本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『負けない技術』を読んで“強さ”を考える

「Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-」を一通り見た。

 

もくじ

 

 

最近、アニメを見始めても途中でみるのをやめてしまうのが多くて*1、この作品もそのパターンに陥っていたやつだったのだが、正月休みを利用して見直したわけだ。

キャラデザとか色使いとはどことなく『ペルソナ』シリーズを意識したような感じだが、ギャグにしろキャラクターの作り方にしろ、どことなく薄っぺらさを感じてしまう。

もうちょっと、オカルト話を短編的な切り口にして一話完結にして、じつはそれらが一つの事件につながる……とかいう構造だったらもっとおもしろかったのかもしれない。

 

『負けない技術』

 

それはともかく、今回紹介するのはこちら。

 

負けない技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「逆境突破力」 (講談社+α新書)

負けない技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「逆境突破力」 (講談社+α新書)

 

 

内容は、タイトルのまんまである。

麻雀の裏世界で圧倒的な強さを誇った雀鬼こと桜井章一氏が、自分の勝負スタンスについて明かす一冊。

ただ、決して麻雀の実用書ではなく、「勝負に臨むうえで大切な心構え」というものを述べているので、仕事をはじめとする人生のあらゆるシーンで持っていたほうがいい姿勢を学ぶことができる一冊となっている。

 

いわゆる「普通の自己啓発書」とはちと違う

 

ジャンルは、おそらく自己啓発に分類できる。

ただ、徒花はそれなりの数の自己啓発書を読んできたが、この本に書かれている内容はけっこうほかの自己啓発書とは正反対のことを多く述べていて、そこが興味深かった。

ただしもちろん、本書の中で述べられているのはあくまでも桜井氏が自身の経験から導き出した我流のテクニックや心構えばかりなので、それを真似したところでどれほどの結果が出るのかは保証できない。

 

ちなみに、本書は下に紹介している書籍の第2弾として出されたものであるが、コチラのほうが人気があるようだ。

 

人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」 (講談社+α新書)

人を見抜く技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「人間観察力」 (講談社+α新書)

 

 

今回のエントリーでは本書の中から、ほかの自己啓発書ではなかなか述べていないことを一部、紹介していく。

 

勝とうとすると、勝てない

 

タイトルにもなっているが、必要なのは「勝ちたい」という気持ちではなく「負けたくない」という気持ちである。

そもそも「勝ちたい」というのは人間だけが持っている欲求であり、それは必要以上に相手を追いつめてしまう原因になる。

それだけではなく、「勝ちたい」という思いが強すぎるがゆえにテクニックに終始しすぎると、それは結果的に自身の内面的な弱さにつながっていく。

 

ルーティーンはいらない

 

プロアスリートなどはルーティーンをやったり、ジンクスを信じたりするが、桜井氏はそうしたものの危険性を指摘する。

つまり、ルーティーンやジンクスを信じることは、「それをやらないと勝てない」という意識につながってしまうからだ。それは本当の強さではない。

そもそも、勝負を前にして確証や保証を求めるのは間違ったスタンスである。

ではなにが、必要なのか?

 

直感を信じる

 

大切なのは「なんとなくこうだと思う」という自分の直感を信じることだ。

それは、理屈で考えればどう考えても間違いにしか思えないことかもしれない。

しかし、現代人は頭で物事を考えすぎている。

直感に従って物事を決めてみれば、じつはそれがうまくいく

そこにはもちろん確証がないし、リスクが伴うかもしれないが、そういうリスクがあることを受け止めたうえで自分の「なんとなく」を信じてみることができる者は、強い。

 

百兎を追え

 

現代では、いろいろなものを同時に追いかけることはよくないとされる。

ひとつのことに集中して、その筋のプロフェッショナルになると称賛される傾向がある。

しかし、そういうオタク or マニアになることは強さからかけ離れる。

本物の強さはスペシャリストではなく、ゼネラリストである。

そして、いろいろなものに手を出した人間のほうが、実は自分が本来持っている強みを思いもしなかった方向に延ばすことができる可能性を秘めている。

だから、いろいろなことを同時に実行したほうがいい。

 

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手の内は明かせ

 

手の内を隠すのは賢いことのように思えるが、それはすなわち「自分には見せたくない弱点がある」ということの裏返しである。

しかし、真の強者というのはたとえ相手に自分の弱点を知られたとしても、それでも相手と戦える強さを持っている。

それを隠そうとしてしまうことは、心理的な側面ですでに相手に敗北しているも等しい。

 

約束を「相手」としてはいけない

 

すべての人にはチャンスが与えられている。だが、それに気づいて活かせる人と活かせない人がいる。

それは、時間に対して適切な間合いをとれているか、いないかの違いだ。

時間と間合いを取るためには「時間に遅れない」ということを意識することが大切だが、たとえばそのとき、「相手との約束」と考えてはいけない。

約束は相手とするものではなく、自分自身とするものである。自分自身との約束を破らないようにすることこそ、時間との間合いをとれるようになるために最も重要なことだ。

 

加害者意識を持つ

 

人間はすぐに被害者意識を持ってしまう生き物だ。

だから、何か悪いことが起こると、自分以外の何か(他人、経済状況、社会、運など)のせいにしてしまう。

しかし、それではいつまでたっても強くなれない。

そこで必要なのが加害者意識……つまり「自分も何かが悪かった」という思いを持つことである。

ただし、これもバランスが重要で、加害者意識が強すぎると自己嫌悪という負の感情を生み出してしまうので、注意が必要でもある。

 

「同じミスは二度としない」という考え方の愚かしさ

 

ミスをしたら、それを反省してはいけない。

むしろ、自分が犯したミスを客観的に見て、それをおもしろがれるだけの余裕を持っていることが大切だ。

そうやって客観的に、しかも楽観的にミスを見つめることができたとき、はじめてそのミスを意味を持ち、強さを補強してくれるものになる。

「ごめん、悪かった。もう一度やらせて」

このくらいの軽いノリでミスを受け止めればいい。

 

「守り」の姿勢はダメ

 

勝負には「攻め」と「守り」があると思っている人が多いと思うが、「守り」というスタンスはあり得ない選択肢である。

なぜなら、守りというのは「逃げ」というスタンスにつながるからだ。

そこで大切なのは、「守り」ではなく「受け」というスタンスをとることである(BL的な意味ではなく)。

相手の攻撃を受け止めてそれに対処することこそが、攻めに対応する適切なスタンスである。

だから、勝負をするうえで「守り」のスタンスを採用することはあり得ない。

 

おわりに

 

異常のエントリーを読んでもらえればわかるように、本書の内容はかなり抽象的(核心的)で、しかもレベルが高い。

だから、本書の内容を実践するのはかなりハードルが高いと思う。

もちろん、本の中ではもう少し丁寧に説明されているので興味がある人は読んでみて欲しいが、桜井氏はすでに達人の域に達している人物なので、凡百が気軽にまねをしようとしてもなかなか難しいところはあるだろう。

 

いろいろな本を読んでいると思うのだが、武道にしろ、ビジネスにしろ、麻雀にしろ、アスリートにしろ、あらゆるジャンルでトップに近い位置にいる人たちが共通して持つようになる感覚というのは

「勝たずして勝つ」

というものではないだろうかと考える。

弱い人間ほど自分以外の存在を「敵」と「味方」に色分けし、敵を叩き潰して自分の優位性を保つことを考える。

しかし、本物の共じゃになると既に彼らの視界には「敵」とか「味方」という色分けは存在しなくなり、だからこそ「勝つ」とか「負ける」という概念がなくなっていくのだ。

 

だからそもそも「勝ちたい」という気持ちも低俗だが、じつは「負けたくない」という気持ちを持っていることも、実はまだ次元の低い意識なのかもしれない……というのをボンヤリと考えたりした。

 

負けない技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「逆境突破力」 (講談社+α新書)

負けない技術──20年間無敗、伝説の雀鬼の「逆境突破力」 (講談社+α新書)

 

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。

*1:自分がおっさんになったナァと思う瞬間でもある