女性に支持を受けるものばかりだった。そこで、佐渡島氏は「女性にこの作品を着目してもらえれば、もっと売上が伸びるのではないか」と考えたのである。これが仮説だ。

 

仮説をつくらないままプロモーションを行うと、まずいことが起こる。プロモーションが成功しても失敗しても、その原因が何か良くわからないままになってしまうのだ。そうすると、改善策が見えてこない。

仮説を立てていれば、実行(ドゥ)が功を奏さなかったら、それは仮説が間違っていたことになる。そこで、別の仮説を考え直す(アクト)必要性が生じるわけだ。

 

ほかにも、佐渡島氏は本書の中で、おもに出版業界をめぐる環境の変化について、さまざまなことを述べている。「今後は共感が大事になるんじゃないか」「作家のエージェントが重要になるんじゃないか」などだ。

これも「仮説」である。「こうなるんじゃないか」という考えがあるから、「じゃあどうするか」という考えにつなげられる。

 

仮説=妄想

 

仮説という言葉が堅苦しくて、ハードルが高そうに感じるなら、「妄想」といってもかまわない。

「まったく根拠はないけど、なんとなくこうなるんじゃないかな」という思考は、絶対に誰しも、少なからず持っているはずだ。しかし、多くの人はそういう妄想をすぐに忘れてしまう。

 

私が個人的に思うのは、人はもっと「こうなるんじゃないかな」という、全く根拠のない妄想を大事にしてもいいのではないかということである。(これもまた、私の「仮説」である)

別にそれを誰かに話したり、SNSに書き込んだりする必要はない(そういうことをすると、絶対にそれを否定する人が出てくるから)。でも、そのままにしておくと忘れてしまうから、書きとめておくくらいはしても良いかもしれない。

 

とりあえず、本書は結構おもしろくて、どの職種の人でもタメになるような物事の考え方についてわかりやすくまとめられていたので、気になった人は読んでみてもいいと思う。

 

おわりに

 

ただ、ちょっと難しいポイントがある。

世の中には、「仮説を作るまえにすぐ行動しろ」というアドバイスもあるからだ。『結局、すぐやる人がすべてを手に入れる』などが代表的である。

 

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

結局、「すぐやる人」がすべてを手に入れる

 

 

これはこれで正しい。

ただし、こちらの場合は「やらなければならないこと」がメインだ。これを先延ばしにしてしまう人間は、まず仕事ができない。

一方、「すぐやる」に適応させるべきではないのは「やりたいこと」だ。自分がやりたいと思ったことはむしろすぐに実行するのではなく、その前に仮説を立ててからのほうがいいように思う。

だから、もしかすると本書が役に立つのは、すでに仕事に対してモチベーションが高い人に限られるかもしれない。そもそも仕事にやりがいを見出していなかったり、積極的にアイディアを提供しようという姿勢にかけている人は、本書を読んでもあまり意味がないだろう・・・・・・ということは付け加えておく。

 

ぼくらの仮説が世界をつくる

ぼくらの仮説が世界をつくる

 

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。