本で死ぬ ver2.0

基本的には本の話。でもたまに別の話。

『なめらかな世界と、その敵』(伴名練・著)のレビュー

伴名練(はんな・れん)という作家さんの名前を初めて知ったのは、『アステリズムに花束を』というアンソロジーを読んだときです。 アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー (ハヤカワ文庫JA) 発売日: 2019/06/20 メディア: Kindle版 ただ、そのときはと…

『恐怖の構造』(平山夢明・著)のレビュー

私はホラーとかオカルト系の話が好きなんですが、ホラー映画やホラーゲーム、お化け屋敷は大の苦手です。 なんでかというと、「びっくりする」のがイヤだからです。 その意味では、『ジュラシックパーク』みたいなパニックムービーも苦手です。 観客をびっく…

『役に立つ古典』(安田登・著)のレビュー

1万冊以上の本を読み、教養に関する知識が半端なく、現代の知の巨人のひとりであるライフネット生命の元会長・出口治明さんが、かつて恩師から言われたのは 「古典を読んで分からなければ、自分がアホやと思いなさい。現代に生きている人が書いた本を読んで…

『東大なんか入らなきゃよかった』(池田渓・著)のレビュー

私は基本的に天の邪鬼な性格なので、世の中の大きな流れに棹さすような本が好きなんですが、今回紹介するようなそんな本です。 東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話 作者:池田渓 発売日: 2020/09/16 メディア: Kindle版 「東大」…

『マチネの終わりに』(平野啓一郎・著)のレビュー

石田ゆり子さんではないと思うのです。 なにがって、『マチネの終わりに』のヒロインである小峰洋子の配役です。 マチネの終わりに メディア: Prime Video 福山雅治さんはまあいいとして、石田ゆり子さんだと甘すぎる印象が拭えないのではないかなと。 すく…

『ぼくらの七日間戦争』(宗田理・著)のレビュー

タイトルは知っているけど読んだことなかった名作シリーズのひとつ。 ぼくらの七日間戦争 (角川つばさ文庫) 作者:宗田 理 発売日: 2009/03/03 メディア: 単行本 表紙やイラストこそ、非常に爽やかな健全児童文学っぽい感じですが、いやはや中身を読んでみる…

『書くことについて』(スティーブン・キング)のレビュー

これは持論ですが、およそ本を読む人というのは心のどこかで「自分も本を書きたい」と思っているはずじゃないでしょうか。 私自身がその一人であります。 小説まがいのものを書いたり、構想だけが頭の中でうねっているのをベッドに入ってから練ったり貼った…

『13歳からの世界征服』(中田考・著)のレビュー

本当におもしろい本って、逆にレビューを書くのが難しいもんなのです。 なんでかというと、本当におもしろい本って私があれこれいうよりも、「とにかく一部を抜粋して実物を読んでもらったほうがおもしろい」からなのです。 それと同じような感じで、 ・内容…

『チーズはどこへ消えた?』(スペンサー・ジョンソン著)のレビュー

言わずとしれたベストセラーですが、Kindle unlimitedで無料になっていたので久しぶりに通読しました。 チーズはどこへ消えた? (扶桑社BOOKS) 作者:スペンサー・ジョンソン,門田美鈴 発売日: 2014/05/17 メディア: Kindle版 とても短いストーリーなの…

『ケーキの切れない非行少年たち』(宮口幸治・著)のレビュー

売れる本のタイトルの付け方にはある程度ルールがあって、その法則の一つに「ピンポイント抽出法」(これは私が勝手に命名)みたいなものがあります。 今回紹介するこちらの本が、まさにそれです。 ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書) 作者:宮口幸治 …

『ざんねんな兵器図鑑』(世界兵器史研究会・著)のレビュー

いわゆる雑学系の書籍やムックなどで、たまに著者名が「○○研究会」みたいなものになっているものがありますよね。 今回紹介するこちらの本がまさにそうなのですが。 ざんねんな兵器図鑑 作者:世界兵器史研究会 発売日: 2019/11/25 メディア: 単行本 これは要…

『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』(ジーナ・キーティング著)のレビュー

最近はネットフリックの躍進がすごいですね。 知らない方のために説明しておくと、ネットフリックスはアメリカ発の定額動画配信サービスを提供しているサービスのことです。 www.netflix.com 私はアマゾンプライム会員なので基本的に映画などの映像コンテン…

『ステレオタイプの科学』(クロード・スティール著)のレビュー

よほど情報の伝播が遅い僻地(つまりど田舎)などでない限り、「女性だから」「高卒だから」などという理由で人をあからさまに差別するようなことは少なくなりました。 ただ、じつは差別行為を行わなくても「女性だから~の傾向がある」と本人が思い込んでい…

『カッコーの歌』(フランシス・ハーディング著)のレビュー

すばらしい物語に国境はありませんが、ことファンタジーというジャンルで言えば、ミステリーに並んで良質な作品がどんどん出てくるのはイギリスですね。 ちょっと挙げてみましたが、有名すぎる作品ばかりでキリがありません。 ハリー・ポッターと賢者の石 (1…

『思うことから、すべては始まる』(植木宣隆・著)のレビュー

発売前から業界内では話題になっていた本なので、すぐに読みました。 思うことから、すべては始まる 作者:植木 宣隆 発売日: 2020/07/07 メディア: Kindle版 本書は戦後2番目(当時)の大ヒットとなった春山茂雄著『脳内革命』(410万部)を編集し、現在はサン…

『1%の富裕層のお金でみんなが幸せになる方法』(クリス・ヒューズ)のレビュー

成功者たちの本が世の中には溢れています。 なぜ人々が成功者たちの本を読みたがるかというと、「彼らの真似をすれば自分も成功者に慣れる」という考え(信仰?)があるからです。 ロジック自体は明快で、「成功するには正しい方法がある。そのロジックを知…

『友だち幻想』(菅野仁・著)のレビュー

私は友だちが多い方ではないです。 いまも付き合いがあるのは高校時代に1人、大学時代に2人の計3人でしょうか。 友だちの定義は難しいですし、男女によって差が出る気もしますが、私の場合は「なにも理由がなくても会える間柄」が基準かなと思っています…

『メインテーマは殺人』(アンソニー・ホロヴィッツ著)のレビュー

小説を読んでいて「すごいなぁ」と著者の筆力に感嘆することはよくあるのですが、私がとくに感心するのは「イヤなキャラクター」の描き方がうまいときです。 物語の場合、主人公の敵役とは別に、なんだか気に食わない、まじでこんな奴がそばにいたらイライラ…

『R62号の発明・鉛の卵』のレビュー

私はたまーに、暇だと土日などに開催されている読書会に参加したりします。 この本は以前(というか数年前)の読書会でだれかが紹介していたのをメモって脳内の「いつか読もうリスト」に入れていたのですが、ふいに思い出したので購入し、読みました。 本と…

『知的生活の方法』(渡部昇一・著)のレビュー

私の家には小さい本棚しかなくて、せいぜい100冊くらいしか収納できません。 ですので、必然的に溢れてしまった本は本棚の上に横に積んでおいたり、ダンボールに入れてしまっておいたりします。 たまに整理して、いらない本は処分したり、実家にお繰り返した…

『コンサル一年目が学ぶこと』のレビューなのか

「知っている」と「理解している」ことは別物であるというのは、聞いたことがある人が多いと思います。 「理解している」を「腹落ちする」に変換してもいいかもしれません。 つまり、実感を持って納得できたかどうか、ということです。 今回紹介するこの本は…

『日本人の勝算』(デービッド・アトキンソン著)のレビュー

仕事の忙しさがかなり軽減されてきているので、読書ペースが加速している今日このごろです。 Kindle Unlimitedもラインナップがけっこう変わっていたので、ガンガン読み進めています。 で、今回紹介するのはこちら。 日本人の勝算: 人口減少×高齢化×資本主義…

『ぼぎわんが、来る』(澤村伊智・著)のレビュー

私はホラーが苦手です。 ただ、「怖い話」が苦手というわけではありません。 「びっくりする演出」が苦手なのです。 だから、『不安の種』みたいなホラーマンガは読めるし、『新耳袋』みたいなホラー小説は読めます。 不安の種+(1) (少年チャンピオン・…

『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(津川友介・著)のレビュー

いわゆる「健康本」って、評するのが難しいです。 健康本はその性質上、「おもしろい」とか「おもしろくない」という価値観で測れるものではありません。 「正しい」か「正しくない」か。 「役に立つ」か「役に立たない」か。 そういった指標に従わざるを得…

『13歳からのアート思考』(末永幸歩・著)のレビュー

私が美術館に行くようになったのは大学生になってからのことだったと思います。 というより、積極的に読書をするようになったのもこのころで、人生のモラトリアムを「読書」「映画」「美術」「アニメ」「麻雀」で満たしていました。 私が好きなのはバロック…

【読書】コロナ騒動で外に出られず死ぬほどヒマな人のためのオススメ本53選

年に1~2回くらい会う、働く意識高い系の友人がいるのですが、普段はビジネス書しか読まないくせに、急に「オススメの小説とかないかな」と連絡があったので、怒涛のごとくLINEを返して本をオススメしまくりました。 私みたいにもともとインドア派で、休日は…

『奇書の世界史』(三崎律日・著)のレビュー

私は普段、ビジネス系の実用書をつくっています。 実用書は「役に立つ」ことが求められます。 私がつくるような本の読者の目的は、その本を「読む」ことではなく、その本を読むことによって得られる「なにか」であるわけです。 これが小説などと毛色がちがう…

『コンテナ物語』(マルク・レビンソン著)のレビュー

世界を一変させるテクノロジーの誕生はたびたび起きてきました。 たとえば活版印刷、自動車、インターネットなどですね。 ただ、じつはそうしたイノベーションで大きな役割を果たすのは、そうした新しい技術そのものを生み出した人というよりも、それを広く…

『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(佐々木康裕・著)のレビュー

コロナウイルスが世界中で猛威を奮っている影響で外出する人が減り、経済が停滞している昨今ですが、尋常ではない影響を受けているのはリテール(小売)です。 もちろん、悪影響は時間差でほかの業種にも及ぶことが予想されますが、いかんせん、小売というの…

『ニルヤの島』(柴田勝家・著)のレビュー

私は基本的に「小説家はあまり顔を公に出さないほうがいい」と考えています。 いえ厳密に言うと、「小説家には顔を出さないほうがいい人と、顔を出してもいい人がいる」といったほうが正しいかもしれません。 たとえば筒井康隆とか京極夏彦とか村上春樹とか…