本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『伏 鉄砲娘の捕物帳』がよくわからなかったぞ

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理解力はあるほうだと自負している…………徒花です。

もくじ

今回紹介するのはこちら。

江戸時代後期の作家・曲亭馬琴滝沢馬琴)が書いた読本(小説)『南総里見八犬伝』をモチーフにした大江戸ファンタジー。原作は桜庭一樹氏が書いたこちらの小説。

伏 贋作・里見八犬伝

伏 贋作・里見八犬伝

 

2012年に公開された劇場アニメーション。前々から気になってはいたが、見てみたので感想を。

あらすじ

時は13代将軍・徳川家定の治世。陸奥で祖父とともに猟師として暮らしていた少女・浜路(はまじ)は、祖父の死をきっかけに江戸に出ていた兄・道節(どうせつ)の手紙で江戸に移り住むことになった。

じつはそのころ、江戸では「伏(ふせ)」と呼ばれる半人半犬の怪物が暴れまわっており、人の生魂を食らう騒動が起きていた。幕府は伏退治に多額の懸賞金をかけており、道節は猟師として腕の立つ浜路の力を借りようと、彼女を江戸に呼び寄せたのである。8匹いるとされる「伏」は、すでに6匹が狩られており、残すところあと2匹となっていた。

しかし浜路は江戸についた初日、いきなり「伏」のひとり・信乃(しの)と侍たちの争いに巻き込まれ、彼女は結果的に信乃を助けてしまう。信乃はそのお礼を兼ねて(たぶん、初めて会った時点で信乃は浜路に惚れている)、吉原で浜路に美しい着物やかんざしなどをプレゼント。次第に、浜路も信乃に想いを寄せていくようになるのだった。

しかし、いよいよ7匹目の「伏」も狩られ、残るは信乃ひとりとなる。狩る者と狩られる者……お互いに想いを寄せるふたりの物語は、どこに収束するのか。

いってしまえば「ガール・ミーツ・ボーイ」で、田舎から都会に出てきたひとりの少女が、男の子と出会って成長していく青春物語である。ただし、普通に生首が出てきたり、血が滴る描写が多かったり、バンバン人が死ぬので、パッと見の雰囲気よりも刺激は強めだ。

キャラがかわいくない。でも、たぶんそれは故意

まず見ていて思ったのが、「女の子がことごとくかわいくない!」ということ。主人公の浜路は見ているとだんだん可愛く見えてくるが、ほかの女はみんなブサイクなのだ。舞台が吉原になった場面では、さすがにもうちょっときれいな顔の女が出てくるかと思ったが、吉原一の女も……うう、かわいくない!

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登場人物 | 映画「伏 鉄砲娘の捕物帳」公式サイトより

「この映画を作ったスタッフの美的センスは狂ってるんじゃないのか!」と私は憤慨したが、たぶんこれ、制作側の計算だ。なぜなら、おそらく本作で一番大事な演劇のシーンで、とんでもない絶世の美女が登場するからだ。おそらく、このシーンを引き立てるために、吉原の遊女たちですらブサイクに描いたのだろう。

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登場人物 | 映画「伏 鉄砲娘の捕物帳」公式サイトより

あともうひとつ、後半になるにつれて主人公の浜路はどんどん「女の子」になってくのだが、本当に可愛くなっていく。ほかの女キャラクターがどれもパッとしない顔をしているのは、おそらくここで浜路をちゃんと「可愛い」と視聴者に思わせたかったからなのではないだろうか――と徒花は推測している。

映像が美しい

このアニメはかなり「世界観」にこだわっている。

時代設定こそ江戸末期なのだが、やたらハイテクなマシンが出てきたり、電気が使われているような描写があったり、変なデザインの着物や洋服を着ている人たちが出てきたり、街並みの色彩もちょっとサイケデリックだったりと、かなりファンタジー色の強い独自の世界となっている。ストーリーの合間合間にけっこう頻繁に町や、ちょっとした風景の描写がふんだんに盛り込まれて、そこら辺に力が入っているように感じた。

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概要 | 映画「伏 鉄砲娘の捕物帳」公式サイトより

また、物語上の時間を考えるとちょっと無理がある気もするが、桜吹雪が吹き荒れる河原から雪の降る夜まで、時と場所によって姿を変える街並みのバリエーションが多い。制作陣の「この世界を見せたい」という思いが伝わってくるようだった。

ストーリーがわからん……

述べたように、ストーリーは「ガール・ミーツ・ボーイ」で、本筋を素直にみるだけなら単純だ。しかし、世界観の描写に尺を使いすぎてしまったのか、肝心のストーリーがいろいろ端折られていて、なにがどうしてこうなったのか、ちょっとよくわからなくなるところが多い。以下、ちょっとネタバレ的なのが含まれるので注意してほしい。

 

 

 

 

 

 

たとえば最後のところが、難解だ。信乃は家定を殺すために動き出すのだが、彼がなぜ家定を殺そうとしているのか、その理由がよくわからない。また、主人公の浜路はそんな信乃を追いかけるのだが、彼女は彼女で、信乃を追いかけて何をどうしたいのか、よくわからない(告白?)。もっといえば、家定は「伏」を殺すことに異様な執着を燃やしているが、その理由もよくわからない。

そして信乃と家定の対決シーンもよくわからない。家定はいきなり掛け軸からなんか伝説の刀っぽいものを抜き出すのだが、どうしてそんなことになるのか意味不明だ。そして最後、浜路は信乃に手紙を渡すことでどうやら目的を果たしたようなのだが、それがどういう意味を持つのか、よくわからない。

わからないことだらけだが、最終的に互いに愛し合う男女が結ばれてハッピーエンドになるから気持ちはいい。でもやっぱりわからない。

カギは原作……だと思う

アニメが原作の小説からどのくらいオリジナルなストーリーにしているのかはよくわからないが、ここらへんの説明はきっと原作小説を読めばわかるのだと思う。また、私は『南総里見八犬伝』もちゃんと知らなかったのだが、浜路と信乃というキャラクターが登場して、やっぱり2人は結ばれるはずだったらしい。この知識もあると、もう少し理解できたのかもしれない。

現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)

現代語訳 南総里見八犬伝 上 (河出文庫)

 
現代語訳 南総里見八犬伝 下 (河出文庫)

現代語訳 南総里見八犬伝 下 (河出文庫)

 

「原作を知っていればもっと楽しめる」というのはアリだと思う。しかし、「原作を知らないと困惑する」ような作品づくりはやっぱり落第だ。映画は映画で完結していなければならない。そこがきちんと詰められていなかった作品のように感じた。

おわりに

あまりにも見終わった後でモヤモヤしたので、ネットでなにかもっともらしい解説をしてくれているところはないのかと探したところ、以下のブログ記事を見つけた。

この人が原作小説も読んだうえでこの記事を書いたのかはわからないが、なかなか納得感がある。ちなみに、ネタバレ満載……というか、映画を見ていないと何を言っているのかサッパリわからないと思う内容であることは留意しておきたい

 

今回はこんなところで。

それでは、お粗末さまでした。