本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。』のレビューおもしろい文章は「例え力」が大事~

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「おもしろい文章」とはなにか? その答えのひとつは「例え力」にある。

もくじ

「わかりやすい文章」は、ノウハウを勉強し、練習すれば誰でも書ける。それは、この記事でも書いたとおりだ。

しかし「おもしろい文章」となると難しい。そこから先は「センスの問題」になってくるからだ。とはいえ、天賦の才を持っていなくても、文章をおもしろくする努力はできる。そのひとつが「例え力」を磨くというものだ。

そこで紹介したいのが、この前読んだこの一冊である。

世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。

世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。

 

さくら剛について

著者のさくら剛氏はもともとお笑い芸人を目指していたものの挫折し、シナリオライターを目指すもそれも挫折。その後は派遣社員 → 引きこもり、ときどきバイトという生活を送っていた人物だ。Wikiではとくに何も言及されていないが、マンガ家のさくらももこ氏とはなんの関係もない。たぶん。

転機となったのは付き合っていた女性に振られ、インドに旅行に行ったこと。このときのことを書いた『インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも』がベストセラーになり、作家としての道を歩み始めた。

インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも (アルファポリス文庫)

インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも (アルファポリス文庫)

 

その後、さくら氏は同様に旅した中国やアフリカ、南米などの滞在記を執筆し、人気を確立していった。

中国初恋

中国初恋

 

 

アフリカなんて二度と行くか!ボケ!!―…でも、愛してる(涙)。 (幻冬舎文庫)

アフリカなんて二度と行くか!ボケ!!―…でも、愛してる(涙)。 (幻冬舎文庫)

 

 

南米でオーパーツ探してる場合かよ!!

南米でオーパーツ探してる場合かよ!!

 

ちなみに、中国を除く一連のタイトルはシリーズ感があるが、それぞれ出版社が異なる。こういうのが認められるのが、出版社はわりとおおらかでいいところだ。下は、さくら氏のサイトである。

さくら剛ホームページ

同氏は旅行記だけでなく、素人ながら科学について書いた『感じる科学』や、

感じる科学 (Sanctuary books)

感じる科学 (Sanctuary books)

 

心理学について書いた『困ったココロ』もある。しかしこのカバーデザイン、タイトルがどこに書いてあるのかサッパリわからない。こういうデザインが認められる懐の広さも、出版業界のいいところである。

困ったココロ (Sanctuary books)

困ったココロ (Sanctuary books)

 

そしてそして、同氏がもともとシナリオライターを志願したためもあるのか、小説も執筆している。

俺は絶対探偵に向いてない

俺は絶対探偵に向いてない

 

 

俺も女子高生も絶対探偵に向いてない

俺も女子高生も絶対探偵に向いてない

 

こちらも、評判はそこそこいいみたいだ。機会があったら読んでみようと考えている。

さて、そんなさくら氏の最大の魅力が「文章のおもしろさ」である。そのおもしろさのソースを追及してみると、冒頭で述べたような「例え力」のパラメータの高さが際立っているのだ。

これがうまい「例え」だ!たぶん

たとえば、『世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。』はタイトルの通り、世界のニュースをさくら流にわかりやすく解説した本なのだが、リーマン・ショックの発端となったサブプライムローンを、まさかの「イケメン」に例えておもしろおかしく説明している。ちょっと長くなるが、引用しよう。

あるところに、地球に似ているが地球ではない、とある星がありました。

そこには人間らしき生物が住んでいるのですが、星を支配しているのは女性やおばさんです。「おばさんが支配する、地球に似ている星」なので、仮にその星を「オバ球」と名付けましょう。そのオバ球では、悲しいことに男は動物のような扱いを受けていました。

特に近年注目されているのが、「イケメン牧場」です。イケメン牧場では、いい男を集めてきて、おばさんや若い女性たちに販売しています。

牧場の近くに住むA子さんも、「自分だけのイケメンを飼いたい!」と思っている1人でした。

(中略)

イケイケ質屋はA子さんに言いました。

「とりあえずお金を貸してあげるから、そのお金でイケメンを買って、買ったイケメンを質に入れなさい」

さらに、こうも付け加えました。

「でもイケメンを店先で飼うのも面倒くさいから、とりあえずA子ちゃんが一緒に暮らせばいい。ただ、万が一お金を返せなくなったら、その時は借金のカタとしてイケメンはもらうからね」

(中略)

実はこのオバ球では、イケメンという生物が発見されてまだ歴史が浅く、人々はみな「イケメンというものは時とともに際限なくどんどんいい男になっていくものだ」と信じていたのです。現に、30年前イケメン牧場の設立時に連れてこられたイケメン赤ん坊たちは、1歳の時より10歳、10歳の時より20歳、20歳より30歳つまり現在と、年齢を重ねるにつれ確実にイケメン度がアップしています。

終始、こんな感じで文章は進んでいく。

まず、「オバ球」というネーミングもマーヴェラスだが、かつて日本のバブル時代にも信じられていた「土地神話(および2000年代のアメリカで信じられていた住宅神話)をイケメンにたとえることで、どんなにそれが愚かな考えだったか、感覚的にわかるようになっている。ここらへんのテクニックが何ともうまい。

こういうのも結局は発想の問題なので鍛えれば必ず身につくものではないのだが、少なくとも、どういうところに注力すれば文章をおもしろくできるのか、その参考にはなるだろう。

おわりに

本書はなかなかおもしろいのだが、後半になってくるとだんだんダレてくる。まず、テーマの選び方がちょっと古い。それから「(泣)」という表現を多用しすぎているので、これが出るとだんだんうんざりしてくる。ちょっとボキャブラリーが乏しいのだろうか……。あと、例えについても、前半はうまいものが続いているのだが、後半になると最初のサブプライムローンほど秀逸なものが出てこないのも残念な点ではあった。

とはいえ、少なくとも時事ネタについて気軽に、楽しく学べる良書である。気になったら、読んでみてもいいかもしれない。

 

それでは、お粗末さまでした。