『出ない順 試験に出ない英単語』のレビュー~なぜグリーン車にはハゲが多いのか?~
世の中にはいろいろな本がある。
もくじ
本当にいろいろな本がある。たいていの本は「読者ターゲット」というものを定めて、「こんな本を作ったらこんな人が買って読むだろう」というのをある程度戦略的に固めてから出版にGOサインが出される。ちなみに、タイトルは釣りだ。
いろいろなネタ本
しかし、世の中には「いったい誰が読むんだ?」という本であふれている。たとえばこんなものだ。
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いったい誰が、何のためにこんな本を読むのか、一般人にはなかなか理解できない。ほかにも、こんな本がある。
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\ (´・ω・`) また髪の話してる・・・
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この本ほど「じゃあ誰が何のために読むんだよ?」というツッコミが似合うタイトルの本もなかなかない。
ネタ本のベストセラー
こうした本は列挙していけばキリがないが、こうしたくだらない本にもベストセラーがポッと出たりするから出版業界はわからない。たとえば、次の本だ。
この本は大変売れたが、よくよく考えればいったい誰が、何のために読む本かよくわからない一冊である。明らかにこれをパクった次のような本も出ている。
最近のものだと、こんな本も売れに売れた。
こちら、現在4まで続編が出ている人気シリーズだ。たしか、以前『王様のブランチ』のブックコーナーを見ていたら、この本を担当した編集者の人がインタビューに答えていた。やはり、最初にこの企画を社内に出したとき、周りからは「こんな、ネットでいくらでもタダでみれるような内容の本に誰が金を出すのか?」という声が上がったらしい。非常にマトモなご意見である。しかし、その編集者はそうした反対の声を押し切り、半ば強引に出版したそうだ。おそらく、この人はそれまでに十分実績を出していた人なのだろう。そして、実際に売れているのだから大したものである。
2種類のネタ本と「偽装ネタ本」
こうしたサブカル本は2通りに分けられる。「狙った系」と「天然系」だ。前者はあえてツッコミ待ちをして作られた本、後者は著者が至って真面目に作ったのだが、結果的にネタ本となってしまった本である。後者をもっと知りたいなら、この本を読んでみると面白い。
ちなみに、一見すると同じようなネタ本に見えるが、実はけっこう実用的な本も存在する。「偽装ネタ本」だ。たとえばこんなの。
シュールなイラストとインパクトのあるタイトルだが、中を読むと案外使える言い回しもあったりするので、コミュニケーション指南本といえなくもない。
『出ない順 試験に出ない英単語』のレビュー
ここから本題。徒花はこういうくだらない本が存外好きなので、暇なとき、書店のサブカル本コーナーに行っては立ち読みしている。ちょっとお金を払うのはもったいないし、多くの本はすぐに読み終えられるような内容だから、買うことは少ない。しかし、こうした本を眺めていると、たまーに「これは買わなければ」という使命感を抱かせるような一冊に出会うことがある。こんな本のように。
タイトルもすごいが、著者名が「中山」としかないのがすごい。奥付のプロフィールを読むと、荒川区在住の会社員の方のようだ。
ちなみに本書は普及版となっていて、オリジナルはこちら。
中身に違いがあるのかはちゃんと確認していないのでわからないが、普及版ということでペーパーバック(カバーなしの本)になっていて、208ページとそれなりのボリュームがありながら、価格は税抜571円となかなかお手頃である。人気を博しているようで、続編もある。
3冊目はテーマが崩壊しているようにしか見えないが、どういう内容なのかは、近々確認してみようと思う。
絶対試験に出ない例文
肝心の内容はというと、これはタイトルのままだ。絶対に試験には出てこないだろうマニアックかつ下品な英単語を使った例文をただひたすらイラストとともに紹介しているだけの本である。説明するより実際にいくつか紹介してみたほうが早い。
army crawl(ほふく前進)
"Could you do an army crawl with me past the station tonight ? I'ts dangerous there. "
「今晩ご一緒にほふく前進どうですか? 駅近くに危険地帯見つけたんですよ」
flasher(露出狂)
Antonio is the most intrepid flasher in the vllage.
(アントニオは村で一番勇敢な露出狂です)
octopus wiring(タコ足配線)
“Fantastic octopus wiring!"
“Thanks, I had a pro do it."
「素敵なタコ足配線ね!」
「ありがとう。専門家にお願いしたの」
naked eye(肉眼)
"How is the new recruit in the personnel section doing ? "
"Actually, he moves too fast for the naked eye to see, "
「人事課の新人どう?」
「実は動きが速すぎて肉眼では捉えきれなくてね」
こんな感じだ。著者の趣味なのか、アニメやゲームをパロった内容のものもある。
Kafrizzle(メラゾーマ)
The department manager learns Kafrizzle at age 37.
部長は37歳でメラゾーマを覚える。
virginity(童貞)
"No, she stole something quite precios. Your virginity."
「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの童貞です」
goomba(クリボー)
If you take a look at the soles of Mario's shoes, you will find it covered in goomba meat.
「マリオの靴底には、クリボーの肉片が大量にこびりついています」
また、複数毎見てみると話がつながっていたりするものもある。
pubic hair(陰毛)
"Bob, move this pubic hair or someone will trip over it."
「ボブ、この陰毛どかさないと誰かがつまづくよ」
boobs(おっぱい)
This morning, Cathy stumbled over the pubic hairand hit her boobs hard.
今朝、キャシーは陰毛につまづいて転び、おっぱいを強打した。
erection(勃起)
Since maintaining an erection throughout the duration of the training period, Nick has been nicknamed "Fujiyama".
ニックは研修期間中ずっと勃起していたため、以来、フジヤマと呼ばれています。
diarrhoea(下痢)
Since having persistent diarrhoea thougtout the training period, Nick has been nicknamed "Niagara".
ニックは研修期間中ずっと下痢が続き、以来、ナイアガラと呼ばれています。
見ていただけば分かるが、英単語の選出センスよりも、例文とシュールなイラストが笑いを誘う。ちなみに、イラストを担当しているのは千野工一氏だ。
このように、大変おもしろい一冊なのだが、私が一言苦言を呈するとしたら、「発音表記」がない点である。あくまで英単語帳を装うのであれば、ちゃんとその単語をどうやって発音するのかもきちんと提示すべきだった。「diarrhoea」とか、なんて発音するのかようわからん。
ともあれ、頭を使わずに笑える本を読みたいなら、おススメである。
それでは、お粗末さまでした。