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本で死ぬ

基本的には本の話。でもたまに別の話。

さおだけ屋メソッドから見るデキるビジネスパーソンの条件

ビジネス

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世の中にはビジネス書があふれている。毎月毎月、飽きもせず、各出版社があらゆる切り口を持ち出し、世の中の悩めるビジネスパーソンたちを食い物にしているのだ。

私は基本的にそういう本は自費で買わないが、仕事柄、よく読む。出版社に勤めていて良い点は、「企画立案に使う!(かもしれない)」といえれば、読みたい本を会社の経費で購入できる点である。そのため、私自身、その気もないのにそれなりにビジネス書を読んできてしまった。

 

そうしたビジネス書はタイトルが重要である。ハッキリ言って中身に大差はないので、いかにインパクトのあるタイトルと表紙で読者の目を惹き、「ちょっと読んでみたい」と思わせるかが重要なのだ。そして、ある1冊がヒットすると、各社はそのおこぼれに預かろうと、瞬く間に同じようなタイトルをつけた本を刊行する

なかでも、出版業界におおきな衝撃を与えた一冊がある。それが、2005年に出版された新書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』だ。本書は2007年までに151万部を売り上げる大ベストセラーとなった。

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)

 

もし本書が『身近な疑問から始める会計学』というタイトルだったらこんなに売れなかっただろう。「さおだけ屋」という、身近ながらその実態を知る人の少ない事例に着目したことで、人々の「ちょっと読んでみたい」という気持ちを大いに刺激したのである。さらに、タイトルを疑問形にして「その答えは本書の中にあります」というやり口は、汚いながらもうまい。

かくして、本書以降、ビジネス書の世界では「なぜ~~なのか?」という疑問系をタイトルにした書籍が数多く出版されている。そして私はこのタイトルのつけ方を勝手に「さおだけ屋メソッドと呼んでいる。基本的には、資本主義社会における成功者たちの行動習慣の理由を疑問系にしたものが大半だ。現在ではビジネス書のみならず、健康本やスポーツ本、自己啓発書などあらゆる分野の書籍に「さおだけ屋メソッド」は浸透している。

そこで、今回のエントリーでは「さおだけ屋メソッド」のビジネス書を集め、そのタイトルから導き出される「成功者の法則」をまとめてみようと思う。ちなみに、今回取り上げる書籍のほとんどを徒花は読んでいない。ハッキリ言って、中身なんて読まなくてもとりあえずタイトルの言うとおりに行動すればとりあえず成功者になれるんじゃないだろうか(ホジホジ

まずは最近の本から見てみよう。

なぜ賢いお金持ちに「デブ」はいないのか?

なぜ賢いお金持ちに「デブ」はいないのか?

 

著者の田中氏は投資コンサルタントで、これまで3000人以上のお金持ちにインタビューしたらしい。要は自己管理法の本。イラストレーターの花くまゆうさくさんの人気に頼っている感もある

「即判断」する人は、なぜ成功するのか?

「即判断」する人は、なぜ成功するのか?

 

サンマーク出版はこうしたビジネス書を多く出版している会社。これは「なぜ」を間に持ってきている。「即判断」という大切なワードを頭に持ってきているのだ。著者の小関氏はサラリーマン作家と、キャリア的にはちょっと頼りない。焼肉店めぐりが趣味のようである。

なぜ、一流になる男は軽自動車を買わないのか

なぜ、一流になる男は軽自動車を買わないのか

 

「一流」という言葉は便利である。「お金持ち」「成功者」同様、厳密な定義がないので、どのようにでもいえるマジックワードだ。そして「軽自動車」というピンポイントな言葉がおもしろい。著者の里中氏は多くのビジネス実用書を出版しているようだが、自身がビジネスで成功しているのかは全く不明。そのためか内容が浅いらしく、Amazonでの評価は惨憺たるモノだ。

なぜ一流の男は精力が強いのか? ―男性ホルモン力を上げれば人生が変わる

なぜ一流の男は精力が強いのか? ―男性ホルモン力を上げれば人生が変わる

 

これは「仕事ができる男」「女にモテる男」という2つの理想を同時にかなえるようなタイトルであり、強い惹きがある。著者の岡宮氏は内科の先生で、見た目はビジネス書だが中身は健康本に近いようだ。とにかくホルモンの大切さを説いている。

仕事でモテる男はなぜ、体を鍛えているのか?

仕事でモテる男はなぜ、体を鍛えているのか?

 

これまたなかなかうまいタイトルである。ちゃんと説明しているわけではないが、やはり「仕事ができる男」「女にモテる男」という2つの理想を同時に実現できるようなイメージを読者に与える。帯の写真もインパクトがある。著者の比嘉氏はパーソナルトレーナーで、要は筋トレの専門家なので、どちらかというとダイエット本に近い一冊。

グリーンの装丁がなかなか目を惹く一冊。かなりタイトルが長く「スゴイ仕事」「カリスマ」など、成功者をイメージさせるワードが2つも入っている。著者の野呂氏は『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』を担当した放送作家で、「一流の人と長年一緒にいた」ことが根拠らしい。意味分からん。

男の年収は「見た目」で決まる──なぜ、一流の人は「顔色」が良いのか?

男の年収は「見た目」で決まる──なぜ、一流の人は「顔色」が良いのか?

 

こちらは「さおだけ屋メソッド」をサブタイトルに持ってきているパターンだ。一流の男は顔色がいいらしい。帯に登場している平松氏は美容コンサルタントで、こちらはビジネス書のような男性向け美容本である。いろいろまぎらわしい。

なぜ年収3000万円の男はセンスにこだわるのか?

なぜ年収3000万円の男はセンスにこだわるのか?

 

「年収3000万円」という具体的な数字を出していながら、「センス」というまた曖昧なワードをテーマにしている。さらに、帯分には「一流の男は、金曜日の夜に「アポ」を入れない。」ともある。著者の臼井氏はビジネス書作家、コンサルタントのようで、「年収3000万円以上の男800人以上と交流」してきたらしい。ようは身だしなみや立ち居振る舞い、服装などのマナー本。

なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?

なぜ一流の男は匂いまでマネジメントするのか?

 

一流の男は匂いもマネジメントするようだ。かんき出版もこうしたビジネス書を得意とする出版社である。著者の五味氏は体臭・多汗研究所所長で、要は臭いのスペシャリスト。決してビジネスのスペシャリストではない。

超図解!なぜ一流の男の腹は凹んでいるのか? (ぶんか社ムック)

超図解!なぜ一流の男の腹は凹んでいるのか? (ぶんか社ムック)

 

こちらは書籍ではなくムックである。ムックとは赤い毛の雪男ではなく、「本(Book)」と「雑誌(Magazine)」の中間の形態の本(Mook)という意味ですぞ! 著者の小林氏はダイエットセラピストというなんだかわけのわからん職業の人で、『なぜ一流の男の腹は出ていないのか?』という本も書いている。とにかく男の腹について一家言を持っているようだ。

一流の人の歯は、なぜ白いのか?

一流の人の歯は、なぜ白いのか?

 

黒をベースカラーに持ってくるのはトレンドのようだ。そして、なぜか著者の写真はたいてい腕を組んでいる。帯に登場している植木氏は歯科医師さん。なのでもちろん、本書では「歯」のことにしか語られていないと思う。

なぜ一流の人はストレスが溜まらないのか

なぜ一流の人はストレスが溜まらないのか

 

基本的に著者の写真を帯に持ってくるのは「美人orイケメン」「有名人」「見た目にインパクトがある」の場合が多い。本書でこのお医者さんを帯に持ってきた意図がよくわからない。こちらの著者、西脇氏は精神科医で、「新感覚のビジネス自己啓発書」らしい。

なぜ一流の人は謝るのがうまいのか 100%信頼される人間関係の法則

なぜ一流の人は謝るのがうまいのか 100%信頼される人間関係の法則

 

一流の人は謝るのもうまいらしい。「100%信頼される」というすごい謳い文句である。著者の野呂氏は『ネクタイを毎月3本買う人はなぜ(以下略』の人。なかなかハイペースでの執筆だ。

仕事ができる人はなぜハンカチを2枚持っているのか?

仕事ができる人はなぜハンカチを2枚持っているのか?

 

ほかのビジネス書に比べるとあっさりした印象を受ける表紙。著者の西松氏は事業家で、戦略的イメージコンサルタントでもある。とにかく人に好かれるための方法について書いてあるようだ。

世界のエリートはなぜ哲学を学ぶのか? 桁外れの結果を出す人の思考法 (SB新書)

世界のエリートはなぜ哲学を学ぶのか? 桁外れの結果を出す人の思考法 (SB新書)

 

こちらは新書だが、なんともダサい。こんなオッサンが大々的に表紙に来ている本をいったい誰が買うのだろうか。著者の福原氏は哲学者……ではなく、グローバル人材の育成をする会社の経営者。経歴としてはなかなかのものだが、顔が残念。

世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?

世界のエリートはなぜ歩きながら本を読むのか?

 

「世界のエリート」というのもビジネス書御用達のワードである。具体的にどういう人のことを指すのかは明言されない。著者の田村氏は新聞社や大学の顧問を務め、政治家もやって、政務官も務めた、何がやりたいのかよく分からない人。本書の説明を見ても、結局何が言いたいのかよく分からない。

できる人はなぜ、そこまで「姿勢」にこだわるのか? 毎日5分の背骨の体操でここまで変わる!

できる人はなぜ、そこまで「姿勢」にこだわるのか? 毎日5分の背骨の体操でここまで変わる!

 

ここまで来るとビジネス書なのか健康本なのか判断に迷うところである。諸店員さんにしてもそうだろう。「仕事は姿勢が9割」というキャッチコピーもなかなかたいしたもんである。著者の町田氏はカイロプラクターなので、ビジネスの専門家ではなく、本書を読んでも「できる人」にはなれなそうだ。

こちらはヒットした『トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術』に「さおだけ屋メソッド」を融合させた一冊である。トヨタというのもビジネス書では人気のキーワードだ。「カイゼン」はいまや国際語である。著者の横田氏はマーケティングなどの講演をしている人のようで、「『当事者が腑に落ち、人を動かす戦略は“A3用紙1枚”にまとまっている』という法則を発見し、使えて成果につながる仕事術を徹底的に叩き込む日本唯一のプロフェッショナル・マーケティングコーチ」らしい。

売れる営業トークの特徴: できる人はなぜゆっくり話すのか (RJ Books)

売れる営業トークの特徴: できる人はなぜゆっくり話すのか (RJ Books)

 

なんだかダサイ表紙だと思ったら、これは電子書籍のみの販売のようだ。基本的に、電子書籍のみの販売の場合は表紙のデザインなどにお金をかけないことが多い。著者は事業コンサルティングなどをやっているRJラボという会社のライティンググループのようだ。

なぜ、富裕層はスイスにお金を預けるのか?

なぜ、富裕層はスイスにお金を預けるのか?

 

富裕層という言葉は案外使われていないので、ちょっと珍しいパターンである。著者の高島氏は投資、ファイナンシャルアドバイザーで、金融関係が専門。仕事術ではなく、資産運用方法を教える一冊だ。

ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?

ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?

 

「ビジネスエリート」というのも便利な言葉だ。年収とかどこの会社とか、そういう細かいことにはこだわらなくていい。本書はちょっとビジネス書っぽくない装丁である。著者2人はどちらも落語家に弟子入りした経験のあるビジネスパーソンで、とにかく落語が好きなようだ

なぜ、嫌われ者だけが出世するのか?

なぜ、嫌われ者だけが出世するのか?

 

これは結構すごい。何がすごいかというと、「だけ」と限定しているからだ。つまり、「嫌われ者ではない人は出世しない」ということである。ちなみに、「嫌われ者」で検索すると映画『ハンコック』も一緒に出てきた。著者の齋藤氏は心理学の先生で、社会心理学を特異としているようだ。

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というわけで、以上が2015年中に発売された「さおだけ屋メソッド」本の数々である。もちろん、これ以外にもあるだろうが、、

次に、2014年以前のものからできるだけ条件がかぶらないようなものをピックアップしていこう。

「さおだけ屋メソッド」をサブタイトルに持ってきているバージョン。しかも「ズバ抜けて」という形容詞をつけている。さすがはビジネス書の名門ダイヤモンド社である。著者の成毛氏は投資コンサルタントで、マイクロソフトの取締役社長を務めたこともあるらしい。なぜ本棚にフィーチャーしたかは不明。

オプティミストはなぜ成功するか [新装版] (フェニックスシリーズ)

オプティミストはなぜ成功するか [新装版] (フェニックスシリーズ)

 

オプティミストとは楽天家のことである。著者のセリグマン氏は心理学の教授で、内容的にはビジネスというよりも心理学的な内容のようだ。

図解  頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?

図解 頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?

 

「頭がいい人」というのはつまり「仕事ができる→偉くなれる→金持ちになれる」ということを連想させる。しかも、結果を保証するものではないので、読者の勝手な想像に任せられるという点で便利だ。著者の高橋氏は実業家兼経営コンサルタント。本書はかんき出版の『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか』に図解を加えてものである。

なぜ、自分の予定を優先する人は仕事ができないのか

なぜ、自分の予定を優先する人は仕事ができないのか

 

タイトルをちょっと見ただけでは分かりにくいが、「仕事ができないのか」なので、これはダメなほうに焦点を当てたバージョンである。もっとそこが分かりやすいデザインにすればいいのに……。著者の能町氏は一流秘書養成スクールを創設したプロ秘書で、ビジネス時間術について扱った本。

具体的な数字と具体的な行動が入っている、大変親切なタイトル。伝えたいメッセージとしては「年収700万以上の男になるには皇居ランナーになればいい」ということだが、因果関係をぼかし、「大半」という言葉を入れることで、巧妙に読者をミスリードさせる意図がある。著者の山口氏はジャーナリストで、ランニングが趣味のようだ。

なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?

なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?

 

「エグゼクティブ」とは「偉い人」ということだ。しかし、社長とか取締役とか、具体的には限定しないマジックワードのひとつである。著者のムーロ氏はアメリカの大手コンサルティング会社の社長である。

著者の春原氏はおそらくフリーライターで、飲食店の取材をよくしているらしい。内容についてはどうも日本のエグゼクティブが集まる隠れたレストランを紹介しているようだが、なぜアラスカなのかサッパリ分からない

文庫本で、なんだか小説のような装丁である。著者の夏川氏は作家兼人材プロデューサー。キャリアとしてはちょっと薄弱な気もする。

なぜ、できる人は朝コンビニに行くのか?~最新の科学でわかった!能率10倍アップの時間管理術~
 

著者の平澤氏は小学校の成績が悪く、高校のときに無免許運転をしたことをプロフィールに書いちゃうイタい人。そして原発にも興味があり、農学博士である。一見すると本書の内容と全く関係がないが、どうやら体内リズムについて書いてあるらしい。

仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?

仕事ができる人はなぜトライアスロンに挑むのか!?

 

翻訳書っぽい装丁だが、著者はまぎれもない日本人である。 著者の白戸氏はアスリートで、とにかくトライアスロンが大好きなようだ。そのため、本書はビジネス書を装ってトライアスロン愛好家を増やそうという目論見の一冊である。

稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?

稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?

 

著者の亀田氏は税理士で、他人の財布を観察するという下品な趣味を持っている。そこから見出したことをまとめたのが本書だ。

ケタ違いに稼ぐ人はなぜ、「すぐやらない」のか?

ケタ違いに稼ぐ人はなぜ、「すぐやらない」のか?

 

ちょっと緩めの装丁が独特。基本的にビジネス書は大人の男性をメインターゲットにしているので、こういうデザインにすると売れ行きが良くなくなる。著者の臼井氏は『なぜ年収3000万円の男はセンスに(以下略』を書いた人。

こちらは天下の講談社マティーニではなくダイキリという、かなりピンポイントな指摘が痺れる一冊。新書である。著者の古澤氏はバーテンダー経験もあるホテルの従業員。要はお酒の実用書である。

仕事ができる人はなぜ「あそび」を大事にするのか

仕事ができる人はなぜ「あそび」を大事にするのか

 

「あそび」というのが何を意味するのかは分からないが、ほかのビジネス書と比べると若干軽い装丁。著者の美崎氏は大手の会社で商品開発をしている人らしく、たぶんペンネーム。スーパーサラリーマンらしい。

稼ぐ人はなぜ、1円玉を大事にするのか?

稼ぐ人はなぜ、1円玉を大事にするのか?

 

著者の亀田氏は他人の財布観察が好きな『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』の人。小さいころに父親の会社が倒産し、ホームレス生活を送ったことがトラウマとなっているようだ。

超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか

超・オフィス整理術 仕事ができる人はなぜデスクがきれいなのか

 

なんだか緩めの装丁。著者の小松氏は「日本初のかたづけ士」らしく、よく分からない人。とにかく片付けのプロらしい。

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか (幻冬舎新書)

仕事ができる人はなぜワインにはまるのか (幻冬舎新書)

 

こちらは新書。著者の猪瀬氏はジャーナリストで、日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。結局、著者がワインが好き、ということである。本書ではワインとビジネスマンの関係を明らかにしているという。徒花は下戸である。だから仕事ができないのか!

エグゼクティブな下半身―仕事ができる男はなぜSEXが上手いのか (学研M文庫―知の法則シリーズ)

エグゼクティブな下半身―仕事ができる男はなぜSEXが上手いのか (学研M文庫―知の法則シリーズ)

 

 なんともズレた印象の表紙で、ダサい。著者のキム氏は性人類学者らしく、とにかく性について研究しているようだ。もちろんビジネスの専門家ではない。また、おそらく真面目にビジネス書を選んでる人はこういうタイトルの本は避けそうな気がする。

仕事ができる人はなぜレッツノートを使っているのか?

仕事ができる人はなぜレッツノートを使っているのか?

 

具体的な商品名を出している点でなかなか珍しいタイトルだ。出版社も朝日新聞出版である。 著者の山田氏はフリーライターで、手書きのメモや紙は一切使わないらしい。要は、自分がレッツノートが好きってことなんだろう。

なぜ数学が得意な人がエグゼクティブになるのか

なぜ数学が得意な人がエグゼクティブになるのか

 

著者は数学者……ではなく精神科医。数学というよりも、理系マインドの重要性を説いているらしい。

おそらく「田中部長」という架空の、全時代的なキャラクターを引き合いに出した一冊。とにかくワイシャツの下にランニングシャツを着ると課題解決力やリーダーシップがなくなるようだ。著者の安藤氏は元銀行員で、その後大手石油会社の監査役などになっているようだが、自身は取締役の経験はなさそうである。表紙のインパクトは抜群だが、まったくビジネス書に見えない。

これがデキるビジネスパーソンの日常だ!!

というわけでまとめよう。デキるビジネスパーソン(略してデキビジくん)の生活はこんな感じである。

デキビジの朝は早い。なにしろ朝一で皇居ランにいそしむからだ。帰ったら腹をへこませるために腹筋300回を欠かさない。さらにスクワットや腕立て伏せでとにかく体を鍛えまくる太っているなど論外だ。

シャワーを浴びたら念入りに体を洗う。汗臭い男は絶対にダメだ。すかさず制汗スプレーを全身にふりかける。続いて念入りに歯を磨いてデンタルフロスビジネスマンは歯が命口臭を抑えるため、ミントタブレットは常に携帯。もちろんミンティアでなくフリスクだ。そして、顔色が良く見えるようにドーランを塗りたくる

着替えのときはいつもネクタイ選びに苦労する。なにしろ毎月3本新しいネクタイを買うので、クローゼットの引き出しはネクタイでぎゅうぎゅうなのだ。とはいえ、即判断がデキる男の条件。目をつぶってさっさとネクタイを選ぶ。変な柄のネクタイをつかんでも、オプティミストなのでまったく気にしない美意識には強いこだわりを持っているので、選んだ赤いネクタイに合わせてブルーのジャケットをチョイス。今日はコナン君スタイルとした。ズボンには左右のポケットにひとつずつハンカチを入れる。彼は手を拭くときは両方のハンカチを同時に使う、伝説の二刀流の使い手である。

いよいよ出勤。ポータブルミュージックプレイヤーで落語を聴きつつ、哲学書を読みながら歩くのが日課だ。今日はニーチェの『ツァラトゥストラはこう語った』を読む。家の本棚にはちょっとしたこだわりがあり、つねに背表紙が見えないように書籍を並べているので、今日、何を読むのか分からないドキドキ感がたまらない。なお、彼はワイシャツの下にランニングシャツを着ているサラリーマンを見かけるとぶち殺したくなるので、通勤電車の中ではほぼ毎日だれかしらに殺意を抱いている。

会社に向かう途中で必ずコンビニに寄る。とくにほしいものがなくても絶対に寄るのだ。今朝はチョコバットを買う。税込み32円で40円を出すと、8円のお釣りがもらえる。家の貯金箱で1円玉貯金をしているので、あえてすべて1円玉でもらった。これまでで総額500円くらいは貯まっているだろう。もちろん、お金を出し入れするのは長財布ベルメゾンで1500円で買った品だ。ファスナー開閉でお金を落とす心配がないし、なによりパッチワークが可愛い。

会社に到着したらまずは自分のデスクを徹底的に掃除する。昨日も帰る前に水拭きしたが、もう一度念入りに隅から隅まで、ホコリひとつないようにするまでは仕事に取り掛かれない。

それが終わったらパソコンを立ち上げる。使うのはもちろんレッツノートだ。会社で支給されているパソコンは東芝の製品だが、駄々をこねて自分だけレッツノートに変えてもらった。おかげで会社の内部サイトにはまったくアクセスできないしアドレスももらえていないが、レッツノート以外のパソコンを使うのに比べたらどうってことはない。

上司が近づき、仕事をひとつ依頼される。急ぎの書類なので、午後イチまでになんとか作れとのことだ。だが、すぐには手をつけない。「やるべきことをすぐやらない」のが彼の主義なのだ。たとえそれで問題が起きても、自分の美学は譲れない。というわけで、しばらくネットサーフィンをしてオンラインゲームをする。デキる男は「あそび」を大切にするものなのだ。もちろん、常によい姿勢を保つことは忘れないので、背筋をピンと伸ばして惑星ハイデリンで冒険を繰り広げた。

そのまま午前中を過ごし、昼食を済ませて、上司から催促され始めてようやく書類作りに取り掛かる。まず取り出すのは方眼ノートだ。ここに自分の考えを図式化して書き出す。これが大切だ。これで頭の整理が終わったら、今度はA3ノートに書類の内容をまとめる。この内容でいいか、上司に確認をかねて説明する。数学が何より得意なので、説明に使うのはパスカルの定理とオーベルの定理だ。もちろん、どんなに頭の悪い上司でも理解できるよう、相手をバカにするくらい超スローにゆっくりしゃべるのがコツである。

だがどうやら、コミュニケーションミスがあったらしい。「イミワカラン!マニアワナイ!」と上司が怒っている。周囲の社員の目線も冷ややかだ。そう、どういうわけか、彼は他の人に非常に嫌われているのである。もちろん、そんなことをいちいち気にするデキビジではない。なにしろ、「嫌われる人間だけが出世できる」のだ! こんな仕打ちでストレスがたまる男ではない
とはいえ、今回の件は大事な取引先が絡んでいたらしく、先方がなにやら激怒しているとのこと。それを聞いた彼は即座に相手の会社に乗り込み、アポなしで来社したことを怒る先方の開口より早く「フライング土下座3回転ひねりデキビジスペシャル」を繰り出した。謝罪は彼の得意技。これで一件落着である。

と、すでに時刻は終業5分前。今日は華金だ。相手の話は長くなりそうだが、彼は残業は絶対にしない主義。というわけで、相手の話をさえぎってお先に失礼した。今日は直帰だ。帰り道は歩きながらワインの本を読んで勉強にいそしむ。そのまま彼の足はショットバーへ。頼むのはもちろん、マティーニではなくダイキリである。隣にいた女子大生をナンパして即ホテルin。セックスだけはクソうまい上、精力絶倫なので終電まで女の子をヒーヒー言わせて大満足する。ホテル代は割り勘だ。

土曜日は毎週必ずゴルフ。もちろん軽自動車なんてクソの乗るクルマは持たない主義なので、親の貯金を借りて購入したレクサスに乗る。今度の日曜日は佐渡島トライアスロンに参加予定だ。旅費がちょっと心配だが、なにしろ全財産をスイスの銀行に預けているので引き出すのも一苦労である。サラ金で借りようと計画を立てる。
と思ったが、友人から急遽アラスカのレストランでの1日バイトを依頼された。自分の予定を優先させないのがデキる男だ。ということで、前々から計画していたトライアスロンをドタキャン。無理やり一緒に参加させることにした同僚にはひとりで参加してもらうことにしよう。なにより、「アラスカのレストラン」という言葉が魅力的だ。デキビジの週末は、今度も忙しくなる。

 

ビジネス書ってほんとクソですね。

というわけで、お粗末さまでした。