本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『ズルい考え方』のレビュー~まだロジカルシンキングで消耗してるの?~

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ロジかるロジかるッ!

もくじ

いまでこそビビる大木氏、ますだおかだ岡田圭右氏がMCを務める『PON!』が日テレ朝の10時台の番組になっているが、かつてそこで中山秀征氏がMCを務めるラジかるッという番組が放送されていたのを記憶している人もいるだろう。関東に住んでいる人にしか伝わらない話で恐縮だが。

www.ntv.co.jp

今思えば、日テレ昼の冠番組『午後は おもいッきりテレビが終了し、後番組として『おもいッきりDON!』が開始されるとともに中山氏はそのMCに昇格したわけだが、結局この番組は1年くらいで終了し、ウッチャンナンチャン南原清隆氏がMCの『ヒルナンデス!』となった。結果だけ見れば、中山氏は日テレの昼帯から追い出されてしまったわけだ。

もしこれが池井戸潤氏とかが書いた小説だったら、南原氏の所属する事務所・マセキ芸能社が日テレの昼番組担当者と仕組んだ中山氏をリストラに追い込むための陰謀というシナリオになったはずである。ちなみに、ビビる大木氏と岡田氏はそれぞれワタナベエンターテイメント、松竹芸能と所属事務所が違う。中山氏もワタナベエンターテイメント所属。

www.ntv.co.jp

余談だが昨日、出社するときに書店の前を通りかかったら、書店員さんが見せの前に立って声を張り上げていた。下町ロケットの続編が発売したらしい。売れるだろうなぁ。

下町ロケット2 ガウディ計画

下町ロケット2 ガウディ計画

 

さらに余談だが、ラジカルという言葉は化学の分野において不対電子をもつ原子や分子、あるいはイオンのことを指す。もしくは、不対電子を持たないがいわゆるオクテット則を満たさず、活性で短寿命の中間化学種一般の総称として「ラジカル(フリーラジカル)」と使う場合もあるそうだ。イミフ。一般的には「過激で急進的であるさま」を指すようなので、おそらく番組のタイトルもこちらの意味でとったのだろう。

ロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキング」という言葉を今回のテーマにしようとして、不意にこの番組のことを思い出しただけなので、冒頭の話は気にしなくてよい。

さてさて、ビジネス書ではロジカルシンキングの大切さを扱った本も多い。

マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング

マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング

 
超ロジカル思考 ―「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング

超ロジカル思考 ―「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング

 
あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質

あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質

 

日本語で言うと「論理的思考」だが、そもそもこれはどういう考え方を指すのだろうか。ちょっと調べてみた。

この言葉がビジネスの世界で広まったのはそう昔のことではない。Wikipedia大先生によれば、日本では2001年に出版された『ロジカル・シンキング』という本がきっかけで、経営コンサルティングなどの業界から波及していったようだ。

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)

 

しかしこの言葉、ちゃんと説明しようとすると案外難しい。歴史をさかのぼれば、アリストテレスの提唱した「三段論法」などにも行きつくようだ。徒花的に分かりやすく解説を試みると「事実を積み重ねることによって矛盾なく導き出される思考」とでもいえばいいだろうか。しかしこれ、「A=B、B=C。だからA=C」のように明確に関係性がわかる数学などの世界ならいいが、ことビジネスの世界だと案外当てはまらない。

ビジネスでロジカルはどのくらい有用なのか?

たとえば、次の説明。

調査の結果、Aという本を購入している読者は圧倒的に男性が多い。だから、男性をターゲットにした広告を打てばさらに売り上げを伸びるだろう。

これ、一見すると論理的なものの言い方に見えるが、よくよく考えるとそうとも言い切れない。この主張を構成する要素は次の3つだ。

①Aという本を購入している読者は圧倒的に男性が多い

②男性をターゲットにした広告を打つ

③さらに売り上げが伸びる

まず、②と③の間に本当に関連性があるのかわからない。省略されているが、ここでは「広告を打つ → その本の認知度が高まる → その本に関心を持つ人が増える → 書店で見かけたときに見つけてもらいやすくなる → 購入する人が増える」などの流れが前提条件として掲げられているのだ。しかし、本当に広告を打つことが読者の増加につながるのかは不明だ。それを証明した論文もない。

ほかにもいろいろとこの主張の穴を突くことはできるが、要するに私が言いたいことは「ビジネスにおけるロジカルシンキングはいろいろな『暗黙の了解』の上に成り立っていて、その『暗黙の了解』が本当に正しいのかをちゃんと検証している人は皆無に等しい」ということである。以前のエントリーで、「誰が読むんだよ」という本も意外に売れたりすることがあると述べたが、ビジネスシーンではあまりにも不確定要素が多すぎるので、厳密な意味でロジカルに物事を考えることはできないし、その結果の行動が必ずしも成功に結びつくとは限らない。 

ada-bana.hatenablog.com

あと、たまたまこのエントリーを書いている時にツイッターのTLを見たら、こんなリツイートが回ってきた。

ロジカルにも頼りすぎないようにね

経済は往々にして感情で動く。ここらへんの仕組みはおのおの、行動経済学を勉強してくれ。

経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

 

もちろん、だからといって徒花はロジカルシンキングがビジネスにおいてまったく意味をなさないといいたいわけではない。ただ、ロジカルシンキングはあくまで“成功の可能性をわずかに上げるための要素のひとつ”である」というくらいの認識で使うくらいがいいということだ。もしくは、「社内で自分の意見を通すための手段」である。結果に結びつかなくても知らないけど。

たとえ論理的にまったく穴が見つからない主張をしたとしても、結局ビジネスというは結果がすべてだから売り上げにつながらなければ意味がない。逆に、論理的に間違っていたとしても、結果として売り上げが伸びればそれはそれでOKなのだ。

ロジカルシンキングは万能ではない。個人的な感覚だが、やり手のビジネスパーソンほどこのことを肌で感じているように思う。あまりロジカルシンキング能力を身につけることに必死になり、そういう本ばかり読むのも考え物だ。

ラテラルシンキングとは

というわけで、今回紹介するのはロジカルシンキングと対極をなす考え方である。その名を「ラテラルシンキング」という。

3分でわかるラテラル・シンキングの基本

3分でわかるラテラル・シンキングの基本

 
ひらめく人の思考術 物語で身につくラテラル・シンキング
 

だがこの言葉、べつに新しい概念ではない。ビジネス書マニアなら知っている人も多いだろうワードだ。ただ、世間一般的にはまだロジカルシンキングほど浸透していないように感じるので、ドヤ顔で紹介したい。元にするのはコチラの本だ。

ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門

ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門

 

本書はイラストも満載で分かりやすい言葉で書かれているが、事例はどれも実際にあった出来事を例にしていて、ビジネス向け。ラテラルシンキングの本の中でも読みやすい一冊ではなかろうか。著者の木村尚義氏は「顧客営業研究所」という、なんだかイカガワシイ名前の会社を経営している人物だ。くわしくは以下のサイトを参考のこと。

www.soeiken.net

この言葉が生まれたのは1967年。イギリス人の心理学者、エドワード・デ・ボノ氏が提唱した(まだご存命である)。同氏はこれまでの論理的思考を「垂直思考」、逆に自分が考えた思考法を「水平思考」と名付け、広めたのである。垂直思考は縦に深く掘り下げていく考え方だが、水平思考とはある物事を広くとらえる。

あんまり能書きを垂れてもわからないので、具体例をひとつ挙げよう。問題だ。一応、答えは白地にしておくので見たい人は各自反転させてほしい。

13個のオレンジを3人でわけるためにはどうすればいいか?

ロジカルシンキングならまずはひとり4個ずつ配り、残り1個をはかりを使って均等に切り分けるという発想が浮かぶ。ちょっと頭が回る人なら「ジュースにして分ける」という方法が思い浮かぶかもしれない。しかし、それではまだまだだ。

本書に乗っている最後の方法は「余った1個のオレンジの種を植えてオレンジの木を育て、新しくなったオレンジをまた3人で分ける」という方法である。これ、小学校に上がる前の子どもが『さるかに合戦』を読んでいて思いついたらしい。たしかに、オレンジをいますぐに全部分けなければならないというルールはないから、これも紛れもない正解だ。

ラテラルシンキングに必要な力

こうしたラテラルシンキング能力を身につけるために大切なことが本書では紹介されている。エッセンスと思われるものを抽出してみよう。

●常識を疑う力

「これはこういう使い方をするものだ」「これはこうしなければならない」という固定観念を持っていると、いつの間にか思考の幅が制限されてしまう。世間一般で信じられている常識をあえて疑うと、思いもよらない発想が浮かぶ。

たとえばこんな事例

エレベーターで降りる階のボタンを押すのに、奥に乗ってしまった人は苦労する。何とかする方法はないだろうか?

答え:エレベーターの外にボタンを設置する。「降りる階のボタンはエレベーターに乗ってから押すものだ」という固定観念があると、この発想に至らない。

 ●抽象化する力

これも「常識を疑う」に通じるが、たとえば鉛筆を「ものを書くための道具」と考えていると、考えが狭まる。そうではなく、鉛筆を「思いを伝えるもの」「相手に説明するためのもの」「記憶するためのもの」と抽象化していくと、その目的を達成するには必ずしも鉛筆でなくてもいいことに気付ける。

セレンディピティ

最近、この言葉を見かけることが多くなったが、説明すると「偶然の発見を無視しない力」である。

たとえば、お菓子メーカーのロッテはホッカイロも製造しているが、その理由を知っているだろうか? じつは、お菓子の袋に入れる酸化防止剤を作っていたところ、空気に触れると発熱してしまうものができてしまったのだ。しかし、ロッテはこの偶然を無駄にしなかった。逆に「熱が出る」というところを売りにしたホッカイロを商品にしたので、いまでもロッテは「ホカロン」というホッカイロを売っているのである。

●もったいない精神

即物的な人は「これはすぐに役に立つか」「これはすぐに必要か」という物差しでモノや情報に接する。そして、その判断基準にはじかれたものはすぐ捨てたり、忘れたりしてしまうのだ。しかし「人生万事塞翁が馬」ということわざもあるように、何がいつ、どこで、どういう風に役立つのか、しょせん人間の分際で知ることなどできない。何の役に立つかわからないが、とりあえずもったいないから持っておこう(覚えておこう)という精神は、意外なところで他のものと組み合わせたりして役立つことがある。

たとえば、あのスティーブ・ジョブズは大学時代、「カリグラフィ」の授業に興味を持っていた。これは「西洋書道」と呼ばれるもので、専用のペンで美しくアルファベットを書く授業だ。普通に考えれば、これが将来に役立つとは思えない。しかしのちにコンピュータを作ったとき、ジョブズは大学時代の経験から「もっといろんな文字が打ち込めたらいいな」と考え、マッキントッシュにさまざまなフォントを使えるようにしたのだ。これは当時、かなり画期的なアイディアだったという。

●長期的ビジョン

先に出題したオレンジの問題のように、短期的な視野しか持っていないとこれも思考の幅を狭める。短期的には自分が損をするようなことであっても、より長いビジョンで眺めればそれがのちのち役立つことはある。

●ポジティブシンキング

先に述べたロッテの「ホカロン」も、普通に考えればただの失敗作だ。しかし、それを単なる「失敗」と捉えるか、それとも「ほかのことに役立つ」と考えるかで結果は大きく変わる。基本的に、斬新で革新的なアイディアを生み出す人は楽天家で、失敗を失敗と捉えない。

エジソンは電球を発明するまでに1000回(1万回ともいわれるが、どっちかよくわからん)の失敗をしたが、そのことをインタビュアーに問われた際、次のように返答したといわれている。

「失敗はしてない。ただ、999回の工程を経て電球は生まれたのだ」

ラテラルシンキングの問題

以下、本書に掲載されていたほかの問題も出題してみよう。気になるなら、ネットで「ラテラルシンキング」と検索すれば同じような問題がいくらでも出てくる。

Q1

ある崖沿いの道路はカーブがきつく、事故が多発していた。センターラインをしっかり引き、頑強なガードレールも設置したが、一向に事故が減らない。どうすれば事故が減るだろうか?

答え:センターラインもガードレールも撤廃する。すると、ドライバーは逆に注意して運転するようになった。

Q2 

観光名所もおいしい食べ物もコンビニなどの施設も、とにかく何もない場所にある人がごくごく普通の宿泊施設を建てた。しかし、儲かっているようだ。なんで?

答え:依存症の人々の宿泊施設にしたから。「何もない」ことを逆手に取り、それが必要な人たちのための場所にした。

Q3

ネットで腕時計を販売していた人が軌道に乗り、海外からの注文が増えた。すると英語での質問メールが来るようになったが、その人は英語がわからない。英語が堪能な人を雇おうかとも思ったが、質問内容は専門的でそれも難しい。どうすればいい?

答え:海外の顧客にメールの対応をお願いした。そういう人たちは英語が堪能で、しかも知識があり、それを披露したがっている。英語ができる人を雇うよりも安く済む。

ちなみに、答えはひとつとは限らない。いくつも正解がある、というのもラテラルシンキングの特徴なのだ。

おわりに

このブログは私の興味が赴くままに、テーマも特に定めずあらゆることを書いている。だから、もしかするとこのブログを読み続けていくとなにか、役に立つかもしれない。立たないかもしれない。まぁ、私はそもそも「役に立つ」という基準でなにかをやるのが嫌いなので、そんな目的で読んでもらうのも嫌だが。

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それでは、お粗末様でした。